元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「メイジーの瞳」

2014-02-21 06:33:16 | 映画の感想(ま行)

 (原題:WHAT MAISIE KNEW)小林旭の曲の中で“男もつらいし、女もつらい。男と女はなおつらい”という歌詞が出てくるが、今はそれ以上に“つらい”のは実は子供ではないのかということを思い起こさせる一作。ロクでもない親を持ったために辛酸を舐める幼いヒロインの姿は、観ていて本当に“つらい”。

 ニューヨークに住む6歳のメイジーの父親はアートディーラーで、母親はロックシンガーだ。別々に家を空けることの多いこの二人がどうして結婚したのかよく分からないが、案の定“すれ違い”の生活に耐えきれず、やがて離婚する。メイジーは二人の家を10日ごとに行き来することになるが、間もなく両親はそれぞれ若いパートナーを見つけて再婚。しかし、何かと忙しい父母はメイジーの世話を継母・継父に任せっぱなしだ。ある夜、珍しくメイジーの面倒を見ていたはずの母親は、突然コンサート・ツアーに出てしまう。一人っきりになったメイジーは、朝まで寂しく過ごすことになる。

 常日頃から子供をほったらかしにして、たまに優しい言葉を掛けたりプレゼントをすることが“愛情”だと思い込んでいるこの両親の、底抜けに愚かなところには脱力する。ただ、生まれてからこの父母の言動をずっと見てきたメイジーにとって、生きるというのは他人の身勝手さに耐えることなのだと達観している。その様子は痛々しい。

 彼女の聞き分けの良さや大人しさは、決して好ましい個性などではなく、単なる処世術なのだ。それでも、時々我慢出来なくなって悲しそうな表情をするあたりが、観る者をいたたまれない気持ちにさせる。

 原作者は何とヘンリー・ジェイムズで、映画では設定を現代に置き換えているが、たぶん小説の雰囲気は良く出ているものだと思われる(未読なので確かなことは言えないが ^^;)。幸いにもメイジーはやがて本当の両親ではない者達の間で居場所を見つけることが出来るが、世の中にはそうではない子供もいっぱいいることを忘れてはならない。まさに“オヤジもつらいし、オフクロもつらい。でも、顧みられない子供はなおつらい”のである。

 スコット・マクギーとデイヴィッド・シーゲルの演出は丁寧で、子供の視点を借りた大人社会の点描という構図を上手く組み立てている。キャストの中では母親役のジュリアン・ムーアが光っており、“年齢相応の落ち着き”などとは縁のない(笑)奔放な役柄を伸び伸びと演じていた(出来ればロック歌手らしいパフォーマンスを見せて欲しかったが ^^;)。

 メイジーを演じるのは撮影当時本当に6歳だったオナタ・アプリールだが、実に達者な子役だと思う。義理の父母に扮するアレキサンダー・スカルスガルドとジョアンナ・ヴァンダーハムは好印象だ。映像の切り取り方や登場人物達が着るファッション等にも十分目が行き届いている。観て損はない佳作だと思う。

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