元・副会長のCinema Days

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「スパイダーヘッド」

2022-08-28 06:20:28 | 映画の感想(さ行)
 (原題:SPIDERHEAD)2022年6月よりNetflixにて配信されたSFスリラー。これは面白くない。アイデアは陳腐だし、展開は凡庸。大して予算も掛けられなかったようで、画面いっぱいにショボさが横溢している。またプロデューサーが(クレジットを見るだけで)8人も存在していることから、どうもコケた際の責任を希釈するような意図も感じられて、愉快になれない。

 とある孤島に建つ“スパイダーヘッド刑務所”では、天才的な科学者であり経営者でもあるスティーヴ・アブネスティの管理により、受刑者たちを対象にした人体実験がおこなわれていた。それは彼らに人格を変える各種ドラッグを無理矢理に注入し、その様子を観察するというものだ。そんな中、過去の行為に関する罪悪感に苛まれている受刑者のジェフは、一応模範囚としてスティーヴの実験を手伝ってはいるが、この刑務所の状態に疑問を抱いていた。ジョージ・ソーンダーズによる小説の映画化だ。

 マッドサイエンティストが囚人を相手に怪しげな人体実験をするという設定自体、過去に何度も目にしたようなネタで新味は無い。しかも、スティーヴがこの実験にのめり込む理由も示されていない。取り敢えずは“人間心理をコントロールすることによってトラブルの無い世界を作る”みたいなことが謳われるが、漠然とした御題目に過ぎず、説得力に欠ける。SFミステリーらしい思い切った筋書きや、観る者を驚かせるような映像処理も存在せず、平板なまま映画はエンドマークを迎える。

 監督のジョセフ・コジンスキーは「トップガン マーヴェリック」のヒットの余波で本作を手掛けたように思えるが(笑)、まるで精彩がない。演出テンポはかなり悪く、上映時間が107分なので大して長くはないのだが、時間が経つのが遅く感じられる。終盤の脱出劇も緊張感は無い。映画の舞台を離島にしたメリットは希薄で、閉塞感の欠片も無い。

 ならばキャストの仕事ぶりはどうかといえば、こちらも低調だ。スティーヴに扮するクリス・ヘムズワースはマーベル映画の印象が強い上、本作のように悪役に回ると大根に見えてしまう。ジェフ役のマイルズ・テラーは奮闘しているとは思うが、役柄が曖昧なので評価出来ず。ジャーニー・スモレット=ベルやテス・ハーブリック、マーク・パギオといった他の面子もパッとしない。

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