やっぱりというか、月曜日は疲れます……。
それでもメインの「サイケおやじ館」は、なんとか更新出来ましたので、よろしくお願い致します。
ということで、本日は――
■Blowin' The Blues Away / Horace Silver Quintet & Trio (Blue Note)
ホレス・シルバーはファンキー&ハードバップの代表選手ですが、本職のピアニストとしてよりも、バンドリーダー&作曲家としての認識が強いと思われます。
しかしピアニストとしては、既成のビバップとは一線を隔したスタイルが特に個性的であり、つまりバド・パウエルの流儀から外れたシンコペーションの面白さとかリズム的な興奮があって、それこそがファンキーど真ん中の熱気溢れるバンドを成功させたカギじゃないでしょうか?
そんな事を思うと、このアルバムにはわざわざ「Quintet & Trio」と明記してあるとおり、徹底的に自身のピアノを中心としたリズム隊の勢いで押し切った演奏姿勢が如実な魅力となっています。
録音は1959年8&9月、メンバーはブルー・ミッチェル(tp)、ジュニア・クック(ts)、ホレス・シルバー(p)、ジーン・テイラー(b)、ルイス・ルイス(ds) という、お馴染みのレギュラーバンド♪ 演目も全て、ホレス・シルバーの自作で纏めてあります――
A-1 Blowin' The Blues Away (1959年8月29日録音)
いきなり猛烈な勢いでブッ飛ばすハードバップの快演です! ジュニア・クックもブルー・ミッチェルもアドリブパートでは比較的分り易いフレーズを中心に吹いていますが、その背後で大暴れするのがホレス・シルバーのピアノで、終始、ガンガンとツッコミまくり!
もちろんアドリブに入っても独特のリズミックなノリ、特に左手のコード弾きはエグイばかりで、右手で弾かれる単純なフレーズとのコンビネーションはリズム的な興奮を煽ります。
しかもそこへ被さってくるのが息もぴったりのホーン2人組がビシッとキメたテーマリフなんですから、本当にスカッとした演奏です。
A-2 The St. Vitus Dance (1959年9月13日録音)
そしてこれがまた、恐くて凄いリズム隊だけの演奏で、テーマメロディはバド・パウエルでも書きそうな雰囲気ながら、ホレス・シルバーのビアノからは追い立てられるようなファンキー節とゴンゴン鳴りまくるコードが団子状態で迫ってきます。
あぁ、この混濁した音の連なりは本当に快感で、他のピアノトリオでは決して味わうことの出来ない個性的なグルーヴが噴出♪ ルイス・ヘイズのシャープなドラミングと落ち着いたジーン・テイラーのベースワークが、堅実な助演で好感が持てます。
A-3 Break City (1959年8月30日録音)
再びクインテットによる演奏で、アップテンポのハードバップになっていますが、前の2曲があまりにも凄すぎた所為か、ちょっと軽く聞こえてしまうほどです。
ただし凡百の演奏では決して無く、痛快に疾走するリズム隊に煽られてテナーサックスとトランペットは絶好調♪ ルイス・ヘイズも小技が冴えています。、
A-4 Peace (1959年8月30日録音)
いろいろなミュージシャンがカバーしているホレス・シルバーの隠れ名曲で、ちょっと陰鬱で静謐なメロディに奥深い情感が漂います。
ホレス・シルバーはスローな演奏ではつまらない、とする定説もありますが、この曲ではブルー・ミッチェルのテーマ吹奏からアドリブにストレートな哀愁が滲み、ホレス・シルバーのアドリブも作者の強みを発揮した音選びの妙が流石だと思います。中盤からビートを強く打ち出していく展開もニクイところ♪
B-1 Sister Sadie (1959年8月30日録音)
これもホレス・シルバーならではのゴスペルファンキーな名曲で、美味しいリフがこれでもかとテンコ盛り♪ 上手いアクセントで煽るリズム隊の存在ゆえにグルーヴィな雰囲気が横溢し、シャープなホーン陣の活躍もありますから、まさに楽しい名曲・名演となっています。
もちろんここでもリズム隊中心に聴くのがツボでしょうねぇ。ゴスペルピートに専念するルイス・ヘイズ、全然休まないホレス・シルバー、蠢き弾むジーン・テイラーという一体感が物凄い限りですから、ホレス・シルバーのアドリブも思わず手拍子足拍子♪ こんなに分り易いジャズって許されるのでしょうか? もちろんこれで正解だと思います。
終盤のゴスペルリフの連発乱れ打ちも実に楽しいですねっ♪
B-2 The Baghdad Blues (1959年8月29日録音)
タイトルからして私が苦手の中近東メロディかと思いきや、リズムパターンからエキゾチックな雰囲気が強いだけで、正統派ハードバップの痛快演奏になっています。テーマリフの突っ込んでいく感じが良いですねぇ~。
そしてアドリブパードではジュニア・クックがなかなかの名演♪ しかも背後ではホレス・シルバーが実に素晴らしい事を様々にやっていて、それはブルー・ミッチェルのバックでも同様ですから、たまりません。
このあたりがホレス・シルバーのバンドとしての個性だと思います。リズム隊の纏まりの良さは言わずもがな、ちょっと勘ぐれば、ホーン奏者には単純なアドリブしか許さないというリーダーの方針があったのかもしれません。つまり自分のピアノをあくまでも中心に聴かせたいという思惑でしょうか。それゆえに伴奏でも烈しく突っ込むのかもしれません。
B-3 Melancholy Mood (1959年9月13日録音)
オーラスは前年に出した「ファーザー・エクスプロレイションズ(Blue Note)」に収録されていた曲の新録バージョンで、タイトルどおりの、些か陰鬱なメロディがホレス・シルバーのピアノを中心に演奏されています。
正直言えば、個人的には全く共感出来ない仕上がりで、実はB面は2曲目が終わると針を上げてしまうことが度々……。
ということで、最後に些かケチもついたアルバムではありますが、とにかくリズム隊というかホレス・シルバーの圧倒的な演奏スタイルは、伴奏もアドリブもゴッタ煮状態という物凄さ!
素直にそのあたりを楽しめば、このアルバムは天国への直行便です。特にA面の最初の2曲は強烈なのでした。
イラストを使ったジャケットもスイングしまくっていると思います。
このラス曲は…。
ファンの方には叱られるかも知れませんが、
魔が差したか、はたまた自己満足か…。
これがなければ、ジャケの良さといい極上のファンキー・アルバム♪
愛聴度もグンと跳ね上がるんですがねぇ。
>魔が差したか、はたまた~
これは全く、そのとおりのご指摘、ありがとうございます。
「ニカの夢」みたいな曲が代わりに入っていたら、超絶名盤になったかもしれませんね。