元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「クール・ランニング」

2013-12-20 06:29:15 | 映画の感想(か行)
 (原題:Cool Runnings)93年作品。当初この映画は「三銃士」(スティーヴン・ヘレク監督版)の地方併映作品として輸入されたもので、首都圏では最初新宿や渋谷あたりでも上映している劇場がなく、場末の映画館でひっそりと公開されていたらしい。ところが、連日の大入り満員に興行側もあわてて大きな小屋を用意したという。

 ジャマイカ人がボブスレーをやるというミスマッチ感覚、リレハンメル五輪のすぐ後で公開タイミングもよかった。そしてなんとも楽しそうなレゲエ・サウンドに乗ったカラフルで明るい雰囲気が、一般のファンをひきつけたのだろう。

 ディズニー・プロの作品だからスカのはずがない(スカといっても音楽のそれではないよ)。健全で誰でも楽しめる映画が当然の興行成績を残したということは、実にノーマルで映画興行の王道である。これに気がつかなかったのは配給会社だけだったとはなんとも皮肉である。



 舞台は1987年のジャマイカで、ソウル五輪の陸上短距離の予選で転倒した選手たちが、何とかオリンピックに出たいと考えついたのは、ボブスレーでカルガリー冬季大会に出場することだった。しかし、ボブスレーがどういう競技かも知らず、雪なんか見たこともない。ただ、ジャマイカで盛んな手押し車競争とボブスレーが何となく似ているというのが理由だった。往年の名選手で今は落ちぶれてこの地に流れてきたアメリカ人(ジョン・キャンディ)をコーチに据え、猛特訓が始まる。

 物語はアメリカ映画得意のスポーツ物の定石どおりに進む。実話であり、実際にはシビアーな過程があったのだろうが、登場人物の屈託のない描き方や、ジャマイカという土地柄からか、悲壮感や押しつけがましさがまったくない。テンポのいい演出がレゲエのリズムと絶妙にシンクロしている。

 初めは他国からバカにされていたジャマイカ・チームは、めきめきと腕を上げ、本番では並みいるライバルたちと互角の戦いを展開する。クライマックスの盛り上がり、そしてホロ苦い感動にひたれるラスト。娯楽映画のツボを押さえた、見事な出来映えだと思う。ジョン・タートルトーブの演出も及第点。

 なお、ジョン・キャンディはこの作品のあと、心臓発作で死去した。43歳の若さ。実に残念だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする