むかーし、むかしのこと。
ある山ん中のお寺に、和尚さんと 小僧がいた。
ある日、小僧は 山へ クリっことりに行った。
(夢中で)クリっこをさがしているうちに、いつのまにか、山の 奥深くに 来てしまった。
「あれーっ、おら、迷子になっちまったべか?」
すると、ガサゴソッて 音がして、やぶん中から ばあさまが出てきた。
「おや、おや、小僧っこや、なんてまあ めんこいこと。・・・
驚くなや、おれはな、おめえのおとうのねえさんが 嫁にいった先の おっかさんの妹だ。
つまり、・・・おめえのおばさまだ。
今夜、クリっこ いっぺぇ煮とくから、食べに来いや。」
小僧は 自分におばさまがいるなんて 知らなかったから、急いで お寺に帰って、
「和尚さん、和尚さん、おら 山ん中で おばさまに会った。
んで、今夜、クリっこ 食べに来いって(言われた。)・・・おら 行きてえ。」
和尚さんは 首をふった。
「だめだ、そいつはきっと やまんばにちげえねぇ。
おめぇのことを食う気だ。だめだ、行っちゃだめだ。」
「でも、おらのおばさまだって 言ってたもん。・・・行きてえ、おら、どうしても 行きてえ。」
和尚さんは うーむって うなった。
「そーか、そんなに行きてぇんなら しょうがねぇな。
んじゃ、このお札を三枚持ってけ。困った時は このお札に頼め。」
その晩、小僧は嬉しくて トントンはねて、山へ行った。
「おばさま、おばさま、小僧っこが 来たよ。」
「お~、来たか、来たか。さぁ、おあがり。クリっこ いっぺぇ煮といたから 好きなだけ 食べな。」
小僧は、食った 食った。
腹がパンパンになるまで食ったら、眠たくなって、コトッって 眠ってしまった。
夜中(に)、雨の音で 小僧は目をさました。
「小僧っこ あぶねぇ ぽった ぽたっ 小僧っこ あぶねぇ ぽった ぽたっ」
小僧は おかしいなって思って、そっと 隣りの部屋を のぞいてみた。
すると、ばあさまが、にっか にっか嬉しそうに、包丁をといでいた。
「小僧っこ うまかろ にっか にかっ 小僧っこ うまかろ にっか にかっ」
「や、やまんばだ・・・。」
小僧の声で やまんばが振り返った。
ギロッって にらんで、
「見たか、・・・見たな、小僧!」
「おら、なんも見ねえ。(ブルブルさせながら)おら、しっこ しっこがしてえ。」
「なに、しょんべんだあ。しょうがねぇ、逃げねぇように 縛ってやっから こっち来っ。」
やまんばは 小僧を ナワで縛ると、
「よし、便所へ行って来っ。・・・逃げんじゃねぇぞ。」
やまんばに つっ飛ばされて、小僧は 外に出て 便所に行った。
小僧は すぐに ナワをほどいて、便所の柱に 結んで、
「お札や、お札や、おらの 代わりに なってくれ。」
お札を ナワに差し込んで、トットって 逃げ出した。
「小僧、出たかっ。」
やまんばは 小僧がちっとも出てこねぇーんで、チョンと ナワを引っ張った。
すると、返事が返ってきた。
「まあだ、まあだ。」
「小僧、まだかぁー!」 チョン チョン 「まあだ、まあだ。」
「小僧、出たかぁー!」 チョン チョン 「まあだ、まあだ。」
さあ、いつまでたっても 小僧が出てこねぇーんで、やまんばは とうとう 怒りだした。
「小僧!いい加減に 出て来っ!」
って、力一杯 ナワを引っ張ったもんだから、便所の柱が すぽっと抜けて、
「まあだ、まあだ。」って、言いながら、ふっとんできて、
「がつーん。」やまんばの頭に 柱が当たった。
「いてててて。・・・小僧のヤツ、逃げやがったな。」
やまんばは 小僧を追っかけた。
「待てえ、小僧、・・・待てえ!」
いや、その早いこと、早いこと。
小僧は、振り返り 振り返り、
「あぁ~、来た。おっつかれるぅー。あぁ~、あぁ~、食われるぅ~。」
