アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

古巣へ還ったマエストロ小泉和裕~新日本フィル

2022-02-22 19:00:00 | 音楽/芸術

新日本フィル定期公演から、シューマンの第1番交響曲、そしてフランクの交響曲を鑑賞してきた。

交響曲が2曲並ぶが、どちらも中々生演奏で接する機会が無かった楽曲だ。おそらくシューマンの第1は、初めて。フランクの交響曲は若い頃に何度か鑑賞したくらいの記憶だから、現在の心境からしたらお初と言っても過言ではない。さて指揮者の小泉和裕氏については、アントンKも例によって、過去にブルックナーの交響曲を試金石として何度か鑑賞したことがある。あれから随分時間が経ってしまったからか、演奏についての特別な想いは巡ってこない。当時のアントンKの聴き方が問題で、とにかく好きな楽曲の演奏会を片っ端に出向いていたのである。当時は、個性的な指揮者も国内外に多く、日本では朝比奈を中心に会場に足を運び、バイトをしてはコンサート代に消えていた切ない時代でもあったのだ。そんな時代が今から約40年前で、その頃小泉氏が新日本フィルの音楽監督を務めていたということらしい。学生の分際で、なかなか思った演奏会に全て行くことなど無理に決まっている。どうしても取捨選択をしながら楽しんでいたのであった。そして今回、いつもお力を享受している新日本フィル定演で演奏を味わう機会を持ったのである。

シューマン、そしてフランクと2曲の交響曲を聴き終え、まず印象的だったのは、オーケストラが伸びやかに、生き生きとした雄弁な響きに満ち溢れていたということだ。見えない自信がオケ全体から感じられ、今鳴っている響きを聴衆とともに楽しんでいるように感じられたのである。実に前向きな音楽が聴衆に向けられ、響きが大きく圧倒的な音響を作っていたのだ。フランクなど、こんな音楽だった?と疑ってしまうほど印象が強烈で、あのテーマがしばらく耳についてしまい興奮のルツボにハマってしまった。指揮者小泉氏との相性も抜群に見え、オケにとってもかなりプラスに作用し、本来の実力が思うように発揮できて、また演奏しやすかったのではないかと思っている。相性について語るのなら、コンマス崔文洙氏とマエストロ小泉氏の意思疎通が演奏に反映されており、実にゴージャスな音色がホールに響いていたように感じている。今回は、コンマスの崔氏とともに、もう一人のコンマス伝田氏が横並びで奏し、迫力に拍車をかけていたが、何と言っても今回も崔文洙氏のリードが素晴らしく、アントンKも毎度のこととはいえ、その奏法を間近で目の当たりにして気絶しそうになったのである。前半のシューマンから、崔氏の音色はキラキラとした多色のステンドグラスのような輝きで我々聴き手に語りかけてきた。時に情感深く、そして時に物凄い熱量を以って襲いかかってくるのであった。崔氏の演奏を聴いていると、身体全体から響いているような錯覚を覚えるのだ。感情移入が激しく中腰になり、反りが入ってくるとオーケストラ全体にその熱量が伝わるようで、益々緊張感が高まり音楽が最高潮を迎えるのであった。今回もそうした熱演の中から、明日への勇気と活力を頂いたのである。

思えば、上岡氏が音楽監督だった5年前では、今回のような響きを聴くことが出来なかったように思う。独自性は強かった上岡氏ではあったが、今にして思うと、オーケストラとの相性は?と感じてしまう。上岡氏を聴いて、新しい発見もたくさん頂いた。ただ今のアントンK、好き嫌いで測ると、今回の小泉氏による全力で向かう新日本フィルの方が、解りやすく的を得ている気がしてならない。指揮者小泉氏にも今後は注視したいと思いを新たにした次第。

新日本フィル交響楽団第640回 定期演奏会

シューマン   交響曲第1番 変ロ長調 OP38 「春」

フランク    交響曲 ニ短調 M.48

指揮      小泉 和裕

コンマス    崔 文洙

        伝田 正秀

2022年2月19日   すみだトリフォニーホール