元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「Mank マンク」

2021-01-03 06:46:06 | 映画の感想(英数)

 (原題:MANK)1930年代のハリウッド、そしてオーソン・ウェルズの「市民ケーン」(1941年)にまつわる出来事を認知していなければ、まったく楽しめない作品だ。しかし言い換えれば、そのあたりの知識のある観客にとっては、興味の尽きないシャシンであることは確かで、評論家筋にウケが良いのも納得出来る。私はといえば、正直そっち方面の事情には疎いのでのめり込めなかったが、映像その他のエクステリアの仕上がりには感心した。

 1930年代末、若くして演劇界の快男児にのし上がったオーソン・ウェルズを、ハリウッドの映画会社RKOは全権を委託して映画の製作を任せた。だが、当初予定されていた企画は予算オーバーになってボツになる。そこでウェルズは、時の新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストを模した人物の人生を暴露的に描く作品を考案する。

 その脚本をオファーしたのがマンクことハーマン・J・マンキウィッツだった。マンクは飲んだくれで、しかも交通事故によるケガで療養中の身だったが、ウェルズとの協働を引き受ける。仕事を進めるマンクは、それまでのハリウッドでの振る舞いを回想するのだった。

 ウェルズとマンクとの確執がクローズアップされるのかと思ったら、マンク自身の回顧録みたいなのがドラマの主眼になっていて、ちょっと拍子抜けだった。ベルリン生まれで長じてアメリカに移住、それから雑誌での執筆活動を経てシナリオライターとしてパラマウント映画に雇われるのだが、その間に彼はハリウッドでの裏事情をイヤというほど知ることになる。映画会社同士の縄張り争いや、俳優の所掌についての取り決め、果ては民主党と共和党それぞれの“派閥”の暗躍など、生臭い話ばかりだ。

 またルイス・B・メイヤーやジョーゼフ・L・マンキーウィッツ、アーヴィング・G・タルバーグといった当時のVIPも登場する。このあたりのエピソードは映画通には堪えられないのだろうが、一般ピープルにアピールできるネタとも思えない。だからこちらは、本作の映像を堪能することにした。

 エリック・メッサーシュミットのカメラによる精妙なモノクロ画面、そして往時の映画を思わせる画像処理は、見事としか言いようがない。監督のデイヴィッド・フィンチャーは、よっぽどこの題材に興味があったのだろう。主演のゲイリー・オールドマンはさすがのパフォーマンス。アマンダ・サイフリッドにリリー・コリンズ、アーリス・ハワード、トム・ペルフリーといった脇の面子も良い。そしてトレント・レズナーとアティカス・ロスによる音楽は、レトロでありながら現代的で見事だ。

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