元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ザ・インターネット」

2008-10-07 06:38:33 | 映画の感想(さ行)
 (原題:The Net )95年作品。コンピュータ・アナリストのアンジェラ(サンドラ・ブロック)が偶然に同僚からもらったFDに重大機密が隠されていた。彼女はコンピュータ犯罪組織のワナにはまって身分を剥奪され、警察のシステムに前科者として登録され、命まで狙われる。監督はアーウィン・ウィンクラー。

 観終わって“なるほど、パソコンマニアの考えそうな話だ”と思った。大きな陰謀に関わるプログラムの争奪戦、瞬時にデータを破壊するウィルス、国家システムへのハッキングetc.それにスリルとサスペンスを振りかけて、見た目だけは新しそうな娯楽作品のいっちょあがり、てな具合だ。コンセプトとしては80年代の「ウォーゲーム」をはじめ「スニーカーズ」「ディスクロージャー」とほとんど同じ。使う機種がマッキントッシュに変わっただけ。

 パソコン関係のディテールにこだわって、ではストーリーはと聞かれると、相も変わらぬハッカー同士の張り合いだ。考えるに、フェチシズムに走るマニアは無視し、最初にネットワークありきではなく、どうしてその素材を選んだかの明確な意思、映画作りのプロとしてのコンセプトが欲しかった。森田芳光監督の傑作「(ハル)」との大きな差はそこにある。

 もっとも、この映画にも上手く突っ込めば「(ハル)」に通じる面白さが出てくる要素はある。ヒロインは在宅勤務で同僚の顔をほとんど知らない。唯一の肉親である母親はアルツハイマー症で施設に入れられている。近所付き合いもない。アイデンティティは端末の中だけにあり、システムを破壊されれば自己証明すらできない。徹底的にオンラインに生きる彼女をオフラインに引っ張り出すプロセスを、大仰なサスペンス劇はほどほどにして人間ドラマとして打ち出せば、けっこうな成果が上がったのではないか?

 しかし、いかにも友達が大勢いそうなS・ブロックのキャラクターでは無理っぽいし、第一地味な話はハリウッドのプロデューサーは金を出さないかも。「(ハル)」だって長い間配給が決まらなかったしねぇ・・・・。

ま、普通のサスペンスものとして見れば、可もなく不可もなしといったところか。退屈はしない程度には仕上げている。それにしても、ジェレミー・ノーザム扮する敵役の間抜けさにはがっくりだ(簡単に拳銃を取られるんじゃないよ。まったく ^^;)。

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