元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ホワイトルーム」

2018-04-06 06:29:57 | 映画の感想(は行)
 (原題:White Room)90年作品。日本での一般封切りはされておらず、私は91年の東京ファンタスティック映画祭で観ている。

 有名な女性歌手が通り魔に殺害される場面を見てしまった青年。犯人は間もなく逮捕されるが、その事件現場の女性の声がレコードで聴く歌手の声と違っていたことから、彼は声だけを担当したゴースト・シンガーが別にいるのではないかと調べ始める。やがて知り合ったそれらしき女性と親密になっていく彼だが、この事実を嗅ぎ当てたマスコミや周囲の人々が2人を思わぬ窮地に追い込んでいく。

 監督は第2回東京国際映画祭で「私は人魚の歌を聞いた」(87年)という目の覚めるような秀作を出品し、映画ファンを驚かせたカナダの女流パトリシア・ロゼマ。私としても期待していたのだが、はっきり言ってハズレだった。散文的な展開と鮮烈な映像美で話題をさらった前作の評価からのプレッシャーか、どうも気勢の上がらない出来映えだ。



 殺人事件の顛末などはどうでもよく、主人公のヒロインに対する微妙な心理の揺れを得意の耽美的テクニックで綴ってくれればよかったのだが、今回はエンタテインメントに映画の重点を振った作りで、それもあまり脚本の出来が良くなく、結果としてストーリーラインと作者の持ち味がとけ合わないままバタバタと終わってしまった印象を受けた。

 それでもハイヴィジョン合成(だと思う)を活用したSFXは優秀で、同年のアボリアッツ・国際ファンタスティック映画祭では技術関係の賞をもらっているが、こう話が面白くないと“それがどうした”と言いたくなる。

 なお、キャストはケイト・ネリガンをはじめモーリス・ゴーディン、マーゴット・ギダー、シェイラ・マッカーシーと、けっこう多彩だ。ロゼマ監督は寡作ながら、現在もフィルモグラフィを積み重ねている。派手さの無い作風で、日本で封切られても限定公開だが、近年作られた作品は面白そうなので観てみたい。
コメント
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