元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「百合の雨音」

2022-11-26 06:22:02 | 映画の感想(や行)
 日活ロマンポルノ50周年を記念し、現役の監督3人がそれぞれ作品を手がけた“ROMAN PORNO NOW”の第三弾。金子修介が演出を担当しているだけあって、第一弾の松居大悟監督「手」や第二弾の白石晃士監督「愛してる!」よりはマシな出来映えだ。ヒット作を数多く手掛けた金子監督は、もともとロマンポルノ作品「宇能鴻一郎の濡れて打つ」(84年)でデビューしている。同性愛を扱った作品では「OL百合族19歳」(84年)という快作もあるので、今回の企画は手慣れたものだったはずだ。だが、やっぱり往年の日活ロマンポルノのヴォルテージの高さには及ばない。

 出版社に勤める葉月は恋愛に対してイマイチ踏み込めない。なぜなら、過去に辛い経験があり臆病になっているからだ。そんな彼女は美人で有能な上司の栞に憧れている。ところが隙が無いように見える栞も、夫との関係が上手くいかずに悩んでいる。ある夜、大雨で帰宅できなくなった2人は、成り行きで一線を越えてしまう。



 さすがに金子監督はラブシーンの扱いが上手く、けっこう盛り上がる。しかし演じる小宮一葉や花澄、百合沙といった女優陣は、昔のロマンポルノのキャストにはとても及ばない。演技指導が不十分なのか、皆表情が硬くセリフ回しも抑揚に欠ける。かといって、ルックスが並外れているというわけでもなく、大きな求心力は望めない。

 むしろ栞の夫の造型が興味深い。朝っぱらから職場で堂々と不倫行為をやらかす不埒な野郎でありながら、妻の言動がそれなりに気になっている。かと思えば葉月には屁理屈をこねて接近したりする。演じる宮崎吐夢は、この無節操な人物を観る者に“男なら誰しも、このような軽佻浮薄な側面があるよなァ”という共感を抱かせるパフォーマンスを披露している(笑)。

 会社内での紆余曲折を経て、収まるところに収まったラストはまあ納得出来るが、それほどのカタルシスは生まれない。金子の演出はヘンに昭和っぽく、フワフワしたBGMとスマートさを敢えて外したような画面構成は一種の個性を発揮しているが、それが効果的かと問われると、あまり色良い返事は出来ない。

 結局“ROMAN PORNO NOW”における三本は(当初の予想通り)成果を上げられなかったが、何やら“成人映画を作るのだから!”という気負いばかりが先行しているように思う。ポルノだって劇映画の一種なのだから、あくまで通常のウェルメイドなドラマ作りに専念し、その上で絡みのシーンを多めに挿入するという肩の力を抜いたスタイルで臨んで欲しかった。

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