逃げながら、二枚目のお札を うしろに放り投げて、
「ここさ、大きい川 出ろ!」
すると、おーっきな 川ができて、ごーっ ごーっ 流れ出した。
やまんばは(たまげて、)あれぇ、こんなところに 川があったけっかと 目をぱちくりさせた。
だけど、やまんばだもん。
ざんぶって 飛び込んで しゃがしゃが しゃがしゃが 泳ぎだした。
「なんだ川 こったら川 なんだ川 こったら川」
小僧は その間に どんどと 逃げた。
やまんばは 川を泳ぎきると、また追っかけてきた。
「待てえ、小僧、・・・待てえ!」
やまんばの早いこと あっという間に、近くまで せまってきた。
「あぁ~、来た。おっつかれるぅー。あぁ~、あぁ~、食われるぅ~。」
小僧は、三枚目のお札を うしろに放り投げて、
「ここさ 砂山 出ろ!」
すると、(どどーん、)でっけぇー 砂山ができた。
それでも、やまんばだもん。
「なんだ山 こったら山 なんだ山 こったら山」
砂山を登ろうとしては ずり落ち、また 登ろうとしては ずり落ちながら、
最後には、四つんばいになって、とうとう 砂山のてっぺんまで来て、
そっからは、すべり台のように スーイッって すべって、また、小僧を追っかけだした。
「待てえ、小僧、・・・待てえ!」
小僧は やっと お寺の玄関にたどりついた。
どんどん、どんどん、小僧は ありったけの力で (玄関の)戸を叩いた。
「和尚さん、和尚さん、あけてくれ!
やまんばが 追っかけてくる。早く あけてくれ!」
すると、和尚さんの寝ぼけた声が聞こえてきた。
「なんだぁー、やまんばだぁー、ほーれ、わしの言ったとおりだべ。」
「早く 早く、やまんばが そこまでやってきたぁー。」
「待て 待て、まんず ふんどし 締めてからじゃ。」
「早くっ 早くっ。」
「待て 待て、着物を着て、帯を締めてからじゃ。」
「早くっ 早くっ。」
ようやく 和尚さんが、戸をあけてくれた。
小僧は 一目散に かけ込んで 押入れにかくれた。
しばらくして やまんばが ふっとんできた。
「おいっ、和尚、小僧はどこ行った。」
「小僧?小僧なんておらん。それより まぁ、そこにすわれ。モチでも食うべ。」
和尚さんは いろりに モチをのせて 焼きはじめた。
すると やまんばは モチが 食いてぇもんだから すわりこんで モチが焼けんのを待ってた。
「のぉー、やまんばや。おまえ、化けるのが得意なんだってなぁ。・・・
おまえ、大入道に 化けられるか?」
「大入道だとぉー?・・・おお、たやすいことよ。」
「でっかく でっかく でーかくっ でっかく でっかく でーかくっ」
やまんばが 呪文を唱えると、ずんが ずんが ずんが ずんが 大きくなって、大入道になった。
「いやぁー、たいしたもんじゃのぉー。
だけど やまんばよー・・・大きくは化けられても 小さくは化けられめぇ。」
「小さくだって化けられるわい。たとえば なんだ。言ってみろっ。」
「そうだなぁー、小さいもの、・・・豆粒なんかどうだ、化けられるか?」
「豆粒だあ?・・・おお、たやすいことよ。豆粒だろうと なんだろうと、化けてやるわい。」
「ちっちゃく ちっちゃく ちーちゃくっ ちっちゃく ちっちゃく ちーちゃくっ」
やまんばが 呪文を唱えると、小さく 小さく ちーさくなって、一粒の豆になった。
「おお、おお、うまそうな豆じゃ。」
和尚さんは その豆をつまむと、ぷうーって ふくれた モチん中に入れて、
あんぐ あんぐ 食べてしまった。
「おお、おお、うまかった、うしまけた。」
そこへ 小僧が 押入れから はいだしてきて、
「あー、あー、おらも やまんばの豆モチ 食べたかったなぁ。」
って、悔しがった(っと)。
これで おしまい、(これでいちがさきはおえもうした。しゃみしゃっきり、ねこすけぽっきり。)
