
(原題:VERA CRUZ )1954年製作の西部劇。プロットが十分に練られていない印象もあるが、けっこう楽しんで観ることが出来た。舞台設定が興味深いし、何より出ている面子が濃い。94分という尺も的確で、ウエスタンが娯楽映画の一ジャンルとして揺るぎない地位を得ていた頃の雰囲気が伝わってくる。
1866年、かつて南軍の将校だったベン・トレーンは、戦後は不遇な生活を強いられ、生きる糧を求めてメキシコへとやってくる。途中ベンはジョー・エリンという訳ありの男から馬を買うが、実はその馬はメキシコ軍からの盗まれたものであり、ベンはジョーと共に追われる身となる。やがて彼らは政府側のアンリ・ド・ラボルデール侯爵と抵抗軍のラミレス将軍からそれぞれ勧誘を受けるが、高給を提示した侯爵の側に加担することを決める。
ところが、フランスへと帰国するため大西洋に面した港町ヴェラクルスに向かう伯爵夫人マリーの護衛の任された2人は、その馬車に多量の金塊が積み込まれていることを発見。たちまちその大金をめぐっての争奪戦が展開する。
メキシコを舞台にしたフランス干渉戦争を背景にしている点が興味深く、ロケもすべてメキシコで行なわれている。この国にはかつて皇帝が存在したが、それはフランスの傀儡であり、国内の保守層はもちろん自由主義者たちからも反発を受けていた。この構図を描いた西部劇は珍しく、ベンとジョーだけではなく、仲間のアウトローたちや反乱軍、そして政府軍などが組んずほぐれつバトルを繰り広げるあたりは面白い。
ただし、金塊にまつわる情報の行方はハッキリせず、最終的な着地点についての説明が不十分なのは惜しい。監督がアクションが得意なロバート・アルドリッチだけあって、活劇場面はかなり派手で盛り上がる。主演にはゲーリー・クーパーとバート・ランカスターという大物が起用され、それぞれ持ち味を発揮。特にランカスターの海千山千ぶりは注目だ。
デニーズ・ダーセルとサラ・モンティエルの女優陣は華があり、さらに、アーネスト・ボーグナインにジャック・イーラム、チャールズ・ブロンソンまで出ているのだから嬉しくなる。なお、メキシコ南部のユカタン半島にあるマヤ文明の遺跡チチェン・イッツァの光景が大々的にフィーチャーされており、その点も観て得した気分になる。