元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「第15回九州ハイエンドオーディオフェア」リポート(その2)

2018-04-21 06:32:11 | プア・オーディオへの招待
 今回強く印象付けられるのは、大半のブースで使用されていた音源がネットワークプレーヤー等に格納されたデジタル音楽信号あるいはアナログレコードであったという点だ。つまり、CDは完全に“蚊帳の外”に置かれてしまったのである。

 確かに、時代の流れで簡便性に富んだダウンロード等の音源と、趣味性に振られたアナログレコードとの二極化は当然かもしれない。しかしながら、ショップに並んでいるのはまだまだCDが大半だ。おそらくCDは最後のパッケージ・メディアになると思われるが、それだけにもう少し大事にされても良いのではないかと思った次第だ(笑)。



 また、巷間言われている通り、アナログレコードは復権が目覚ましい。もちろんプレス数はCD登場前の水準には遠く及ばないが、右肩上がりで出荷数を伸ばしている。それ自体は喜ばしいことなのだが、レコードには“大きな保管スペースを必要とする”という特徴があり、ブームに乗って新たにレコードのリスナーになった者は早晩この課題に直面することになる。まあ、数十枚程度ならば大した問題にはならないが、これが100枚を超えてくると、持て余す向きも少なくないだろう。

 かくいう私も、昔はレコードの保管場所に困って相当数を処分したものだ。その中には今では聴けない音源も含まれていて、惜しいことをしたと思っている。いずれにしても、オーディオや音楽鑑賞という“趣味”も、結局は居住環境に左右されるというのは何とも悩ましい。

 フェア会場ではけっこうな数の機器を試聴出来たのだが、それらのインプレッションを逐一書いていくとキリがないので、対象をスピーカーに絞っていくつか言及したい。米MAGICO社のA3は、定価は130万円ながら超高額商品ばかりの同社のラインナップの中にあっては、驚くほどリーズナブルなプライスである。音もこのブランドらしい明るさと機能美(?)をしっかりと踏襲しており、このクラスを買えるユーザーならば有力候補になり得るだろう。

 仏FOCAL社のKANTA N2は120万円と決して安くはない値付けだが、世界的なヒット商品らしい。サウンドはFOCAL特有の濃厚なホワイトソースみたいな色気を伴ってはいるが、全域のバランスが取れていて聴きやすい展開だ。そして何より豊富なカラーリングは見ていて楽しいものがある。



 伊Franco Serblin社のフロア型スピーカーLIGNEAは、奇矯なデザインながらこのメーカーらしい仕上げの良さと、明るく輝かしい音色が堪能出来る優れものである。値段はこのブランドにしては安い74万円で、私も金回りがもう少し良ければ衝動買いしそうになるほどだ(苦笑)。同じく“衝動買い対象製品”になりそうだったのがスイスのPIEGA社のPremium 701(定価は78万円)。同社の清涼な音は以前から好きだが、これは適度な温度感もあり、幅広い層にアピール出来る。

 国産ではKiso AcousticのHB-G1が印象深かった。同ブランドが発足してからその上質な音には感心していたが、この製品は響きの良さに磨きがかかり、音色・音場ともに的確で得がたいサウンド空間を演出できる。相当に高額だが、存在価値は大いにある。ECLIPSEは以前は富士通の資本による製品展開が成されていたが、最近デンソーがそれに取って代わり、株式会社デンソーテンのモデルとして市場に流通している。聴いたのは中堅機種のTD510ZMK2だが、相変わらず押しつけがましさの無いアキュレートな音出しには好感が持てる。また、この卵形のフォルムは大いに“インスタ映え”することだろう(笑)。

 会場には例年よりも年若い入場者が散見されたが、まだまだ平均年齢は高い。アナログレコードの試聴イベントでは“レコードの魅力が若年層にも認知されつつある”というコメントがあったが、ならばなおのこと、若者にアピールするような仕掛けが必要だろう。毎回若い衆を動員しているポータブル・オーディオ・フェスティバル(ポタフェス)とは一味違う、ピュア・オーディオの提供元としての若い層に対する提案が望まれるところだ。

(この項おわり)
コメント
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