元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「LOVERS」

2012-02-21 06:32:16 | 映画の感想(英数)

 (原題:十面埋伏)2004年作品。快作として名高い「HERO」(2003年)に続く張藝謀監督による武侠活劇巨編の第二弾だが、前作より大幅に落ちる出来だ。

 脚本が練られていないのが致命的で、9世紀中頃の中国を舞台にした反政府組織と官憲側とのバトルという大規模な設定が、ラスト近くには主人公三人の痴話ゲンカにまでスケールダウンしてしまう筋書きをはじめ、個々の描写にも突っ込みどころが満載。とにかく、観ていて盛り下がるばかりだ。

 公開当時に各評論家が指摘していたとおり、組織のボスを演じるはずだったアニタ・ムイの急逝が大きいと思われる。シナリオのリライトが間に合わず、彼女の存在感によってクローズアップされるべき反政府側の大義や影響力がスッポリ抜け落ちたまま作劇を強行したおかげで、ストーリー自体が釈然としないものなったのだろう。低予算の香港製アクション劇ならともかく、行き当たりばったりで撮れるような作品の“格”ではないはずだ。

 金城武、チャン・ツィイー、アンディ・ラウらの演技も精彩を欠き、アクション・シーンはCGの使い方が低調でキレもコクもない。カメラマンが交替したせいか、前作のような観客の目を奪う映像美にも乏しく、見せ場が序盤のヒロインの舞踏シーンだけというのは寂しい限りである。
コメント
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