民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「しゃべりの基本」 馬越 ふみあき 

2013年04月30日 01時57分03秒 | 日本語について
 「しゃべりの基本」  「大道芸大全」所載  馬越 ふみあき 著  1998年

 大道芸アーチスト協会の五味大助氏は「バナナの叩き売り」の世界ではトップアーチストの一人である。
もともとは新劇の俳優でコメディアンをしていたが、先輩芸人のバナナの叩き売りをみて、
「自分もやってみよう」と思ったそうだ。
その先人の「しゃべり」「話の方の面白さ」に惹かれたのが、きっかけだった。

 「人の話し方には、『大小、高低、緩急、強弱』の八つと、『間』を加えた九つの基本がある。
『しゃべる』ということは、誰にでもできることだが、
このしゃべりをお金という経済行為に変える技術に、大きな違いがある」と言う。

 こう考えると、決して、しゃべると言うことは簡単なことではない。
押し込んで行くとき、引くとき、流すとき、その時々に相手の様子を感じながら、
声やリズムや話を巧みに変えて行くのである。

 とくに、間を生かすことで話の幅は大きく変化する。
「間は魔なり」というのは徳川夢声の名言だが、まさにその通りである。

「フーテンの寅 啖呵売」 新発見

2013年04月28日 00時44分27秒 | 大道芸
 フーテンの寅、啖呵売の口上で、あいまいな言葉の意味を調べている。
今日、新しい発見があった。

 こんなヶ所がある。

 いないか、・・・それでは、続いてまかった数字が二つ。2(にっ)花札でニゾウ
ニゾウって言ったって、二匹の象じゃないよ。
兄(2)さん(3) 寄(4)ってらっしゃいは、吉原の呼び込み。(吉原のカブ)
(2,3,4は、足してカブになるという縁起のいい数字だ。)
憎まれっ子 世にはばかる
日光、けっこう、東照宮。(徳川家康、大権現。)
仁吉が通る東海道。(吉良の仁吉は男でござる。)
仁木(にっき)の弾正(だんじょう)(芝居の上での)憎まれ役。(ニッキ飴とは関係ないよ。)

 憎まれっ子、日光、仁吉が、仁木の弾正(赤字部分)はそれぞれ「いろはかるた」に入ってることを発見。
憎まれっ子、日光は関東のいろはかるた、仁吉は尾張のそれ、仁木の弾正は上方のそれ。

 おれはずっと関東に住んでいるので、
関西のいろはかるたは関東のそれに比べてほとんどなじみがない。
関西では常識であることも知らないことが多いだろう。
(もちろん、その逆もありうるけれど)

 (おれが知らない)言葉が、どれだけ知名度のある言葉なのか、そのラインを引くのはむずかしい。



 

「立川談志遺言大全集」 前書き

2013年04月26日 00時30分52秒 | 伝統文化
 「立川談志遺言大全集」 書いた落語傑作選 一  第一巻(全十四巻) 講談社 2002年

 前書き

 前略 

 また自慢を始めるが、談志(わたし)の落語集は面白い。
ということは、読んでいて面白いのだ。
ほかの噺家の本は、噺家が喋ったのを速記で起こしてまとめているが、
私は全編書いた。
文才があるんですよ。
噺家の分際(文才)で。ウヒィ・・・・・・

 落語には、その頃の人生のすべてがあった。
男と女、親と倅、母と子、遊び人、遊里(ゆうり)、博打場、旅、大名、喧嘩、四季の行事、
金、夢、名誉、実際にあったこと、武士、町人、田舎の人、恋、
つまりその頃の全てがその舞台となり、対象となった。
そしてその背景は一口に言えば、そこに生きた人間である。

 その人間の苦しさ、楽しさ、嫌らしさ、執念、無念、・・・・・等々、
これらを交差させ、人間を描いた。
それに己を重(だぶ)らせた。

 それらが「一つの作品」として完成?」したと思った時、落語は庶民から離れていった。
あとは演者のパーソナリティのみである。

 この全集、立川談志という落語家を通しての発表であり、
加えて、人間の奥底にあるデイモンというか、幻想(イリュージョン)というか、
それらをひっくるめての挑戦である。
現状はその途中なのだ。
それを「読み手」という読書に判りやすく一冊々々の本にした、ということ。
でも、もう後がない。
これを遺(のこ)して、後に続く者(無きゃいい)に・・・・・、
いいや、面倒臭えや、人生成り行きだ。

