アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

ケント・ナガノ~ブルックナー新時代

2013-10-25 07:59:51 | 音楽/芸術

このところ数週間、ケント・ナガノによるブルックナーの第8番を集中的に聴いている。聴くといっても、本来の聴くとはかけ離れていて、移動中が大半、自室ではながら聴きがやっとのところだが、それでも、ほぼ毎日耳にすることで、何か伝わるか、何が言いたいかが分かればと聴いてきた。

ナガノのブルックナー第8といえば、少し前に新譜として発表され、ファンの間では話題となったCDである。このCDの最大の特徴は、前回のビデオ録音では、一般的な第二稿を使用していたのも関わらず、今回は、1887年版、つまり初稿での演奏に変わった。それも今までの初稿の演奏では聴いたことのないくらいの遅いテンポに変わっていた。これの是非については、好みの問題であり、ここでは深く触れないが、言えることは、この長大な楽曲にはマッチした演奏であると言えるのではないか。それよりも気になるのは、ナガノが醸し出す独特のトーンの方だ。これは、それまでの、第3や第4、あるいは、第6番のCD演奏でも感じたことだが、曲の解釈の中の和音の響かせ方が独特で、これがブルックナーに合っているのかということばかり気にかかってしまう。アントンKは、朝比奈世代の人間であり、朝比奈に開花され、朝比奈に教わり歩んできたからかもしれないが、いわゆるそれまでの演奏との違いを肌で感じる。楽譜に忠実に愚直に、ffは全てffで!不器用な譜づらからの田舎くさい音色、これこそブルックナーと感じてきたものとは違う。言葉が適切かどうかわからないが、洗練された几帳面な現代的なブルックナーとでも言うべきか。

2年前、上野で聴いたナガノ指揮バイエルン国立管のブルックナーの第9番と、「テ・デウム」の時もそうだった。素晴らしく丁寧で綺麗で、柔らかい音色に舌を巻いたが、果たしてこの楽曲にこの音は?と疑問符がついたことも事実だった。世の中、さらに変化が加速する中、クラシックの演奏スタイルも時代とともに変化して当然だが、中々それに着いていけない自分自身がもどかしい。