昨夜は久々にネタを仕入れに街へ出て、その後は仕事の打ち合わせという天国と地獄でした。
しかし、お土産に「鯨の大和煮」の本物の缶詰をいただいて、気分は上々♪ でも勿体無くて開缶出来なかったら、今朝になって、ちゃっかり家族に食べられてしまったという……。まあ、私の分も少しは残されていたんで、これで良しとします。
ということで、本日は――
■Dexter Blows Hot and Cool / Dexter Gordon (Dootone)
何をやってカッコイイ、そういう人は、どの世界にもいます。ジャズ界ではデクスター・ゴードンが、そのひとりでしょう。晩年は俳優としても高い評価を得ていますが、それは自然体で醸し出す雰囲気とか存在感が素晴らしいという証でしょうか。
もちろんデクスター・ゴードンの人生はジャズばかりでなく、悪いクスリでモダンジャズの黄金時代を棒にふった過去がありますし、カムバック後は本場アメリカで居場所が無くなったという自業自得も厳しいところでした。
しかしジャズへの感性と情熱が全く衰えずにファンから支持されたのは、幸せというよりも、本人が持って生まれた資質と努力があったからに違いないと、私は思っています。まあ、それこそが、私がデクスター・ゴードンに惹かれるところなんですが!
さて、このアルバムは、そんなデクスター・ゴードンが若き日に吹き込んだ名演集で、録音は1955年11月11~12日、メンバーはデクスター・ゴードン(ts)、カール・パーキンス(p)、リロイ・ヴィネガー(b)、チャック・トンプソン(ds)、そして曲によってジミー・ロビンソン(tp) が加わっています――
A-1 Silver Plated
デクスター・ゴードンが書いたグルーヴィなオリジナル曲です。リロイ・ヴィネガーのブンブンベースに支えられ、2管で吹奏されるテーマメロディの潔さ! ノリの良いリズム隊も最高です。
そしてアドリブパートではデクスター・ゴードンが悠々自適の豪快なフレーズを積み重ね、全く間然することの無い演奏です。また相方のジミー・ロビンソンは、これぐらいしかレコーディングが無いと思われる黒人トランペッターですが、豊かな歌心で立派です。
そして繰り返しますが、リズム隊が快適でノー文句です♪
A-2 Cry Me A River
デクスター・ゴードンのワンホーンで演じられる最高の歌物モダンジャズです。まずテーマの歌わせ方が素晴らしい限り♪ テナーサックス本来が持つ音色の魅力に加えて、堂々とメロディを解釈していくデクスター・ゴードンはハードボイルドですねぇ。
アドリブパートに入っても、それは絶句するほどの世界で、「歌詞を忘れたから、吹けない……」と言った名台詞がそのまんまのラストテーマ解釈には、感涙してしまいます。
歴史的名演として良いと思います!
A-3 Rhythm Mad
一転して快適なテンポのハードバップですが、スタイルの源流がレスター・ヤングにあることをはっきりと告白するスマートなフレーズを、独自のハードな音色で表現するデクスター・ゴードンの持ち味が楽しめます。あぁ、実に良いですねぇ~♪
またジミー・ロビンソンは隠れた実力者ぶりを存分に発揮していますし、カール・パーキンスのシャープでグルーヴィなピアノからはファンキー感覚が溢れ出た、これも名演でしょうね♪
A-4 Don't Worry About Me
再びデクスター・ゴードンのバラード解釈が楽しめます、まずカール・パーキンス以下のリズム隊が設定するイントロからの導入部が素敵ですねぇ~。
そして満を持して登場するデクスター・ゴードンは、もちろん男気のある哀愁を滲ませながら、ムード満点にテーマメロディを変奏していきます。
あぁ、これほどにモダンジャズを感じさせてくれるテナーサックス奏者がいるでしょうか!? 音色、フレーズ、ノリが三位一体となって最高! としか言葉がありません。デクスター・ゴードン、32歳にして、この境地!
A-5 I Hear Music
スタンダード曲ながら、これは「お約束」のリフを繋いだバリバリのモダンジャズですから、もうデクスター・ゴードン十八番のフレーズが洪水のように溢れ出て止まりません。
リズム隊も豪快なグルーヴを噴出させており、チャック・トンプソンの懐の深いドラミング、カール・パーキンスのファンキー節が痛快です。
B-1 Bonna Rue
デクスター・ゴードンのオリジナル曲で、これも2管によるテーク吹奏とチャック・トンプソンのドラムスがカッコ良いアクセントの名演になっています。
アドリブ先発はジミー・ロビンソンで、良く歌うアドリブは大いに魅力的♪ やや細い音色も逆に素敵です。
そして続くデクスター・ゴードンは、全く淀みなくビバップのお手本のようなフレーズを繰り出して余裕を聞かせくれますが、決して手馴れたものではありません。そのジャズに対する天才性が見事に出た演奏だと思います。
リズム隊の素晴らしさは言わずもがな♪
B-2 I Should Care
またまたデクスター・ゴードンが魅力を全開させた歌物の名演を聞かせてくれます。もうテーマメロディの解釈からして、メロメロになりますねぇ~♪ 男の色気とでも申しましょうか、これは望んでも余人には真似の出来ない境地でしょう。
B-3 Blowin' For Dootsie
アップテンポのハードバップで、まず初っ端からファンキーに迫るカール・パーキンスに続き、デクスター・ゴードンがシンプルなテーマを吹奏してアドリブになだれ込んでいきます。バックで煽るチャック・トンプソンがイモ寸前のドラミングで、実に良い雰囲気♪ ですからバンド全体がバカノリです。
ところがデクスター・ゴードンに、やや疲れが感じられるのは私だけでしょうか? まあ、それもジャズの面白いところでしょうか……。もちろん最後には、きっちり帳尻を合わせています。
しかしリズム隊が快調です。リロイ・ヴィネガーのウォーキングベースは言わずもがな、チャック・トンプソンのシンバルワークは4ビートの醍醐味です。終盤でのデクスター・ゴードンとのソロチェンジも痛快!
B-4 Tenderly
オーラスもデクスター・ゴードンのバラード演奏という嬉しさです。テーマ曲に漂う一抹の哀愁をストレートに表現しつつ、尚一層「泣き」を強調する男の世界が、たまりません。
決して女々しくないのに、ネクラな心情とかイジケのフィーリングも感じられたりして、本当に泣いてしまいそうです。
またカール・パーキンスも短いながら絶妙♪
ということで、これはスミからスミまで名演しかありません! と私は断言してしまいます。デクスター・ゴードンの素晴らしさは繰り返すまでもなく、リズム隊の力強さも特筆すべきでしょう。
ジャズ入門アルバムとしても、うってつけかと思います。