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「桜もさよならも日本語」 その10の2 丸谷 才一

2016年01月07日 00時12分15秒 | 日本語について
 「桜もさよならも日本語」 その10の2 丸谷 才一  新潮文庫 1989年(平成元年) 1986年刊行

 Ⅰ 国語教科書を読む  

 10、話し上手、聞き上手を育てよう 

 次は聞き方。
 聞き方で大切なのは、相手が一言いふたびに口をはさまずに、まとめてものを言はせ、必ずしも相づちを打たなくていいから、遠慮しないで語れと表情その他でおだやかに励まし、しかも、その意見の大筋をたどつて、枝葉のところにこだはらずに論旨をとらへることである。つまり一つながりの論述のなかで、大事な部分とさほどではない部分とを区別し、後者にはとらはれないで前者に留意するわけだ。
 さういふ聞き方をしたことは、次に聞き手が口を開いたときの話し方でわかる。部分的に問題があつてもそれへの反対は軽く触れるだけにし、大局で判断して、大筋のところで賛成なら賛成、反対なら反対するのである。これでゆけば議論はゲームに近いものになつて、その分だけ中身が濃くなるし、わだかまりが残る可能性もすくなくなるだらう。そして子供のときからこんな話し方と聞き方を習つてゐれば、おのづから話し上手、聞き上手な大人がふえて、今の日本で横行してゐるやうな、まくし立て、こけおどかし、揚げ足取り、言ひのがれ、言ひ抜け、言ひががり、水かけ論、空念仏、生返事、空理空論、すれ違ひははやらなくなる・・・見込みがかなりある。

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