
(原題:Swept from the Sea)97年作品。キャストは悪くなく、風景は美しいのに、監督の腕が三流だから凡作に終わってしまった。もっとドラマティックに引っ張れないのだろうか。これじゃTVムービーと変わらないじゃないか。
20世紀初頭、イギリス南西部のコーンウォールの小さな漁村に住む若い女エイミーは、両親が結婚する前に生まれてしまったため、住民たちから村八分にされていた。彼女が安心できる場所は、海岸の漂流物を集た洞窟の中だけである。そんなある日、村に難破した船の生き残りである男ヤンコが現れる。ヤンコの乗っていた船はウクライナからアメリカに向かう予定だったが、嵐に遭って沈没したのだった。
村人たちは言葉も通じないヤンコを厄介者扱いするが、エイミーだけは彼に救いの手を差し伸べる。2人は仲良くなり、周囲の反対を押し切って結婚するが、さらなる悲劇が待っていた。ジョゼフ・コンラッドの短編小説「エイミー・フォスター」の映画化だ。
設定もストーリーもかなり大時代である。だからあえて映画化するためには、現代的な視点を盛り込まなければならないが、それが見当たらない。もちろん、異分子に対する共同体の冷淡な態度というものはいつの時代にも存在する。しかし、それが現時点(もちろん、製作された90年代も含む)で訴求力を持つほどに、この映画の語り口は力強くはない。
ビーバン・キドロンの演出は平板で、エイミーに理解を示すスウォファー家の人々やケネディ医師の内面描写が通り一遍になっている。メリハリのない展開に終始していると思ったら、ラスト近くになると途端に話が慌ただしくなり、あとは釈然としない気分で劇場を後にするのみだ。
ただし、キャストの仕事ぶりは達者。レイチェル・ワイズにヴァンサン・ペレーズ、イアン・マッケラン、キャシー・ベイツと芸達者が並んでおり、それぞれソツのないパフォーマンスを見せている。だが、当時ワイズは「ハムナプトラ」の、イアン・マッケラは「ゴールデンボーイ」の印象が強くて、イマイチ役としっくりいっていない印象もある。ディック・ポープのカメラによる映像は美しく、大御所ジョン・バリーのスコアは流石だと思った。