元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「卍(まんじ)」

2012-08-16 18:07:50 | 映画の感想(ま行)
 昭和39年の増村保造版。谷崎潤一郎の同名小説の映画化で、同性愛カップルの女二人と、男一人とのイレギュラーな三角関係を描く。

 これは本当に面白い。製作年度を考えれば露出度が低いのは当然だが、そこは増村御大、ヒロイン二人が山道を歩きながら指先を絡め合う場面や、若尾文子の肉体を前にして岸田今日子がシーツを引き裂くシーンなどのエロティシズム描写を小出しにすることによって最大限の効果をあげている。

 そして後半でのヒロイン園子の夫や光子の情夫も加えての欲望と狂気が渦巻く虚々実々の駆け引きは、効果的に振りまかれたブラックな笑いも相まって、一種異様な世界に突入。そもそもこの映画自体が園子の一人称で語られることもあり、何がウソでホントかわからない迷宮の深さはいや増すばかり。90分という上映時間に見せ場がぎっしりという感じで、鑑賞後の満足度はかなり高い。

 なお「卍(まんじ)」は83年に横山博人監督によっても映画化されているが、増村版にはとても及ばなかった。やはりこういうネタは“ビョーキ度”の高い映像作家の方が有利なのであろう(笑)。
コメント
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