ある山ん中のお寺に、和尚さんと 小僧がいた。
ある日、小僧は 山へ クリっことりに行った。
(夢中で)クリっこをさがしているうちに、いつのまにか、山の 奥深くに 来てしまった。
「あれーっ、おら、迷子になっちまったべか?」
すると、ガサゴソッて 音がして、やぶん中から ばあさまが出てきた。
「おや、おや、小僧っこや、なんてまあ めんこいこと。・・・
驚くなや、おれはな、おめえのおとうのねえさんが 嫁にいった先の おっかさんの妹だ。
つまり、・・・おめえのおばさまだ。
今夜、クリっこ いっぺぇ煮とくから、食べに来いや。」
小僧は 自分におばさまがいるなんて 知らなかったから、急いで お寺に帰って、
「和尚さん、和尚さん、おら 山ん中で おばさまに会った。
んで、今夜、クリっこ 食べに来いって(言われた。)・・・おら 行きてえ。」
和尚さんは 首をふった。
「だめだ、そいつはきっと やまんばにちげえねぇ。
おめぇのことを食う気だ。だめだ、行っちゃだめだ。」
「でも、おらのおばさまだって 言ってたもん。・・・行きてえ、おら、どうしても 行きてえ。」
和尚さんは うーむって うなった。
「そーか、そんなに行きてぇんなら しょうがねぇな。
んじゃ、このお札を三枚持ってけ。困った時は このお札に頼め。」
その晩、小僧は嬉しくて トントンはねて、山へ行った。
「おばさま、おばさま、小僧っこが 来たよ。」
「お~、来たか、来たか。さぁ、おあがり。クリっこ いっぺぇ煮といたから 好きなだけ 食べな。」
小僧は、食った 食った。
腹がパンパンになるまで食ったら、眠たくなって、コトッって 眠ってしまった。
夜中(に)、雨の音で 小僧は目をさました。
「小僧っこ あぶねぇ ぽった ぽたっ 小僧っこ あぶねぇ ぽった ぽたっ」
小僧は おかしいなって思って、そっと 隣りの部屋を のぞいてみた。
すると、ばあさまが、にっか にっか嬉しそうに、包丁をといでいた。
「小僧っこ うまかろ にっか にかっ 小僧っこ うまかろ にっか にかっ」
「や、やまんばだ・・・。」
小僧の声で やまんばが振り返った。
ギロッって にらんで、
「見たか、・・・見たな、小僧!」
「おら、なんも見ねえ。(ブルブルさせながら)おら、しっこ しっこがしてえ。」
「なに、しょんべんだあ。しょうがねぇ、逃げねぇように 縛ってやっから こっち来っ。」
やまんばは 小僧を ナワで縛ると、
「よし、便所へ行って来っ。・・・逃げんじゃねぇぞ。」
やまんばに つっ飛ばされて、小僧は 外に出て 便所に行った。
小僧は すぐに ナワをほどいて、便所の柱に 結んで、
「お札や、お札や、おらの 代わりに なってくれ。」
お札を ナワに差し込んで、トットって 逃げ出した。
「小僧、出たかっ。」
やまんばは 小僧がちっとも出てこねぇーんで、チョンと ナワを引っ張った。
すると、返事が返ってきた。
「まあだ、まあだ。」
「小僧、まだかぁー!」 チョン チョン 「まあだ、まあだ。」
「小僧、出たかぁー!」 チョン チョン 「まあだ、まあだ。」
さあ、いつまでたっても 小僧が出てこねぇーんで、やまんばは とうとう 怒りだした。
「小僧!いい加減に 出て来っ!」
って、力一杯 ナワを引っ張ったもんだから、便所の柱が すぽっと抜けて、
「まあだ、まあだ。」って、言いながら、ふっとんできて、
「がつーん。」やまんばの頭に 柱が当たった。
「いてててて。・・・小僧のヤツ、逃げやがったな。」
やまんばは 小僧を追っかけた。
「待てえ、小僧、・・・待てえ!」
いや、その早いこと、早いこと。
小僧は、振り返り 振り返り、
「あぁ~、来た。おっつかれるぅー。あぁ~、あぁ~、食われるぅ~。」
