元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「幸せのポートレート」

2006-09-15 06:56:23 | 映画の感想(さ行)

 (原題:The Family Stone)変わり者揃いの婚約者の家族との対立と和解を描くという、まあ以前にも何回か観たような話なのだが、互いの“化けの皮”がシビアな形で直ちに剥がれてしまうところが面白い。

 サラ・ジェシカ・パーカーが演じる主人公はニューヨーク在住のキャリアウーマンで、傍若無人で計算高いだけのガサツな女。彼女の婚約者の一家は極端に排他的なリベラル派で、一切隠し事をしないというのがモットーらしい。

 観ている側にすればどちらも付き合いたくないタイプだが、双方のそういう姿勢が“仮面”に過ぎないことが判明し、まさしく“素”の状態に立ち戻ったところから、結婚や母親の死期が近いといったリアルな事態に直面しながら、互いのコミュニケーションを一から積み上げていこうとする登場人物達の姿を見ていると、この監督(新鋭トーマス・ベズーチャ)の人間を見る目は確かだと思えてくる。

 ラスト近くの“主人公の妹が出てきてどうのこうの”という展開はワザとらしいが、これが突き放したままだとラブコメとしての商品価値(?)が下がるので仕方がないのだろう(笑)。それを除けば辛口の群像劇として見応えは十分だ。

 出演者の中では母親役のダイアン・キートンが最高だ。死を前にしての突き抜けたような諦観と一種の“明るさ”を違和感なく表現しているあたりはスゴい。思えば昔彼女が演じた役柄の数々は今回のサラ・ジェシカ・パーカーを上回る“自立した女”だったことを思うと実に感慨深い。幾分ノスタルジックな意匠と冒頭タイトルバックのセンスの良さも光る。公開時期が季節外れであるようにも思うが(舞台はクリスマス・シーズン)、まずは観る価値十分の佳作と言えよう。
コメント
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