元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

鈴木光司「エッジ」

2012-05-11 06:35:16 | 読書感想文
 ローランド・エメリッヒ監督の「デイ・アフター・トゥモロー」や「2012」といった“大味SF巨編”に通じるものがある小説だ(笑)。鈴木光司といえば「リング」の作者として知られるが、単なるホラー編では飽き足らなかったのか、その後「らせん」「ループ」といったSF色の強い“続編”をリリースし、大風呂敷を広げた挙げ句に収拾が付かなくなった“前科”がある。本編は最初からSF仕立てのアプローチだが、物語が拡散する一方でストーリーの密度が薄くなっていくのは同じだ。

 世界各地で原因不明の失踪事件が頻発する。取材に当たったジャーナリストの冴子の父親も18年前に行方不明になっており、この謎を解けば、父に会えるかもしれないとの思いを強くする。やがて彼女は、この異変の背景に全宇宙的な規模でのカタストロフが関係していることを知る・・・・という話だ。



 本文中に科学的ウンチク(らしきもの)が山のように出てきて、事態の真相を何とか説明しようとしているように見える。しかし結果として目に付くのは、エメリッヒ御大の作品と同じく“とにかく世界の終末は来ちゃったのだ。オレがそう思うから、間違いないのだ”という夜郎自大な開き直りばかりだ。

 しかも、読み手を引き込むようなスペクタキュラーな場面やサスペンスフルなシーンはほとんどない。肝心の論理的な(?)説明も、どこか破綻している・・・・というか、途中で理解するのを放棄したくなるような芸のなさだ。特に終盤の展開なんかトンデモ度100%といったところで、読んでいて萎えた。

 ヒロインをはじめ、登場人物にほとんど魅力が無いのにも困った。どいつもこいつも、頭の中で安易に考えたような造型だ。いずれにしても、読む価値がある本とは思えない。いつか面白くなるはずだ・・・・と思いつつページをめくった私は良い面の皮である(爆)。
コメント (2)
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