■Ray Brown with The All-Star Big Band (Verve)
レイ・ブラウンといえば、オスカー・ビーターソンの相方として黄金時代を築いた名人ベーシストですから、単独リーダー盤も傑作揃いで、中でも大編成作品が私は大好きです。
それは圧倒的に多いピアノトリオ物、つまりオスカー・ピーターソンとの演奏では聴くことの出来ないホーンアンサンブルとの絡みとか、バンドの仕切りが抜群に上手いという魅力にシビレているからで、そのあたりはクインシー・ジョーンズが1970年代初頭に率いていたツアーバンドの現場監督を任されていた事でも証明済みです。
さて、このアルバムはタイトルどおり、本格的なビッグバンド作品で、しかも「gest soloist:cannonball adderley」というサブタイトルも嬉しい傑作盤です。
録音は1962年1月22~23日、メンバーはレイ・ブラウン(b,cello) 以下、キャノンボール・アダレイ(as)、ナット・アダレイ(tp)、ジョー・ニューマン(tp)、アーニー・ロイヤル(tp)、クラーク・テリー(tp)、ジミー・クリーブランド(tb)、メルバ・リストン(tb)、バド・ジョンソン(ts)、セルダン・バウエル(ts)、ユセフ・ラティーフ(ts,fl)、ジェローム・リチャードソン(bs,fl)、ハンク・ジョーンズ(p)、トミー・フラナガン(p)、サム・ジョーンズ(b)、オシー・ジョンソン(ds) 等々、とても書ききれない豪華な面々が勢ぞろいしています。さらにアレンジがアーニー・ウィルキンスとアル・コーンというのも嬉しいかぎり――
A-1 Work Song (アーニー・ウイルキンス編曲)
ご存じ、キャノンボール・アダレイの大ヒット曲が初っ端というサービス精神が嬉しいところですが、演奏の充実度と熱気も最高! 力強くてマイナーかメジャーか、よく分からないほどに魅力的なゴスペルっぽいメロディ、カラフルなテーマアンサンブル、粘っこいピートが上手くミックスされ、もちろんレイ・ブラウンはその要となっています。
そして当然ながらアドリブパートではキャノンボール・アダレイが豪快にうねり、期待を裏切りません。またグルーヴィで凝ったアレンジを巧みに利用したレイ・ブラウンのペースソロも流石に秀逸♪ トランペットのソロはナット・アダレイでしょうか?
う~ん、それにしても楽しすぎるアレンジにはグッと惹きこまれます。聴けば忽ち虜になりますよっ!
A-2 It Happened In Montrey (アーニー・ウイルキンス編曲)
明るいメロディに溌剌としたアレンジが冴えた名曲・名演で、ちょっとカウント・ベイシー楽団という趣が楽しさの証明です。
レイ・ブラウンのペースは終始冴えまくりで聴きどころも満載ですが、それにしてもキャノンボール・アダレイの協調性を上手く活かしたアレンジが最高ですねぇ~♪ これもヤミツキになるトラックだと思います。
A-3 My One And Only Love (アル・コーン編曲)
これも有名過ぎる素敵な歌物メロディ♪ レイ・ブラウンはチェロでテーマを弾きますが、ここでもリラックスして膨らみのあるアレンジが素晴らしく、また短いながらも、キャノンボール・アダレイの落ち着いたアルトサックスが良い味出しまくりです。
A-4 Tricrotism (アル・コーン編曲)
残念ながら早世してしまいましたが、レイ・ブラウンと並んで偉大なベース奏者だったオスカー・ペティフォードのオリジナルですから、レイ・ブラウンは敬意を表して素敵なオマージュを捧げます。なにしろベースの音色やピチカート弾きのニュアンス、そしてアドリブのキモまでもが素晴らしくコピーされ、活かされているんですねぇ~~♪ もちろんレイ・ブラウン本人の個性もしっかり出ていますから、流石です!
演奏が終わった後、スタジオ内のバンドメンバーから思わず楽しい掛け声や笑い声があがるのも当然でしょう。
キャノンボール・アダレイのアドリブも最高のノリですし、トミー・フラナガンも良い仕事♪ さらにアル・コーンのアレンジも痛快という、まさにホノボノとしてジャズの本質を楽しめる仕上がりになっています。
B-1 Thumbstring (アーニー・ウイルキンス編曲)
いきなり不穏な空気を醸し出すレイ・ブラウンのペース、さらに真っ黒で深刻なキャノンボール・アダレイのアルトサックスが独り言……。
しかし演奏は徐々にグルーヴィな雰囲気に移行して、これでリズムギターが聞こえたら完全にカウント・ベイシー楽団という雰囲気が濃厚な名演です。トランペットのアドリブはミュートがジョー・ニューマン、オープンがクラーク・テリーでしょうか? なかなか熱い快演だと思います。
B-2 Canon Bilt (アーニー・ウイルキンス編曲)
これまたカウント・ベイシー楽団っぽい演奏ですが、アレンジが同楽団選任のアーニー・ウイルキンスですからねぇ~。
しかしレイ・ブラウンのペースとキャノンボール・アダレイのアルトサックスがなかなかに過激ですから、前向きな仕上がりです。
B-3 Two For The Blues (アーニー・ウイルキンス編曲)
これは確かカウント・ベイシー楽団も演じていたと思われますから、またしてもその味わいが濃厚とはいえ、時代的に独特のファンキーな雰囲気が滲み出ています。特にキャノンボール・アダレイは十八番のダーティな節まわし♪
B-4 Day In, Day Out (アル・コーン編曲)
ちょいと凝りすぎというアレンジが、原曲の楽しさをイマイチ出しきれていない無念さも滲みます。しかしレイ・ブラウンの、あくまでもリーダーとしての矜持が見事でしょう。演奏そのものがビシッと纏まっていると、苦しい言い訳……。
B-5 Baubles, Bangles And Beads
オーラスはチェロとアルトサックスの楽しいアンサンブル、アドリブの掛け合いが実に良い雰囲気で、このアルバムの締め括りには最適の演奏です。
キャノンホール・アダレイのハッスルぶりも微笑ましく、レイ・ブラウンの職人技も奥が深い感じで、イヤミがありません。
ということで、個人的には圧倒的にA面が気に入っています。まあ、こういう作品は大音量での鑑賞が必要とされる側面もありますから、我が国の住宅事情では些か厳しいところもあって、なかなか一般的な名盤扱いにはならないでしょう。
しかしジャズ喫茶で聴けば、瞬時に納得の傑作だと思います。特にA面は最高です♪
このあたりまできっちり聴かれているサイケおやじさんには心底感心します。
一見流しがちなレコードで、僕も未聴でしたが、
読んでみて聴いてみようと思いました。
ありがとうございます。
このアルバム、特にA面が最高ですよっ♪
お気に召すと思います。