環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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オゾン層保護:日本とスウェーデンの対応の相違

2011-02-22 14:45:14 | Weblog
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5日前の2月17日の朝日新聞夕刊で編集委員の竹内敬二さんが「代替フロン 温暖化を助長」という記事をお書きになっています。記事は「オゾン層保護は地球環境保全の成功例とされる」という書き出しで始まり、国際社会の対応を概観した上で、「しかし、成功の陰に大問題が横たわっていた」と述べ、日本の対応に言及しています。

何はともあれ、まずは、この記事をじっくりとお読み下さい。




今日は、この記事の流れに沿って、「オゾン層保護」という大問題に対する日本とスウェーデンの対応の相違を検証します。

次の図はフロン類規制の国際動向の概要を示すもので、およそ20年前の1992年に私がまとめたものです。


このブログ内の関連記事から
代替フロンの一つHCFCの規制 途上国で10年前倒し(2007-09-23)

そして、次の図は前の図「フロン類規制の国際動向」のモントリオール議定書による「最初の規制(1995年末までに先進国でのCFCsの生産中止)」に対するスウェーデンと日本の対応の相違を示しています。両国ともモントリオール議定書の規制をクリアーしていますが、スウェーデンは議定書が定めた期限の1年前の1994年末に「製造」の禁止だけでなく、「使用」や「再利用」の禁止に加えて「捨てた場合」の罰金まで独自の規制をかけました。

そして次の記事は、最近、中国が大量の「代替フロン排出国」になっていることを伝えてます。




★日本の状況は

このような国際的な状況を背景に日本の最近の状況を調べてみましょう。次に示す新聞記事は「代替フロンの排出」に対する日本の対応が極めて不十分であることを示しています。

●温室ガス 断熱材も排出源 経産省 新建材の開発も目指す(朝日新聞 2007-02-04)

●代替フロン漏れ 想定の倍 温室ガス排出量 上方修正(朝日新聞 2009-03-21)

●代替フロン 07年度排出量1320万トン 昨年の速報値から倍増(毎日新聞 2009-04-03)

●フロン漏れ 温暖化の脅威 使用・修理中にも放出(朝日新聞 2009-10-02)

●空調・冷凍機の冷媒 脱・代替フロンを加速(日本経済新聞 2010-06-20)

●政府方針 代替フロン対策強化(毎日新聞 2010-07-04)



これらの記事が示唆していることは、いわゆる想定外の事態と言ってもよいかもしれませんが、次の図に示す現状は十分想定されていたものです。その実態にはあきれるばかりです。

日本は2002年10月に「フロン回収破壊法」を施行しました。この法律の対象ガスは「特定フロン(CFCs)」と上記の記事が漏れを指摘している「代替フロン」ですが、対象となる製品は「カーエアコン」、「業務用」および「空調機」のみで、 「スプレー」は対象外です。


そこで、次の記事をご覧下さい。



この記事は7年前の2004年の記事です。冒頭の竹内さんの記事の左上に掲載された写真に、「制汗剤、泡状整髪剤などほとんどのスプレーにフロンガスが使われていた=1988年、東京・銀座」という説明がつけれらています。23年前にほとんどのスプレーで使われていたとされるフロンガスが現在どのような状況にあるかは調べていませんのでわかりません。

しかし、日本では合法的に「温暖化ガスを使用したパソコン用スプレー」が量販店で今なお販売されているのです。同じメーカーが図の右に示した「ノンフロン製品」(成分:DME、CO2)を発売しているにもかかわらずです。合法的とは言え、日本のメーカーや販売店の認識を疑わざるを得ません。


なお、100%HCF-152aガス使用のダストブロアー(図の左側、オレンジ色)には保管及び廃棄上の注意として、「●火気のない屋外で完全にガスを抜いてから、“ガス抜き済み”と表示して、各自治体の分別に従って捨てて下さい」という指示が書かれています。





★スウェーデンの状況

次の図はスウェーデンの「フロンガス(特定フロン:CFCs)に対する規制状況」です。
1987年の「モントリオール議定書」が定めた1995年末までに「先進国での生産を中止する」という規制に対して、スウェーデンはその議定書の期限よりも1年早く、CFCsの全廃をめざす行動計画を立てました。


そして、その結果が先に示した「特定フロン(CFCs)に対する対応」という図です。


スウェーデンの行動計画の最終年の1994年8月、スウェーデン最大の家電メーカーのエレクトロラクス社は、ノンフロン冷蔵庫の販売を開始しました。当時の日本のメーカーはすべて、冷蔵庫の冷媒として代替フロンである「HFC-134a」という温暖化物質を使っていたことに注目して下さい。

このブログ掲載の関連記事
緑の福祉国家18 オゾン層保護への対応 ① (2007-02-05)

緑の福祉国家19 オゾン層保護への対応 ②(2007-02-06)

緑の福祉国家20 オゾン層保護に向けて(2007-02-07)


余談ですが、平成10年(1998年)、当時の日本の環境庁はスウェーデンのエレクトロラクス社の「ノンフロン冷蔵庫」を購入したとホームページで伝えています。

そして、スウェーデンから遅れること8年、2002年になって日本でも松下電器産業(株)からノンフロン冷蔵庫が発売されました。





冒頭の竹内さんの記事によりますと、米国では今年からGEが「ノンフロン冷蔵庫」を発売するのだそうです。スウェーデンの発売から8年遅れて日本が発売、そしてその日本からさらに遅れること9年、つまり、スウェーデンから遅れること17年ということになります。このことは、環境問題の解決は最終的には単なる技術の問題ではなく、「基本認識」と「将来を見通す力」や「倫理観」であることを示唆していると言えるでしょう。決して忘れてはならないことは、日本や米国や中国などの新興国の当該物質の消費量が極めて大きいことです。