逃げながら、二枚目のお札を うしろに放り投げて、
「ここさ、大きい川 出ろ!」
すると、おーっきな 川ができて、ごーっ ごーっ 流れ出した。
やまんばは(たまげて、)あれぇ、こんなところに 川があったけっかと 目をぱちくりさせた。
だけど、やまんばだもん。
ざんぶって 飛び込んで しゃがしゃが しゃがしゃが 泳ぎだした。
「なんだ川 こったら川 なんだ川 こったら川」
小僧は その間に どんどと 逃げた。
やまんばは 川を泳ぎきると、また追っかけてきた。
「待てえ、小僧、・・・待てえ!」
やまんばの早いこと あっという間に、近くまで せまってきた。
「あぁ~、来た。おっつかれるぅー。あぁ~、あぁ~、食われるぅ~。」
小僧は、三枚目のお札を うしろに放り投げて、
「ここさ 砂山 出ろ!」
すると、(どどーん、)でっけぇー 砂山ができた。
それでも、やまんばだもん。
「なんだ山 こったら山 なんだ山 こったら山」
砂山を登ろうとしては ずり落ち、また 登ろうとしては ずり落ちながら、
最後には、四つんばいになって、とうとう 砂山のてっぺんまで来て、
そっからは、すべり台のように スーイッって すべって、また、小僧を追っかけだした。
「待てえ、小僧、・・・待てえ!」
小僧は やっと お寺の玄関にたどりついた。
どんどん、どんどん、小僧は ありったけの力で (玄関の)戸を叩いた。
「和尚さん、和尚さん、あけてくれ!
やまんばが 追っかけてくる。早く あけてくれ!」
すると、和尚さんの寝ぼけた声が聞こえてきた。
「なんだぁー、やまんばだぁー、ほーれ、わしの言ったとおりだべ。」
「早く 早く、やまんばが そこまでやってきたぁー。」
「待て 待て、まんず ふんどし 締めてからじゃ。」
「早くっ 早くっ。」
「待て 待て、着物を着て、帯を締めてからじゃ。」
「早くっ 早くっ。」
ようやく 和尚さんが、戸をあけてくれた。
小僧は 一目散に かけ込んで 押入れにかくれた。
しばらくして やまんばが ふっとんできた。
「おいっ、和尚、小僧はどこ行った。」
「小僧?小僧なんておらん。それより まぁ、そこにすわれ。モチでも食うべ。」
和尚さんは いろりに モチをのせて 焼きはじめた。
すると やまんばは モチが 食いてぇもんだから すわりこんで モチが焼けんのを待ってた。
「のぉー、やまんばや。おまえ、化けるのが得意なんだってなぁ。・・・
おまえ、大入道に 化けられるか?」
「大入道だとぉー?・・・おお、たやすいことよ。」
「でっかく でっかく でーかくっ でっかく でっかく でーかくっ」
やまんばが 呪文を唱えると、ずんが ずんが ずんが ずんが 大きくなって、大入道になった。
「いやぁー、たいしたもんじゃのぉー。
だけど やまんばよー・・・大きくは化けられても 小さくは化けられめぇ。」
「小さくだって化けられるわい。たとえば なんだ。言ってみろっ。」
「そうだなぁー、小さいもの、・・・豆粒なんかどうだ、化けられるか?」
「豆粒だあ?・・・おお、たやすいことよ。豆粒だろうと なんだろうと、化けてやるわい。」
「ちっちゃく ちっちゃく ちーちゃくっ ちっちゃく ちっちゃく ちーちゃくっ」
やまんばが 呪文を唱えると、小さく 小さく ちーさくなって、一粒の豆になった。
「おお、おお、うまそうな豆じゃ。」
和尚さんは その豆をつまむと、ぷうーって ふくれた モチん中に入れて、
あんぐ あんぐ 食べてしまった。
「おお、おお、うまかった、うしまけた。」
そこへ 小僧が 押入れから はいだしてきて、
「あー、あー、おらも やまんばの豆モチ 食べたかったなぁ。」
って、悔しがった(っと)。
これで おしまい、(これでいちがさきはおえもうした。しゃみしゃっきり、ねこすけぽっきり。)