(原題:King Arthur )2004年作品。5世紀のイギリスを舞台に、伝説の英雄アーサー王と“円卓の騎士たち”の活躍を描く。アーサー王は実在した人物かどうかは不明だが、同じく彼を主人公として扱ったジョン・ブアマンの「エクスカリバー」(81年)とは違い、作者側でひとつの“史実”を考案していることが目新しい。
しかも、アーサーはローマからブリテン島に派遣されてきた“現場監督”に過ぎず、円卓の騎士達も東方騎馬民族出身の外国人だという設定は、ソマリアやボスニアなどの辺境の地で“蛮族”と戦った現代の多国籍軍を思い起こさせる構図だ。
製作者のジェリー・ブラッカイマーは非現実的な“伝説”には興味がないらしく、戦場のリアリズムの創造に徹している。そして、凶暴な敵役がアングロサクソン人であることも、製作意図をいくらでも裏読みできる点で興味深い。
黒澤明に心酔しているという監督のアントワン・フークアは主人公達をまるで「七人の侍」のように扱う。活劇シーンは同じ年に製作されてCGに頼りっぱなしだった「トロイ」(ウォルフガング・ペーターゼン監督)と違って迫力満点だ。特に凍った湖面での死闘は段取りが上手くて感心した。
アーサー王役のクライブ・オーウェンをはじめ男優陣は地味だが、リアリティ重視の作劇ではそれも納得できるし、何よりその分ヒロイン役のキーラ・ナイトレイが男どもを蹴散らす大活躍を見せてくれるので、まるで気にならない(改めてナイトレイは“時代劇の似合う女優”であることを確認できる)。ハンス・ジマーの音楽も快調だ。
以下蛇足だが、私がアーサー王伝説の存在を知ったのは、元イエスのキーボード奏者リック・ウェイクマンのソロアルバム「アーサー王と円卓の騎士たち」による(発売は75年)。いわゆるコンセプト・アルバムの形式を持つ重厚長大な作りで、こういう音楽作りが認められたのも、プログレッシブ・ロック全盛だった時代性のためであろう。