元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「テルマ&ルイーズ」

2015-05-01 20:16:17 | 映画の感想(た行)

 (原題:THELMA & LOUISE)91年アメリカ作品。独身女のルイーズと専業主婦のテルマ、二人の逃避行を描いたリドリー・スコット監督作。公開当時は評判になった映画だが、個人的には少しも良いとは思えない。

 序盤、酔っぱらったテルマ(ジーナ・デイヴィス)が飲み屋の男にレイプされかかり、その男をルイーズ(スーザン・サランドン)が射殺するシーンがある。これがレイプの最中に射殺するというのなら話がわかるが、いったん男が離れてから、別れ際の男の捨てゼリフにカッとなったルイーズがいきなり撃ってしまう。これではルイーズは単なる凶暴な人殺しではないか。少なくとも、普通の平凡なウェイトレスがやることじゃない。

 もっともルイーズは昔テキサスでレイプされた体験があるらしいが、真相は不明のまま、二人だけの了解事項になってしまっているので、観ている方は分からない。百歩譲って、彼女にそういう体験があったとするならば、その事実が現在の彼女に日常生活レベルでどう跳ね返っているのかを描く必要がある。つまり彼女の男性観やレイプに対する恐怖やそれを許した社会に対する怒りがニュアンスとして伝わってこないと、ルイーズがただのバカな女に思えてしまう。

 このエピソードに代表されるように、この映画は登場人物の描き方が甘い。テルマにしたって、年下の男に騙されたことがきっかけになり、依存心の強い性格が、平然とスーパー強盗をやるまでに大胆になっていくが、旅立つ前の夫に抑圧された生活から解放されたとはいえ、あまりにも単純すぎないか。

 一番分からないのは、ラストの処理だ。こういう結末にしたいのなら、そこへ至る過程をもっとテンション上げて描くべきだ。道中タンク・ローリーを爆破させたり、警官をトランク詰めにしたりしても、この程度のことでどうして自暴自棄にならなければいけないのか。

 ついでに言えば、ハーヴェイ・カイテルの刑事やルイーズの恋人の態度の甘ちゃんぶりは見ていられない。作り過ぎの映像とセンスのない音楽、リドリー・スコットのフィルモグラフィの中では、下から数えた方が早いような出来だ。いや、それまでスタジオの中だけでスタイリッシュな映像を創造してきたスコットに、アメリカ中西部のけだるい雰囲気とむさ苦しさを理解させようとするのが間違いなのかもしれない。とにかく失敗作だ。

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