 2002年1月                   立川 談志

「フーテンの寅」 啖呵売 UP

2013年04月24日 00時10分39秒 | 身辺雑記
「フーテンの寅」啖呵売の口上をアップしました。
暗記用の雛形です。

 ここ一週間くらい、調べまくりました。
(たぶん、一日、4,5時間)
映画も一日一本見ました。
(まだ7,8本だけど)

 ああでもない、こうでもない、
これも入れたい、あれも入れたい。
泣く泣く切ったセリフも数知れず。

 ひとつの区切りとして完成させました。
これから、これを基にバージョンアップしていくつもりです。

「フーテンの寅」 啖呵売 ver.3

2013年04月24日 00時05分14秒 | 大道芸
 「フーテンの寅」 啖呵売 

 わたくし、生まれも育ちも (東京) 葛飾 柴又です。
帝釈天で 産湯を使い、姓は車、名は寅次郎、人呼んで フーテンの寅 と発します。
西に行きましても、東に行きましても、
とかく 土地土地のお兄貴(あにぃ)さんお姐(あねぇ)さんに ご厄介かけがちな 若僧です。
以後、見苦しき面体 お見知りおかれまして、恐惶(きょうこう)万端ひきたって、宜しくお頼ん申します。

「俺がいたんじゃ お嫁にゃ行けぬ (どおせ俺(おい)らは やくざな兄貴)
 わかっちゃいるんだ 妹よ
いつか お前が 喜ぶような 偉い兄貴に なりたくて
奮闘努力の 甲斐もなく 今日も 涙の 今日も 涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪」 主題歌

 結構(けっこう)毛だらけ 猫 灰だらけ。
お尻(しり・けつ)のまわりはクソだらけ。
見上げたもんだよ、屋根屋のフンドシ。
見下げて掘らせる、井戸屋の後家さん。
上がっちゃいけない、お米の相場、下がっちゃこわいよ、柳のお化け。
馬には乗ってみろ、人には添ってみろってね。

 さあ、さあ、お立会い。
ご用と お急ぎのない方は、ゆっくりと、見ておいで、聞いておいで。

 夜目、遠目、笠のうち、(と申しまして)
うす暗いところ、遠くで、笠をかぶっている女性は、とかく美人に見えると言う。
ところが、明るいとこ、近くで、笠を取って、見ると、案外そうでないということがよくあります。
このように、物事の実態、本質というものは近くで見なければわからないものであります。
ここに並べてあるこれらの商品、逃げも隠れもしません。
納得のいくまで、手にとってご覧になってけっこうです。

 カドは一流デパート、赤木屋 黒木屋 白木屋さんで、
紅白粉(おしろい)つけたおねえちゃんから、ください ちょうだいで いただきますと、
それなんか、五千が六千くだらない品物ですが、今日はそれだけくださいとはいいません。
浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)じゃないけど、腹切ったつもりで、大サービスいたします。

 いいかい、お客さん、まずは一つ。1(いち)からだ。花札で言うと、インケツ(チンケ)だ。
ものの始まりが 一ならば、国の始まりが(は)大和の国、島の始まりが(は)は淡路島。
泥棒の始まりが 石川五右衛門なら、博打打ちの始まりが 熊坂の長範(丁半)。

 続いた数字が二つ。2(にっ)ニゾウ
兄(2)さん(3) 寄(4)ってらっしゃいは、吉原(おいちょかぶ)のカブ。
日光、けっこう、東照宮。
仁吉が通る東海道。
憎まれ小僧(憎まれっ子)、世に憚る。
仁木(にっき)の弾正(だんじょう) お芝居の上での 憎まれ役。

