元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「RRR」

2022-11-14 06:23:11 | 映画の感想(英数)
 (原題:RRR )前半はけっこう楽しめる。ただし後半に入ると、あり得ない展開が目白押しになり脱力する。いくらインド製娯楽映画という“特殊フィルター”(?)を通しての鑑賞でも、これほど作劇がいい加減ならば評価はしたくない。巷ではかなりウケが良いらしいが、少なくとも本作よりも出来が良いインド製娯楽編は過去にいくらでもあった。

 1920年代の英国植民地時代のインド。少数部族の村にイギリス軍が我が物顔で乗り込み、手先の器用な幼い少女をさらってゆく。部族の用心棒的な存在であるビームは、仲間と共に総督府がある町に潜入。少女を奪還するチャンスを窺う。一方、現地出身でありながら英国政府の警察となったラーマは、デモ隊の鎮圧などに目覚ましい功績を残し、総督府からも一目置かれる存在になる。だが、実は彼が警察に入ったのは“ある目的”のためであった。そんな2人が偶然知り合い親友同士になるが、もとより立場は大きく違う。やがてある事件をきっかけに、彼らは重大な選択を迫られることになる。



 ビームの神出鬼没ぶりや、ラーマの有り得ないほどの腕っ節の強さを“そんなバカな!”と心の中で突っ込みを入れつつ面白がっているうちに、2人がパーティー会場で披露する“ナートゥダンス”で映画のヴォルテージは最高潮に達する。この超高速でハイレベルの振り付けを、寸分の乱れも無いシンクロで見せつけられると、観ている側は驚き呆れるしかない。

 しかし、この後はテンションは落ちる一方。ビームがピンチに陥るくだりや、ラーマのプロフィールなどが不必要に余計な尺で紹介され、次第に面倒くさくなってくる。果てはどう考えても向こう数か月は歩くことも出来ないような重傷を負った2人が、すぐさま何事も無かったかのように回復して大暴れをするに及び、少しはドラマ運びの常識というものを考えろと言いたくなる。

 監督のS・S・ラージャマウリの出世作になった「バーフバリ」シリーズは観ていないが、スマートとは言えない本作の建て付けを見る限り、どうも古いタイプの演出家のようだ。意外と残酷な描写が目立つのも愉快になれない。主役のN・T・ラーマ・ラオ・Jr.とラーム・チャランは絵に描いたような偉丈夫ながら、あまり垢抜けているとは思えない。

 ラーマの恋人役のアーリアー・バットと、インド映画では珍しい白人のヒロイン役アリソン・ドゥーディ、そして敵役のレイ・スティーヴンソンは好演だが、あくまでも主演2人の引き立て役だ。なお、テルグ語の映画を観るのは初めてだったが、今まで鑑賞したヒンディー語やタミル語の映画とは様相が違うように思われる。同じ国の作品でも、言語と映画のテイストとの相関性はやっぱり存在するのだろうか。

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