前出の記事が、好き勝手にダラダラ長くなったので、演奏会の後半のメインプロは、こちらに新たに書き足しておきたい。
後半のプログラムは同じベートーヴェンでも、誰もが知っている超有名曲の第5交響曲「運命」だ。普段音楽など聴かない人たちでも、冒頭の運命の主題はおそらく知らない人はいないはず。今まで何百何千というレコードが発売され、クラシック音楽の分野ではとてもポピュラーな楽曲である。
アントンKも今にして思えば、このベートーヴェンの第5は、中学生時代に初めて鑑賞しクラシック音楽の門を叩いた。以来第5に関しては多種多様な演奏に触れ、フルトヴェングラー、ワルターを頂点とした若き時代や、朝比奈/大フィルに没頭しライブでも聴きまくった時代が思い出される。こんな鑑賞を繰り返しながら、アントンKの中でも演奏に好みのスタイルが段々と出来上がっていった。
この日の指揮者鈴木秀美氏は、バロック音楽の大家としてご自身も18世紀オーケストラのプレーヤーとして活躍されていた経歴をもち、当然のことながら演奏もそのスタイルが貫かれていた。どのくらい前になるだろうか、一時的な流行としてコープマンやノリントン が古楽器で演奏するCDが発売されて話題になったことがあるが、今回生演奏で鑑賞してみて、まさしくその時に聴いた響きそのものだった。いわゆノンビブラート奏法とでもいうのか、オケの響きが独特になり、鋭角的な音で聴衆を圧倒していたのが印象的。マエストロ鈴木の指揮振りも、棒は使わず、全体を通じて快速特急のように音楽が駆け抜ける。使用楽器もホルンは原始的なナチュラルホルン、ティンパニはバロックティンパニが起用され、音色そのものが挑戦的で楽曲の印象が若き時代に聴いていた演奏とは異なっていた。オケもよくぞここまでと思えるほど、しっかり鈴木氏に寄り添い、古楽器奏法が徹底され、繰り返されるフォルツァンドの連打、アタックの強調には、こちらも興奮して聴き入ってしまった。しかし一方で、気持ちがメロディに乗らず、音符に対する音量が減衰するため、全体的に堀が浅く、響きがスカスカに聴こえる。一番それが顕著だったポイントは、4mov.のAから始まるHrnのテーマであり、アントンKが好きな箇所だけに残念に思えた。やはり20世紀のトスカニーニに始まる巨匠たちの録音を若い時代に聴き込み、ある意味凝り固まっているアントンKの好みからは、外れてしまった演奏ではあるが、実演奏を以って改めて判る色々な響きを体験できたことは多大な収穫だ。
それにしても、指揮者によってあらゆる演奏を可能にし、響きを導き出せるオケの実力は素晴らしい。おそらく同じ新日本フィルでも、アントンKが知っている朝比奈時代の新日本フィルと比較してもそう思える。
あとは、自分自身の老化と今後どう付き合うのか・・・
見えない、聴こえない、では遊べないからね。。
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