(原題:NIGHTMARE ALLEY )前半はまあまあ面白い。しかし後半になると不自然な展開が目立ち始め、終わってみれば要領を得ないシャシンでしかない。この監督(ギレルモ・デル・トロ)に筋の通ったストーリーを期待する方がおかしいが、本作にはそれをカバーするだけの映像の喚起力も無い。一応アカデミー賞候補だったので観てみたが、本来スルーしても良いレベルだ。
大恐慌下のアメリカ。オクラホマ州の片田舎から出てきた“訳ありの男”スタン・カーライルは、流れ着いた土地で人間か獣か正体不明な生き物を出し物にする怪しげなカーニバルの一座と遭遇する。そこで読心術の技を身に着けた彼は、一座のメンバーである若い女モリーと共に別の土地で“超能力者”としての興行を始める。持ち前の洞察力とカリスマ性で一躍売れっ子になるが、心理学者のリリス・リッターがデカい仕事を持ち掛けたことから、思いがけない事態に追い込まれていく。ウィリアム・リンゼイ・グレシャムのよる同名小説の映画化で、1947年製作の「悪魔の往く町」のリメイクである。
超能力なんてものは絵空事で、スタンは綿密に仕込んだネタと卓越した観察力でそれらしく見せているだけだ。それでも彼に神性があると勘違いした者は後を絶たず、スタンの絶好のカモになる。そのカラクリを描く中盤までの展開はけっこう興味深く見せる。特に、リリスの持つバッグの中身を当てるシークエンスは鮮やかだ。
しかしながら、大富豪をインチキな芝居でだまそうとする後半の成り行きは、無理筋の連続である。いくら昔の話でも、こんな安っぽい段取りで海千山千の成金を手玉に取ることなんか、出来るはずがない。前半の一座の“獣人”のモチーフを終盤にも持ち出すことにより、最初と終わりが円環構造になるという作者の自己満足が、イヤミに思えるほど作りがワザとらしい。
リリスを簡単に信じてしまうスタンの浅はかさにも脱力するし、そもそも経済恐慌から第二次大戦へと移行する時代背景がドラマとほとんど絡んでいかないのは失策だろう。また、スタンの過去である父親との確執も十分に描かれることはない。デル・トロの演出はテンポが悪く、気が付いてみれば2時間半という不用意に長い尺になってしまった。
それでもキャストは健闘していて、主役のブラッドリー・クーパーはなかなかの熱演。ケイト・ブランシェットも悪女ぶりを発揮するし、ルーニー・マーラは相変わらず可愛い。トニ・コレットにウィレム・デフォー、リチャード・ジェンキンス、ロン・パールマン、デイヴィッド・ストラザーンといった脇の面子も悪くないと思う。だが、話自体が低調なので高評価は差し控えたい。
大恐慌下のアメリカ。オクラホマ州の片田舎から出てきた“訳ありの男”スタン・カーライルは、流れ着いた土地で人間か獣か正体不明な生き物を出し物にする怪しげなカーニバルの一座と遭遇する。そこで読心術の技を身に着けた彼は、一座のメンバーである若い女モリーと共に別の土地で“超能力者”としての興行を始める。持ち前の洞察力とカリスマ性で一躍売れっ子になるが、心理学者のリリス・リッターがデカい仕事を持ち掛けたことから、思いがけない事態に追い込まれていく。ウィリアム・リンゼイ・グレシャムのよる同名小説の映画化で、1947年製作の「悪魔の往く町」のリメイクである。
超能力なんてものは絵空事で、スタンは綿密に仕込んだネタと卓越した観察力でそれらしく見せているだけだ。それでも彼に神性があると勘違いした者は後を絶たず、スタンの絶好のカモになる。そのカラクリを描く中盤までの展開はけっこう興味深く見せる。特に、リリスの持つバッグの中身を当てるシークエンスは鮮やかだ。
しかしながら、大富豪をインチキな芝居でだまそうとする後半の成り行きは、無理筋の連続である。いくら昔の話でも、こんな安っぽい段取りで海千山千の成金を手玉に取ることなんか、出来るはずがない。前半の一座の“獣人”のモチーフを終盤にも持ち出すことにより、最初と終わりが円環構造になるという作者の自己満足が、イヤミに思えるほど作りがワザとらしい。
リリスを簡単に信じてしまうスタンの浅はかさにも脱力するし、そもそも経済恐慌から第二次大戦へと移行する時代背景がドラマとほとんど絡んでいかないのは失策だろう。また、スタンの過去である父親との確執も十分に描かれることはない。デル・トロの演出はテンポが悪く、気が付いてみれば2時間半という不用意に長い尺になってしまった。
それでもキャストは健闘していて、主役のブラッドリー・クーパーはなかなかの熱演。ケイト・ブランシェットも悪女ぶりを発揮するし、ルーニー・マーラは相変わらず可愛い。トニ・コレットにウィレム・デフォー、リチャード・ジェンキンス、ロン・パールマン、デイヴィッド・ストラザーンといった脇の面子も悪くないと思う。だが、話自体が低調なので高評価は差し控えたい。



