元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

最近購入したCD(その24)。

2012-05-20 06:37:56 | 音楽ネタ
 以前このブログでも紹介したことがあるジャズ・ポップユニットの「LaidbacK」のヴォーカル、井筒香奈江が発表したソロ・アルバム「時のまにまに」は、かなりの高レベルの仕上がりだ。

 5曲入りのミニ・アルバムであり、すべて昭和の歌謡曲をカバーしている。江森孝之によるギターだけの伴奏だが、音像の一つ一つが磨かれたような存在感を発揮し、絶妙なアレンジも相まって濃密な音世界を展開。メロディの美しさが丹念に練り上げられ、オリジナルとは一線を画した独自の領域に到達している。



 さらに録音は素晴らしいの一言だ。オンマイクで収録された井筒の歌声はあくまで生々しく、聴いていて鳥肌が立つようだ。ギターは控え目ながら、ヴォーカルとの距離感がしっかり取れている。音場は三次元的に広く、特に上下方向の再現性に優れている。オーディオ評論家の間では評判になったディスクらしいが、それも十分頷けるほどのクォリティだ。残念ながらCDショップの店頭にはあまり置かれていない商品だが、ネット通販で取り寄せてでも聴く価値のある逸品と言えよう。

 南米トリニダート・トバコ出身で現在はアメリカで活躍する女性ラッパー、ニッキー・ミナージュの2枚目のアルバム「ロマン・リローデッド」は、近頃私のリスニングルームのヘヴィ・ローテーションになっている。国内盤は70分を優に超える収録時間ながら、まったく飽きさせない質の高さを見せつけている。



 とにかく内容が多彩。レディー・ガガを手掛けたヒットメーカーのレッド・ワンがプロデュースしたノリの良いダンス・ナンバーをはじめ、ハードコアなラップやラヴ・バラードなど、手を変え品を変えリスナーに迫ってくる。アレンジは絶妙と言うしかなく、まるで重層的な音の波がこちらに押し寄せてくるようだ。録音は水準クラスだが、それでも最近のJ-POPよりは上等だ。

 ミナージュ自身の声は、蓮っ葉なようで実は蠱惑的という、実にオイシイところを確保している。歌詞も挑発的で実に良い。マドンナやマライア・キャリー、リアーナ等の大物との共演も既に果たし、これからどれだけ成長するか分からない、まさに逸材だ。今後もディスコグラフィーを追って行きたいミュージシャンである。

 ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番といえば有名なナンバーであり、映画音楽として何度か使用されたこともあるからクラシック好きではなくても知っている人も多いだろう。ディスクもリヒテルやアシュケナージ、ルガンスキー、ガヴリーロフなど名盤が目白押しだが、ここにまたひとつ秀作が登場した。中国の若手女流ピアニスト、ユジャ・ワンがクラウディオ・アバド指揮のマーラー室内管弦楽団と組んだ一枚だ。



 一聴して、彼女は凄いテクニシャンであることが分かる。まさに天翔るという感じの達人ぶりだ。しかしながら、技巧だけを前面に出した無味乾燥な演奏ではない。オーソドキシーに徹しながらも、何ともいえない色気がある。それも濃厚で湿度の高いものではなく、爽やかで健康的だ。

 ストレス無く聴けて、しかも自然で清涼な魅力に溢れた演奏。アバド&マーラー室内管のサポートも的確で、ケレン味のないスクエアーな展開によりピアノのパートを盛り上げる。カップリングされたパガニーニの主題による狂詩曲も素晴らしい。録音はこのレーベル(独グラモフォン)にしては音場感が良く出ており、水準は十分にクリアしている。2011年度の「レコード芸術」誌における読者投票一位作品。買って損は無い。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする