民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「仙人の碁」 リメイク by akira

2012年01月31日 22時43分12秒 | 民話(リメイク by akira)
むかし むかしのことだった。

 ある山のふもとに 木こりが住んでいた。
 ある日 木こりは いつものように 山ん中に 木を切りに行った。
山のてっぺんにくると 霧が出てきて 一寸先も見えなくなった。
しょうがないので じっと 晴れるのを待った。

 ようやく 見えるようになると 見たこともない じいさん二人が 碁を打っていた。
 (こんな山奥で 碁を打ってるなんて 変なじいさんたちだ)
そう思いながら 木こりも 碁が好きだったので 二人の碁を のぞいてみると、
これが なかなか 面白い碁だった。
木こりは 仕事も忘れ 夢中になって その碁を見ていた。

 どれくらい時間がたったのか、
突然 杖にしていたオノの柄が ボロッとくずれた。 
(あれっ!?) 見てみると オノの柄が ボロボロに腐っていた。
 (これは変だぞ) 不思議に思って 木こりは 家に引き返した。

 ところが 家に帰ってびっくり。
家には大勢 人が集まっていて お経を唱えていた。
(どうしたんだんべ) 入り口にいた人に 聞いてみると、
 「ここの主人が 三年前に 山で死んで 今日はその命日なんだ」
 木こりはびっくりして、
 「わしがこの家の主人だけど・・・朝 仕事に行って 今 帰ってきたとこだ。」

 今度は その人がびっくりして 顔をじろじろ ながめた。
 「あんた 顔中 ひげだらけで どこの誰だかわかんねぇ」
木こりが 顔に手をあててみると ヒゲが もじゃもじゃだった。

 木こりは ひげを剃り落として やっとのこと この家の主人と わかってもらえた。
この木こりは なんと 三年もの間 山ん中で 碁を打つのをながめていたのだった。

 (それにしても おもしれぇ碁だったなぁ)
 
おしまい

「カメの夢」 リメイク by akira

2012年01月26日 01時03分41秒 | 民話(リメイク by akira)
 むかし、むかしのことだった。
 あるところに、(仲のいい)ツルとカメがいた。

 ある時、カメが日向ぼっこをしているところへ
ツルが(ふわふわと)降りてきた。

 「ツルどん、ツルどん、おめぇーは、いつも空 飛んで、
あっちこっち、遠くへ行けて、いいなぁ。
おれもおめぇみたいに、空 飛んでみてぇーな。
おれなんか、いつも地べたばっか、
(もぞもぞと)這い回ってて、ちっともおもしろくねぇ」

 「カメどん、カメどん、そんなに空 飛んでみてぇーんか。
そんなら、おれが(おめぇのこと、)連れて行ってやっか。」
 「そんなこと、できんけ?」
 「そこに棒があんべ、それをしっかり咥えていろ。
どんなことがあっても、しゃべんなよ。
しゃべったら、地べたに落っこちて、一巻の終わりだぞ」
 「わかった、しゃべんねぇ」

 ツルは、カメの咥えてる棒のはじを、クチバシではさむと、
(バタバタと)羽ばたきして飛んでいった。
 カメは嬉しくて、(そこらを)きょろきょろ見回していた。

 ある村にさしかかると、子供らが遊んでいた。
そのうち、一人の子供が、ツルを見つけた。
 「おーい、上、見てみぃ、ツルがなんか咥えて飛んでっつぉ」
 わいわい、騒ぎだした。
 「ゾウリみてぇだな」
 「そうだ、ゾウリだ」

 これを聞いたカメは、思わず子供らに言った。
 「おめぇーら、よく見ろ。おれはゾウリなんかじゃねぇやい」

 そしたら、カメのヤロー、棒からクチ離したもんだから、
(空から)まっさかさまに、地べたに落っこちまった。

 カメの甲羅のヒビは、そん時できたって話だ。

 おしまい (これでいちごさけた、どっぺん)

「若者と沢庵」 リメイク by akira

2012年01月19日 00時25分40秒 | 民話(リメイク by akira)
 きょうは オレが(おめーらくらい)ちっちゃい時に、
じいちゃんから聞いたハナシをすっかんな。
 ほんとかうそか わかんねーハナシだけど、
まぁ、ほんとのことだと思って 聞いてくれや。)


 むかし、みんなでお茶を飲んでた時にな、
お茶が熱くて 「フーフー」して、なかなか飲めねぇでいる 若いモンがいたと。

 それを見ていたじいさまが、
「今の若いモンは なーんにも知らねぇんだな。そういう時は こうすんだ。」
って 言ってな、
沢庵を一切れ 箸でつかむと お茶ん中に入れて 箸でかんまわして見せたと。

 (むかしは お茶菓子なんて気の利いたモンはねぇ、
たいがい 沢庵ぐれぇなモンだったな。)


 若いモンが 言われたように お茶ん中に 沢庵を入れてかんまわすとな、
いい具合に冷(さ)めて、飲めるようになったんだと。

 (むかしのじいさまは いろんなことを教えてくれたな。
オレなんかも いろいろ教わったもんだ。
知識じゃねぇ、知恵っていうモンをな。)


 さて、その夜 その若いモンが 風呂に入ろうとしたら、
「アッチッ、アッチッ!」 熱くて とても入(はい)れねぇんだと。

 そんで その若いモン 昼間 じいさまに言われたことを思い出してな、
大きい声で、

 「おーい、おっかあ!・・・沢庵 持ってきてくんねぇか!」

って、言ったとさ。

 おしまい(お後がよろしいようで)

「山賊と娘」 (仏の山峠) リメイク by akira

2012年01月16日 01時00分37秒 | 民話(リメイク by akira)
 むかし むかしのことだった。

 ある山のふもとに 父親と 美しい娘 咲が 二人で暮らしていた。
娘の父親は 山賊の頭(かしら)だった。

 隣の村に行くには けわしい山道を登り、峠を越えなければならなかった。
その峠は 山賊が出ると 怖れられていた。

  ある日 娘は 父親が山賊の頭だと 知ってしまった。
「お父さん、人を殺して お金を奪うなんて。 そんなむごいことは やめて!」
娘は 何度も 父親に 泣いて頼んだ。

 しかし 山賊が出るといううわさは消えなかった。

 娘は悩んだ。
どうしたら 父親が山賊をやめてくれるか 必死になって考えた。

 そして ある日 娘は 商人の格好をして 峠に向かった。
し~んと 静かな山の中で 娘の足音が こだまする。

 峠を越えようとする時だった。
突然 山賊が飛び出し 娘の前に現れた。

 山賊は おびえる娘にかまわず 一刀の元に切り捨てた。
山賊が 財布を抜き取ろうとかがんだ時 相手の顔が見えた。 

 「かっ かっ 頭!」
 頭が駆けつけて 横たわっている娘の姿を見た。

 「咲!」

 手には文が握られていた。
「お父さん、もうこんなことは やめて!」

 頭は文を握りしめ 泣いた。

 そして 頭は 自分の罪深さを悟り 出家してお坊さんになった。

 栃木県茂木町 と 茨城県笠間市 との県境に「仏の山峠」というところがある。
そこに伝わる 父親を思う娘の 悲しい話・・・おしまい。

「寝てるだけの仕事」 リメイク by akira

2012年01月09日 09時17分34秒 | 民話(リメイク by akira)
 むかし むかしのこと、
あるとこに 働くのがダイッキライな男がいた。つまりナマケモノ ってことだけど。

 毎日 毎日 家でゴロゴロしていたんで、
とうとう 親が残してくれたお金も なくなってしまった。

 (明日っから どうすんべ。いよいよ 働かなくちゃなんねぇか。)
明日食う米がなくなって さすがに 男はあせってきた。

 (どれどれ 仕事見っけに行くか。)
男はついに 重い腰をあげた。

 (だけど からだ動かして働くなんて イヤだなぁ。
どっかに 楽な仕事はねぇかなぁ。)

 男が歩いていると 「求人募集」 の張り紙を 見つけた。
(なになに 「寝てるだけでいい仕事」だと こりゃ いいや。)
 
 行ってみると 珍しい動物を見せる 見せ物小屋だった。

 「どんな仕事なんだい?」
男が聞くと 親方が言った。
 「なあに 簡単な仕事さ。ただ おりの中で 寝てればいい。」
 「ほんとに? 寝てるだけでいいんかい?」
 「ほんとだよ。 昨日 見せ物のトラが死んじまってな。困っていたところだ。
お前さんは トラの皮を着て おりの中で 寝てればいい。」
 「何だ トラの身代わりか。」
 「まぁ そういうことだ。ただ 寝てるだけで メシも食えるし 金までもらえる。
いい話だろ。」
 「確かに おれにぴったりの仕事だな。」
 「よしっ 決まった。じゃ さっそく やってもらおうか。」

 親方は 男にトラの皮を着せて おりの中へ入れた。

 トラの身代わりは 確かに 楽な仕事で、
あっという間に 見せ物小屋も 最後の日となった。

 (今日で終わりか。こんな仕事なら オレでもずっとできそうだな。)
男が 寝そべりながら そんなこと 思っていると、
最後だというんで 大勢 集まった見物人に 親方が言った。
 「さあ 今日で 見せ物も お終いだ。
特別サービス トラとライオン どっちが強いか けんかをさせて見よう。」

 そして 親方は 隣のおりにいたライオンを 男のいるおりに 連れて来た。

 立派なタテガミの ライオンが 男に向かって来る。
トラの毛皮を着た男は びっくり仰天 驚いたのなんのって。
懸命に 逃げようとしたけど 足がすくんで動けない。
 (わあ~ もうダメだ!)
男は 思わず 目をつむった。

 すると ライオンが 男のそばへ来て 小さな声で言った。
 「心配すんな。オレも人間だ。」

 おしまい