元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ニキータ」

2009-12-19 06:48:48 | 映画の感想(な行)

 (原題:Nikita)90年作品。今はほとんど“終わって”いる感じのリュック・ベッソン監督だが、この頃は才気走っていた。特に本作は良質のアクション映画の見本のようなシャシンだ。必要最小限のアクションを駆使して、素晴らしい緊迫感を獲得することに成功している。

 話は自称ニキータ(アンヌ・パリロー)の少女が仲間と麻薬欲しさに薬局へ押し入る。そして、駆けつけた警官をニキータは射殺。ニキータは逮捕され、裁判の結果、死刑が確定。しかし、それは表向きだった。ニキータの戦闘能力に目を付けたフランス政府のある機関が命を救う。そして彼女は政府機関のセンターでスナイパーとしての訓練を受ける。

 いわば女版の政府直営のゴルゴ13だ。しかし、フランス映画は単なる女殺し屋アクションにはしない。彼女は教官のボブ(チェッキー・カリョ)に恋をする。さらに架空のカバーを貰ったニキータは街で自分の本当の身分を隠して、マルコ(ジャン=ユーグ・アングラード)と同棲をする。危険な恋と隣合わせで危険な任務を遂行するのだ。

 よくアクション映画というと、物量作戦で銃をバリバリ撃ちまくり、息つく暇もないほどハデな場面を並べればそれでいいとする風潮が一部にはあるようだが、そういうのは映画とは言わないのだ。緩急のリズムのつけ方が大切だ。アクションは量だけでは観る者を納得できはしない。それがほんのわずかのシーンでも、演出センスによって強烈な印象を残す。

 この映画では銃を使用したアクションシーンはわずか4か所しかない。その中でアンヌ・パリローがデザート・イーグルという大型拳銃を使用するシーンがある。これを一目見れば、わかる方には彼女が銃の射撃訓練(それもただ撃つだけではなく、人間を相手にしたコンバットシューティングの訓練)を受けたことが明白だ。アンヌ・パリローは映画に出る前に脚本と監督を担当したリュック・ベッソンと共に1年間格闘技、射撃などの特訓を積んだそうだ。この点は本当に日本映画は見習わなければならない。本物を作るには、本気で取り組まなければならないのだ。

 ドアごしに愛を打ち明ける恋人の告白を聞きながら、ライフルでターゲットを狙撃するシーンの、緊張と抒情が入り交じった映像の高揚感。ラストの切ない別れ。フランス映画らしいキメの細かい内面描写と、切れ味鋭い暴力シーンの対比が見事だ。また、この作品はニキータが少女から大人の女になる過程も素晴らしいタッチで描いていて、青春映画としても水準以上の出来を示す。

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