環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

皆さんは本当にそう思うのですか!

2011-01-03 11:17:52 | 社会/合意形成/アクター
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今日は、昨年12月にネット上で「ドラッカーの環境問題に対する認識」を検索していた時に、検索結果として出てきた次の2つ記事について考えてみましょう。これら2つの記事は、入力したキーワード「ドラッカーの環境問題に対する認識」でヒットした約480,000件のうち、現在の順位(2011-01-03 午前10時現在)では11位、12位となっています。

いずれも「日本人の環境問題に対する認識」を調べたものです。前者は日本の大手広告会社博報堂の生活総合研究所、後者は内閣府大臣官房政府広報室の調査によるものです。最新の調査ではありませんが、その傾向を知る手がかりにはなりそうです。とにかく、ざっと、目を通してみてください。

Business Media 誠:環境問題への意識は高いが、知識不足&行動しない ...
2008年5月20日 ... 環境問題に対する意識や行動は、国によってどれほどの違いがあるのだろうか。東京在住の人は「地球温暖化への危機感」(88.4%)や「経済発展より環境保護を優先」(90.2% )の回答が世界8都市でトップになるなど、危機感を抱いている人 ...
bizmakoto.jp/makoto/articles/0805/20/news014.html - キャッシュ - 類似ページ

環境問題に関する世論調査
環境問題全般に対する関心・意識について (1) 家庭における環境保全の取組 (2) 環境に関する情報の入手方法 (3) 環境保全活動への参加状況 (4) 今後の環境保全への取組 ア 環境保全行動に際して必要になるもの (5) 環境保全と経済の関係についての考え方 ...
www8.cao.go.jp/survey/h17/h17.../index.html - キャッシュ - 類似ページ

皆さんのご感想はいかがでしたか。敢えて、調査方法の問題などの妥当性を無視して、結果だけを見れば、「日本人の環境問題に対する認識」と「ドラッカーの認識」や「私の認識」との間にはとんでもなく大きな落差があることがおわかりいただけるでしょう。

そこで、今日は、上記の2つの調査結果を意識しながら、4年前にとりあげた「出来ること(ところ)から始めることの危険性」再度とりあげます。「日本の将来社会」の議論の参考にしていただければ、幸いです。


出来ること(ところ)から始めることの危険性

上の2つの調査報告が示すような状況下では、市民の草の根的な運動だけでは環境問題の解決はおぼつきません。私たちが今なすべきことは、経済拡大を目的とした古い考えや社会制度や法制度をそのままにして「身近なところ(こと)から始める」「できるところ(こと)から始める」ではなく、「現状をよく知ること」です。

「私たち一人一人の力は本当にささやかであるが、そのささやかな力でも無数に集まれば、社会を動かすことができる。いままでの社会の変革はすべて、ささやかな一歩の上に築かれたものであり、『そのささやかな思い』と『行動の集積の結果』がやがて、大きなうねりとなって社会に変化が起こる」 

こうしたメッセージには、「異議なし」といいたいところです。しかし、こと日本の環境問題に関しては、あえて異議を唱えなければなりません。このような発想からは、「環境問題の規模の大きさについての認識」「時間の観念」が抜け落ちているのではないでしょうか。

 各人が「ことの重要性」に気づき、 「できるところから始める」という考えは、日本ではきわめて常識的で合理的で一般受けする穏便な考えですので、とくに市民団体から好まれます。日本の社会の仕組みはきわめて強固で、目の前には困った状態が迫ってきているので、とりあえず「できるところから始める」とか、「走りながら考える」とかいった発想になりがちです。この発想だと、むずかしいことを先送りすることになりかねません。 このことはマスメディアが「政府の決定の先送り」を頻繁に報じていることからも明らかです。


では、どうしたらよいのでしょうか。環境問題に対して、個人にできることはないのでしょうか。

 私は、個人にできることはたくさんあると思いますが、「対処すべき環境問題の規模の大きさ」と「残された時間の短さ」を考えると、この種の発想に基づく行動は問題の解決をいっそうむずかしくすると思います。

「現行経済の持続的拡大」という国民の暗黙の了解で進められている日本の産業経済システムのもとで、個人のレベルでできることは、「一歩前進」あるいは「しないよりもまし」と表現されるように、いくらかは「現状の改善」には貢献するかもしれませんが、「21世紀の日本の方向転換」には貢献できないでしょう。いま、私たちに求められているのは方向転換のための政治的な第1歩であり、1歩前進だからです。

