元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ピンポン」

2013-12-06 06:39:20 | 映画の感想(は行)
 2002年作品。神奈川県の高校の卓球部に所属する星野裕は腕は確かだが、自分の才能に自惚れており、クラブ活動にも身が入らない。そんな彼が思わぬ相手に苦杯を嘗めたことから、一念発起してインターハイ制覇に挑む。松本大洋による漫画の映画化。

 これが監督デビュー作となった曽利文彦はCGデジタル合成の分野で活躍してきた人物で、その資質は卓球の試合場面で最もよく活かされている。卓球といえば「フォレスト・ガンプ」を思い出す向きも多いだろうが、迫力においてこの作品は完全に上を行く。特にピンポン球が大きくドライブして高速で飛び交うシーンはスペースオペラ映画の空中戦のようで、思わず身を乗り出した。



 しかし肝心のドラマの方は、かなり素人臭い・・・・とまではいかないが、万全とは言い難いのは確か。何より窪塚洋介扮する主人公像が絵空事の域を出ておらず、彼が画面を飛び回れば飛び回るほどストーリーが宙に浮いてしまう。

 登場人物達が思い描く“子供の頃のヒーロー”というモチーフも、物語とほとんど結び付いていない割には頻繁に挿入されるし、竹中直人演じるコーチの“過去”を描く部分も取って付けたようだ。反面、ARATAやサム・リー、中村獅童、大倉孝二といったその他のキャラクターは比較的リアルに描かれており、その落差が映画全体を幾分バランスの悪いものにしている。

 映画のクライマックスは主人公と中村扮する“ドラゴン”との対決だが、作劇上での山場はARATA演じるライバルとの試合であるべきで、そこをネグレクトせざるを得なかったのは、そこまでのドラマ運びに誤謬があったとしか思えない。まあ、観て損はない映画ではあるんだけど。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする