元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「母」

2006-09-27 08:14:34 | 映画の感想(は行)
 アジアフォーカス福岡映画祭2006出品作品。監督のレスター・ジェームス・ピーリスは、黒澤明やサタジット・レイとともに“アジア映画の三羽烏”と謳われるスリランカ映画界の大御所だという。彼の映画を観るのは今回が初めてだが、正直、これで本当に黒澤やサタジット・レイと肩を並べる巨匠なのかと首を傾げてしまった。

 主人公は女手一つで二人の息子を育ててきたが、一人は仏門に入り、もう一人は軍隊に志願する。いずれにしろ、母親の元から去っていくわけで、彼女は死ぬほど寂しがるわけだ。映画はその様子を切々と描くが、撮り方が非常に古くさい。大仰な芝居とケレン味たっぷりのカメラワーク(特に主演のマーリニー・フォンセーカは完全なオーバーアクト)、シークエンスの繋ぎも隙間風が吹きまくっている。1時間半ほどの上映時間がかなり長く感じられた。

 ピーリス監督は87歳とかで、若い頃には精気みなぎる作品をモノにしていたのかもしれないが、この作品を観る限り、才気は感じられない。ただし、スリランカの内戦の切迫した状況だけは映画の出来とは関係なく観る側にひしひしと伝わってくる。

 関係者の話によると、ロケ地はすでに“激戦地区”に成り果て、一般人は足も踏み入れられない状況だという。敬虔な仏教徒を多数擁するスリランカで、こういう惨劇が繰り返されている事実を目の当たりにすると、世の不条理を感じずにはいられない。宗教は戦争に対して無力であるのか・・・・。
コメント
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