元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」

2012-08-03 07:16:49 | 映画の感想(た行)
 (原題:Dancer in the Dark)2000年作品。60年代のアメリカの田舎町を舞台に、東欧移民のシングルマザーが理不尽な罪を被って破滅していくまでを描くラース・フォン・トリアー監督作品。カンヌ国際映画祭で大賞と主演女優賞を獲得している。

 私は封切り時に見たが、途中退場した客も10人以上いたようだ(笑)。一方でラスト近くにはあっちこっちからすすり泣きの声が聞こえてきたことを思い出す。でもちょっと待てよ。なんで泣くの? ヒロインが可哀相だから? 単に“可哀相にねぇ”だけで泣いていいものかどうか、意地悪な私は心の中で逡巡してしまった。



 もとよりこのストーリーに実体感なんかあるわけがない。プロットは穴だらけであり、筋金入りの変態であるラース・フォン・トリアー監督が頭の中だけでデッチ上げたシロモノだろう(だいたい、アメリカが舞台なのにロケをすべてスウェーデンで行ったというのもクサい)。

 それを力技で観客に押しつけるスキルを(幸か不幸か?)持ち合わせていたところがこの監督の非凡なところなのだろう。この前の作品「奇跡の海」ではその“力技の方法論”が無茶苦茶なカメラワークとエミリー・ワトソンの力演とラストの大見得であったのに対し、この作品では主演のビョークの存在感と音楽だったのだろう。

 つまりこれは“ビョークに尽きる映画”である。それ以外には何もない。ビョークの雰囲気と音楽にハマれば評価はできるだろうし、そうじゃなかったら不安定な映像と真っ暗なストーリーに不快感を覚えて敬遠するしかない。関係ないけど終盤はアラン・ドロン主演の「暗黒街のふたり」を思い出してしまった。
コメント
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