元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ザ・ファーム 法律事務所」

2018-04-15 06:35:57 | 映画の感想(さ行)

 (原題:THE FIRM)93年作品。かつての私の知り合いの女にトム・クルーズを毛嫌いするのがいたが、これは単に“外見が嫌い”というレベルだから無視するとして(まー彼女によると、顔がデカいだのゼイ肉が目立つだの足が短いだのと言いたい放題で、女性ファンの容赦のなさを目の当たりにする思いであった ^^;)、俳優としてのクルーズは私は感心しない。

 断っておくが、何も彼をルックスだけの“でくの棒”だとは思わない。「タップス」(81年)とか「卒業白書」(83年)など、デビュー当時はけっこう野心的な役をやっていたし、「7月4日に生まれて」(89年)での演技は素晴らしかった。しかし、「デイズ・オブ・サンダー」(90年)以降の主演作はどれも同じである。

 はっきり言うと、彼が出てきただけで映画のストーリーや雰囲気が画一化してしまう。“能天気な白人のハンサム”の範囲を一歩も出ない演技、演出、役柄。本人も“トム・クルーズというブランド”に安住しているフシがあるのではないかと思ってしまうほどだ。

 さて、この作品もそんなクルーズのキャラクターに100%合わせた映画である。ハーバードを出た若い優秀な弁護士が、属しているメンフィスの法律事務所の舞台裏を知ったために陰謀に巻き込まれるサスペンス(クルーズに弁護士の役が務まるかという議論はさておいて)。やりようによってはインパクトの強い社会派作品になったところだが、プロットはわかりにくい上に御都合主義、悪役はマヌケで迫力無し、ラストは見事な予定調和でシラけさせてくれる。

 それでも観ている間まあまあ退屈しないですむのは、人気作家ジョン・グリシャムの原作が持つ語り口のうまさと、脇を固めるジーン・ハックマンやホリー・ハンター、エド・ハリスなどの力量によるものだろう。ジョン・シールによる撮影やデイヴ・グルーシンの音楽も効果を上げている。

 シドニー・ポラックの演出は、このネタで2時間以上引っ張るのに汲々として、とりたてて評価するところはない。それにしても、この程度の映画が公開当時はスピルバーグの「ジュラシック・パーク」(93年)を抜いてアメリカ興収ベストテンの堂々シーズン一位になったというのだから、驚き呆れるばかりである。
コメント
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