鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1513~モダン

2018-04-27 12:28:56 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、モダンです。

原田マハの「モダン」を読みました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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ニューヨークの中心、マンハッタンに存在し、1920年代から「ザ・モダン」と呼ばれたモダンアートの殿堂。それが「MoMA」ニューヨーク近代美術館。
近現代美術、工業デザインなどを収集し、20世紀以降の美術の発展と普及に多大な貢献をしてきたこの美術館を舞台に、そこにたずさわる人々に起きる5つの出来事を描いた自らの美術小説の原点にとりまくんだ美術小説短編集がついに刊行。

『楽園のカンヴァス』で、山本周五郎賞を受賞、本屋大賞三位を獲得した原田マハが、半年間勤務し、『楽園のカンヴァス』でも重要なモチーフとなった〈ルソー〉の「夢」も所蔵する「MoMA」が舞台。
『楽園のカンヴァス』とは、世界観を共有し、その作中人物も登場。
「新しい出口」は、マティスとビカソ、そしてある学芸員の友情と別れを描いた作品。
そのほかにも、アメリカの国民的画家〈アンドリュー・ワイエス〉と〈フクシマ〉の原発事故について描く「中断された展覧会の記憶」、MoMAに現れる一風変わった訪問者にまつわる監視員の話「ロックフェラーギャラリーの幽霊」、初代館長アルフレッド・バーと、美しきMoMAの記憶を、インダストリアルデサイナーの視点から描いた「私の好きなマシン」、美術館に併設されたデザインストアのウィンドウにディスプレイされた日本に待つわるものについての意外なエピソードをつづった「あえてよかった」など、著者ならではの専門的かつ、わかりやすい視点で、芸術の面白さ、そして「MoMA」の背景と、その歴史、そして所蔵される作品群の魅力を、十二分に読者へと伝える待望の「美術館」小説集。
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著者得意の美術小説を短編で堪能しました。
これまで読んできた中編や長編とは一味違いますが、これはこれで有り。
十分楽しむことができました。
MoMAや収蔵作品に関するエピソードを交えながら登場人物たちのドラマが語られます。
3・11や9・11などが暗い影を落としており、中にはPTSDになって夢をあきらめ退職するスタッフも登場します。
ひとつひとつの作品の小説としての完成度は、中長編ほど高くないかもしれません。
けれどもそれを上回る美術作品や美術館に関わる情報を得られることに原田マハの原田マハたる価値があり、ファンはそこに満足するのではないでしょうか?
そして登場人物たちの感動的なエピソードが織り込まれることで満足感はさらに高まります。
カスタマーレビューの評価はおおむね辛口ですが、それにめげず短編・中編・長編を問わず著者が書きたいものをどんどん書いて欲しいと願います。

ちなみに本書の中のお気に入りの作品は「私の好きなマシン」。
「マシーン・アート展」でベアリングの美しさの虜になった女の子。
彼女は初代館長アルフレッド・バーの著作を読み漁り、やがて工業デザイナーになります。
アルフレッド・バーとの偶然の出会いはドラマチックであり、ラストのスティーブ・ジョブズから届いたラブコールには痺れました。
科学技術は芸術と相反するものではなく、互いに影響し合い、時には重なり合うものだ、という考え方に大いに共感しました。

これまでルソーやピカソなどの近現代美術にはあまり興味がありませんでしたが、著者の影響で徐々に興味が湧いてきました。
先日MoMAの古い展覧会図録を入手したので、ゆっくり鑑賞しようと思います。

コメント
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