民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「桜もさよならも日本語」 その7 丸谷 才一 

2015年12月30日 00時01分44秒 | 日本語について
 「桜もさよならも日本語」 その7 丸谷 才一  新潮文庫 1989年(平成元年) 1986年刊行

 Ⅰ 国語教科書を読む  

 7、名文を読ませよう

 前略

 本当はかういふよりぬきの名文をくりかへし何度も読ませることがいちばん大切なので、子供の作文なんか載せなくてもいい。それなのに今の教科書は、どの社のものも、子供の書いた文章をむやみに入れたがる。あれは忘年会のとき、幹事がまづ皮切りに下手な唄を歌って、こんなのでもかまはないから何か隠し芸をやれとそそのかすやうなものだ。文章の感覚を磨くことにはならないだろう。

 中略

 とにかく奇怪な理屈をつらねた不思議な文章だが、この文章よりもつと不思議ななのは、かういふものが教科書に採用されたことである。文章ではまづ中身が大事で、読むに価する中身が論理的に展開されてゐなければならないといふ、文章論の初歩の初歩を知らない人たちが国語教科書を作つてゐるのだろうか。それとも、反面教師といふのがあるやうに、反面教材といふのもあるのだらうか。わたしは何だか、狐につまれたやうな気持である。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。