1992年6月の「国連環境開発会議(=地球サミット)」や97年の「地球温暖化防止京都会議」、2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議(=環境・開発サミット)」、最近ではCOP16(気候変動)やCOP10(生物多様性)なとで世界各国の首脳や代表が集まって議論したのは、もはや環境問題の解決が国民一人一人の心がけではどうにもならないところまで来ているからではないのでしょうか。

21世紀の明るい社会は、現行の産業経済システムをさらに量的に拡大した延長上、すなわち、右肩上がりの統計で示される方向にはあり得ないので、私たちは社会の一員として、まず「環境問題の本質」を理解し、その共通の認識のもとに、それぞれの職業分野の知識を総動員して、環境問題解決のための行動に参加しなければなりません。 

このブログ内の関連記事
「出来ること(ところ)から始めること」の危険性①(2007-09-08)

「出来ること(ところ)から始めること」の危険性②(2007-09-09)


「出来ること(ところ)から始めること」の危険性③(2007-09-10)


私たちの社会では、さまざまな経済・社会問題が同時進行しています。そのほとんどは「相対的」であり、「絶対的」ではありません。ですから、これらの経済・社会問題の把握には、次のような考え方が必要となります。


個人が最もその力を発揮できるのは、自分の「職業分野」「専門分野」あるいは「得意な分野」を通じて行動するときだけだからです。


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3 コメント

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Unknown (isoroku-hitoshi)
2011-01-03 18:08:05
誤って昨日の欄にコメントしてしまいましたので、まことにご無礼ですが同じ文面を本日のコメント欄にコピーしました。ご容赦のほどお願い申しあげます。

「私たちがいまなすべきことは、経済拡大を目的とした古い考えや社会制度をそのままにして『身近なところ(こと)から始める』『できるところ(こと)から始める』ではなく、『現状をよく知ること』です」という小澤先生の主張に大いに共感しました。
ドラッカー著「新しい現実」ダイヤモンド社1989年刊の9章「グローバル経済と地球環境問題」を読むと、2011年の現状を知るために必要な鋭い視点が記述されていました。目の鱗がとれるような叙述です。一部を引用します。
●今日の世界経済の特徴およびその提起している問題と機会とは、次のようなものである。
(項目は8項目あり、ポイントは次の通り)
(1)1970年代以降国際経済からグローバル経済へ変化した。
(2)グローバル経済を動かすものは主として資本の移動である。
(3)競争力の基礎となる決定的要因は伝統的な生産要素ではなくマネジメントである。
(4)企業活動の目標は利益の最大化から市場の最大化に変わる(今後は貿易が投資に従う)
(5)支配的な経済単位が主権国家だけの時代から四つの単位(主権国家・経済ブロック・貨幣信用投資のグローバル経済・グローバル企業)の相互関連、依存関係に変わった(支配関係にはない)。
(6)経済政策は自由貿易主義や保護主義から経済ブロック間の相互主義になる。
(7)新しい現実として、地球環境問題が発生
した。
・資本や情報に国境がない以上に、大氣の保全や森林の保護など重要な環境問題は主権国家の法や行動によってのみでは対処できない。
・環境問題は国家間の対立的な問題としても対処できない。
・共同のグローバルな政策がグローバルに実施されることが必要である。
(8)グローバル経済はすでに現実なのに、必要な仕組みを持たず、グローバルな法を必要としている。



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改めて全面的に合意します (おかの)
2011-01-04 15:52:45
 言われるとおり、「いま、私たちに求められているのは方向転換のための政治的な第1歩であり、1歩前進だ」と思います。
 それはさらに具体的には、既成政党にはきっぱり見切りをつけること、まったく新しい党が生まれるために必要な条件を調えていくことですね。
 今年もご一緒に精一杯の努力をしていきましょう。よろしくお願いします。
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本年もよろしくお願いします。 (HIRO)
2011-01-05 23:33:41
「環境問題の規模の大きさについての認識」と「時間の観念」が抜け落ちているのでは・・・というご指摘、改めて腑に落ちました。

特に「時間の観念」が日常の中では、すぐに薄れていってしまいます。アンテナを張り続けなくてはいけませんね。

ただ、「職業分野」「専門分野」あるいは「得意な分野」を通じて行動できるよう、日常を大事にしていきたいと思っています。

本年もブログの更新を楽しみにしています。
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