元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「愛を弾く女」

2014-02-22 06:12:42 | 映画の感想(あ行)
 (原題:UN COEUR EN HIVER )92年フランス作品。主演のエマニュエル・ベアールがヴァイオリンを弾くシーンが、この映画のハイライトであろう。彼女の美しさがクラシック音楽にジャストフィットしているのだが、それ以上に本人が弾いているとしか思えないサウンド合成と演技の上手さ。「コンペティション」でのエイミー・アーヴィングに匹敵する見せ場である。

 天才的ヴァイオリニスト(ベアール)とヴァイオリンの調整工具技師(ダニエル・オートゥイユ)との愛の物語であるが、正確には“愛”と言えるかどうかわからない。思い込み、または片思いの分野に入るかもしれない。カメラは彼の熱いまなざしを追い、またエマニュエルの見つめる目を追うのみ。愛の語らいは目で追う、と言わんばかりだ。



 彼らはたった一度、ほんの数分、喫茶店で世間話をしただけ。もちろん、愛の告白などはナシである。ところが、彼女はこれが“彼の告白”であると信じ、自分の中で彼の存在が大きくなる。そして、出張に出かける自分の彼氏(アンドレ・デュソリエ)に“別れる”と言い出してしまうのだ。

 彼女は、素晴らしく出来のいい演奏が終わったあと彼を誘い出し、抱いてくれと頼むが、彼は“自分にはその資格はないし、そのつもりもない”と断わる。そして彼が本当に彼女が好きだったのか、それともまったくそんな気がなかったのか、という説明はない。

 監督クロード・ソーテは、そんな(見ようによっては未熟とは紙一重の)セックスを含まない大人のプラトニック・ラヴを、丁寧に描く。ヴァイオリンの名曲(ラヴェルのソナタやピアノ三重奏曲など)が実に素晴らしい効果をあげていた。

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