環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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「地球温暖化問題」についての世論調査の結果 2つ

2008-01-08 23:22:32 | 温暖化/オゾン層
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「地球温暖化問題」に対する世論調査の結果が2つの新聞社から公表されました。一つは毎日新聞(2008年1月6日)で、もう一つは朝日新聞(2008年1月7日)です。



質問も回答も似たものですので、調査結果の詳細はそれぞれの紙面をご覧いただき、皆さんご自身でお考えください。この調査結果に対する私の印象は「環境問題を常に矮小化してきた日本の、特に1988年以降20年間の官民あげての啓発活動が見事なまでに功を奏し、地球温暖化を含めた環境問題の危機感を薄めてしまった」ということです。

毎日新聞には世論調査の結果に対するお二人の識者のしっかりしたコメントが出ています。そこで、私はお2人のコメントにコメントをしておこうと思います。

最初は西岡さんのコメントへのコメントです。

私は西岡さんのこのコメントに全面的に賛同します。「特に若い世代で生活を変えることに拒否感があることだ。これをぬぐい去るには、政府や研究者が、地球温暖化は人間の力で克服可能であり、そのためにはどのような道筋を歩むべきなのか、ビジョンを示すことが大切だ」、「日本のやるべきこととして、技術面を挙げる人が多かった。だが、同時に社会システムの変革を成し遂げることが重要だ」というお考えは、私の主張と完全に一致します。この点こそ、私が90年代の早いころから主張し、他の先進国よりもスウェーデンの行動を高く評価しているところだからです。次の2つの図をご覧ください。


最初の図は日本とスウェーデンのビジョンの相違です。そして2番目の図は、スウェーデンの首相が1996年の施政方針演説で「21世紀前半社会のビジョン」を掲げたのに続き、1999年の国会での施政方針で述べた「生態学的に持続可能な社会(緑の福祉国家)」の国家像です。

ここで重要なことは、21世紀のビジョンである「緑の福祉国家」20世紀の安心と安全を保障してきた「福祉国家」をベースにして、21世紀最大の問題である環境問題にも耐えられるように設計しようというわけですから、国民にとっては現在よりも安心であり、希望があるということです。ですからスウェーデンの国民にとっては十分に実感できる国家の再設計なのです。世論調査の質問にあるように、「今の生活レベルを下げることができるか」という発想ではありません。

スウェーデンはこの10年間で着実に成果を上げています。具体的な成果についてはカテゴリー「社会/社会的合意形成」を参照してください。そのいくつかを見つけることが出来るでしょう。その中から次の関連記事2つを取り上げます。

関連記事

なぜ、先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう⑤ スウェーデン人のイメージ②(07-08-22)

進化してきた福祉国家⑪ スウェーデンについて私たちが、最近知ったこと(07-09-06) 


20世紀の「福祉国家」を21世紀の「緑の福祉国家」(生態学的に、あるいはエコロジー的に持続可能な社会)への道筋については、このブログの「市民連続講座:緑の福祉国家1~63」を参照してください。ここには、西岡さんがおっしゃる「ビジョンを実現するための道筋」が書かれています。

そこで、あえて西岡さんにお尋ねします。ご存知だと思いますが、2005年に小泉政権の経済財政相であられた竹中平蔵さんが指示して作り上げた 「日本21世紀ビジョン」 をどう評価しますか。私は、この「日本21世紀ビジョン」は西岡さんたちが構想するビジョンとは整合性のない「20世紀的な発想に基づくビジョン」だと考えますが、いかがでしょうか。このビジョンの目標年年次は2030年となっています。


関連記事

総務省の「高齢者統計」と厚労省の「労働力推計」(07-11-22)

治療志向の国の「21世紀環境立国戦略」(07-06-04) 



次は筑紫さんのコメントへのコメントです。

あえて、2006年2月に上梓した私の本「スウェーデンに学ぶ持続可能な社会:安心と安全な国づくりとは何か」(朝日選書792 朝日新聞社)の「おわり」に紹介した学生の言葉を紹介しておきましょう。

●小学6年生の頃から酸性雨や温暖化、オゾン層の破壊、森林破壊、エネルギーの枯渇など環境問題は非常に深刻な事態だと教えられてきたが、それほど深刻に考えたことはなかった。五感で感じられなかったし、自分から遠く離れた外国のことだと思っていたからだ。この授業を受けて世界の未来が危ないという事態に震えが起きた

●環境問題と経済活動を一緒に見てきた授業はこれまでまったくなかった。環境問題をどうやって解決するかを考える前に、いまの経済活動のあり方を考え直し、持続可能な社会をつくっていくことが大切だと思った。

●環境問題はその国の環境に対する考え方や取り組みだけでなく、その国の政治的な見通しや経済活動もかかわってくる問題であることを初めて知り、すごく驚いた。


 
判断基準や見方を変えれば、「新しい可能性と希望」が生まれることを、学生は私の講義からくみとってくれたようです。

生活のレベルを下げることができるか」という問いに、20代で「できない」が「できる」と答えた人の割合より多かったのはむしろ当然ではないでしょうか。上記の3人の学生が書いていますように、日本では環境問題が矮小化され多くの識者や政治家が「日本は世界に冠たる省エネ国家」(安倍前首相もそう言っていましたが、私は異論があります)、「日本の優れた環境技術」(私は公害防止技術だと思います。環境問題と公害は同義語ではありません)などと語り、あたかも日本が世界の最先端を行っているかのような幻想をふりまき、マスメディアも十分な検証もせず、追従している現状では、20代の多くの人には環境問題の本質は理解されていないでしょう。

「事態の深刻さを もっと説明を」はそのとおりだと思います。与えられる情報の質によって結果は異なります。私の学生の反応を見れば明らかでしょう。日本とスウェーデンの国民の意識を比べると次のようになるというのが私の理解です。




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2 コメント

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Unknown (くらげ)
2008-01-10 11:35:27
田中優さんという方がおっしゃっていたのですが
民生部門の排出量というのは、デパートやオフィスと一般家庭を一緒にして計算している、と。
だから家庭部門は実際にはそんなに大きくない割合で、一番大きいのは企業なのだから、そこを減らさない限り、国としての排出量は削減できない、ということでした。
もちろん家庭も努力は必要ですが、無用な負担を押し付けるのはよくありませんよね。
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おっしゃるとおり (小澤)
2008-01-15 09:50:47
田中さんがおっしゃることも、くらげさんがお考えのこともその通りだと思います。

温暖化の原因とされるCO2を削減しなければならないのは基本的には企業部門だと思います。民生部門に含まれている業務部門(デパート、コンビニ、オフィス)は企業部門だからです。

スウェーデンでも同じように民生部門という分類が伝統的に使われていますが、日本とは相違して、この部門は減少の傾向にあります。次の記事をご覧ください。

緑の福祉国家17 気候変動への対応⑥ 
http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/dd460ea0a8ef82be69152a0a1b8835f1


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