 続いた数字が 三つ。3(さんっ)サンタ
(サンタが来るのはクリスマス)
三、三、ロッポウ引くべからず。
これを引くのが 男の度胸、女が愛嬌で 坊主がお経、
産で死んだが 三島のお千。お千ばかりが 女子(おなご)じゃないよ。
京都は 極楽寺坂の門前で (かの有名な)小野の小町が 三日三晩 飲まず食わずに 
野たれ死んだのが (女の大厄)三十三の年。
とかく、三という数字は あやが悪い。

 続いた数字が 四つ。4(よん)ヨツヤ
四谷 赤坂 麹町、ちゃらちゃら 流れる お茶の水、粋な姐ちゃん 立ち小便(たちしょんべん)。
大した(田へした)もんだよ、カエルの小便(しょんべん)。
一度かわれば 二度かわる 三度かわれば 四度(よど)かわる。 
淀(よど)の川瀬の 水車(みずぐるま) たれを待つやら くるくると。
4(ヨン)は4(シ)とも言うよ。
白く咲いたか ユリの花。
四角四面は とうふ屋の娘、色は白いが 水くさい。
いくら掘っても 畑にゃ ハマグリ 出てこない。

 五つ。5(ごっ)ゴケ
(後家の踏ん張り、戸板の心張り)
(ゴホンと言えば龍角散)
ごほんごほんと 浪さんが 磯の浜辺で 「ねえ あなた、わたしゃ あなたの妻じゃもの。」
(ああ、人間はなぜ死ぬのでしょう! 生きたいわ! 千年も万年も生きたいわ!)
(「不如帰」徳富蘆花 のヒロイン、浪子)

 (おっ、てめぇ、さしずめ インテリだな)

 六つ。6(ろくっ)ロッポウ
(六法全書は枕の代わり)
昔 武士の位を禄(ろく)という、後藤又兵衛が 槍1本で 六万石。
(ロックおやじがオンザロックでろくでなし)

 七つ。7(ななっ)シチケン、あるいはナキ
(泣きのギター、と言えば、サンタナは「哀愁のヨーロッパ」とくりゃぁー)
七つ、長野の 善光寺。
(この子の七つのお祝いに お札をおさめに参ります)

 八つ。8(はちっ)オイチョ
八つ、やけのやんぱち 日焼けのなすび 色が黒くて食いつきたいが わたしゃ入れ歯で歯がたたない。
(おやつにカール)
八つ、谷中の奥寺で、竹の柱に 萱の屋根、手鍋下げても わしゃ いとやせぬ。
信州信濃の 新そばよりも、あたしゃ あなたの そばがよい。
あなた 百まで、わしゃ 九十九まで、
ともに シラミのたかるまで(白髪のはえるまで)、ときやがった。

 九つ。9(きゅう)カブ
9(きゅう)と言えば、忘れちゃいけない、坂本 九。
9(きゅう)は9(くっ)とも言うよ、
(国定忠治が赤城の山で、「可愛い子分のてめぇたちとも、別れ別れになる門出だ。」)

 さぁ、買った、買った。 
カッタカッタと 音がするのは、新婚夫婦の タンスの鐶(かん)だよ。
(江戸時代の)川柳に「嫁の知恵 箪笥の鐶に 紙を巻き」とあるよ。

 どうだ(でぃ)、畜生!
テキ屋殺すにゃ 刃物はいらぬ、雨の三日も 降ればいい
さぁ、これで 買い手がなかったら、あたしゃ 稼業3年の患いと思って 諦めます。

 さぁ、買った、買った。 


(色が黒くてもらい手なけりゃ、山のカラスは後家ばかり。)
(馬鹿野郎!生意気な口聞くんじゃねぇ、ケツに卵の殻くっつけた小僧っ子のくせしやがって。) 
(へえぇ、こりゃぁ、驚き 桃の木 山椒の木。ブリキにタヌキに蓄音機。)
(そうか そうか、草加、越谷、千住の先だ。)
(ザマ見ろぃ、人間はね、理屈なんかじゃ 動かねえんだよ。)
(それを言っちゃぁ おしまいよ。)
(お前と俺とは、別な人間なんだぞ。早え話がだ、俺が芋食って、お前の尻からプッと屁が出るか!)