元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ショッカー」

2008-10-09 06:30:55 | 映画の感想(さ行)
 (原題:Shocker )89年作品。「エルム街の悪夢」でお馴染みのウェス・クレイヴン監督作。テレビの修理屋ホレス・ピンカー(ミッチ・プレッギ)はテレビの次に殺人が好き。7つの家族を襲って30人を殺したが、ついに主人公ジョナサン(ピーター・バーグ)の“予知夢”によって逮捕され、電気椅子送りとなる。普通だったらここで終わりなのだが、まだまだ続きがある。ピンカーは黒魔術の信奉者で処刑の寸前に自分の邪悪な欲望を肉体から切り放すことに成功する。そして処刑に立ち会った女医を手始めに、次々と周囲の人間に乗り移りジョナサンを襲う。激闘の末、彼はピンカーを追いつめ、ピンカーの悪霊を追い出す。  

 これでもう終わりだと思うだろうが、映画はまだ続く。今度は電波となったピンカーは「全国ネットの殺人鬼」と化し、テレビから各家庭に自由に出入りしては殺人を繰り返すようになる。ついにはジョナサンもテレビの中に引っ張りこまれ、ブラウン管の中での最終決戦が始まる・・・・・、というのがこの映画の内容。

 考えられるだけのアイデアをかたっぱしから詰め込んだ映画。どのエピソードひとつ取ってもそれだけで長編が一本できあがりそうだ。無理矢理に観客を引っ張っていく力はたいしたものだと思いつつ、映画自体としてはイマイチの出来だなあと感じた。

 映画は生前(?)のピンカーを描く部分と、死んでから他人に乗り移って凶行を重ねるところと、さらに電波になってしまう部分と3つのパートに分かれているが、これはどれか一つに絞って描いた方がよかった。もちろん3番目のパートを中心にしてほしかったのは言うまでもない。そしてピンカーの弱点である恋人の持つペンダントととの因果関係もまったくわからないし、だいたい殺された人間の亡霊がゾロゾロ出て来る必然性が希薄である。それからジョナサンの出生にまつわる秘密も明かされたり、父親が実は心臓病だったり、というエピソードもあるが、ハッキリ言って詰め込みすぎ。映画全体が散漫な印象を持ってしまったことは確かである。

 ただ、クライマックスのピンカーとジョナサンのテレビの中での追いかけっこは最高に面白い。全然関係のないニュース・フィルムやボクシングの試合に突然二人があらわれて殴り合いながらバタバタと画面を走り回る場面はかなり笑える(どこかウディ・アレンの「カメレオンマン」を思わせる)。「エルム街の悪夢」では夢と現実の境目をとっぱらったクレイヴン監督だが、ここでは現実とテレビという虚構の世界をうまくミックスさせている。

 残念ながら「エルム街の悪夢」みたいにシリーズ化されることはなかったが、やけに説明的な部分が多かったのは、製作当時は続編を作る気マンマンだったことを思わせる(笑)。

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