今日は某神社の長い石段を昇って、息切れしましたです……。
やっぱり歳を感じますね。膝や腰が痛くないだけ、マシかもしれません。
それにしても、こんな山の上に、よくもまあ大きな神社を作ったもんだと思いますね。まだ土木機械なんて無い頃ですから、土台の石を上げるだけでも、膨大な人力が必要だったわけで、全く頭が下がります。
ということで、本日は――
■Blue Spirits / Freddie Hubbard (Blue Note)
力作や名盤が多いフレディ・ハバードの諸作中、特にアルバムタイトルとジャケ写の存在感が際立つ作品です。フレディ・ハバードの自然体に意志の強そうな面構えが、強烈な大アップですらかねぇ~。これは自分の実力と演奏内容に相等の自信がなければ、叶わないことだと思います。
しかも今回のセッションは若干異なる2つのグループによって行われ、さらに双方共に4管編成という厚みのある演奏ですし、演目は全てフレディ・ハバードのオリジナル曲ということで、聴き応えも充分です。
まず仮に「グループA」と呼ばせてもらうセッションの録音は1965年2月19日、メンバーはフレディ・ハバード(tp)、ジェームス・スポールディング(as,fl)、ジョー・ヘンダーソン(ts)、Kiane Zawadi と表記されているバーナード・マッキニー(euph)、ハロルド・メイバーン(p)、ラリー・リドレイ(b)、クリフォード・ジャーヴィス(ds)、ビッグ・ブラック(per) という、これは当時のフレディ・ハバードにとって、極めてレギュラーに近いバンド編成だったと言われています。
そして「グループB」は、フレディ・ハバード(tp)、ジェームス・スポールディング(as,fl)、バーナード・マッキニー(euph) はそのままに、ハンク・モブレー(ts)、マッコイ・タイナー(p)、ボブ・クランショウ(b)、ピート・ラロッカ(ds) という、凄い面々が加わった豪華セッションで、録音は1週間後の2月26日です――
A-1 Soul Surge (1965年2月19日録音 / グループA)
ゴスペル味が強いブルースで、コンガがチャカポコ、ベースはビンビン、そしてピアノはガンガンガンという、グルーヴィな演奏です。
フレディ・ハバードのアドリブも分かり易く、続くジェームス・スポールディングのアルトサックスも「泣き」を狙ったようですが、知らず知らずのうちにアグレッシブなフレーズを吹いてしまうあたりが、憎めません。
それはジョー・ヘンダーソンも同様で、最初から屈折気味……。まあ、このあたりが当時の所謂新主流派の面目なんでしょうか。
しかしハロルド・メイバーンは素直にソウルフル♪ 俺にはこれが一番! という強烈な自己主張かもしれません。
全体としては、やや、もっさりした演奏なんですが、ほとんど最後まで鳴り続けるホーン陣による分厚いハーモニーが、時に混濁していくあたりがミソだと思います。
A-2 Blue Spirits (1965年2月26日録音 / グループB)
アルバムタイトル曲は、4管による大袈裟なハーモニーがあって、その中から浮かび上がってくるジェームス・スポールディングのフルートが爽やかにメインのメロディを奏でるという構成です。
しかしリズム隊に、やや粘っこいグルーヴが足りず……。
ですからフレディ・ハバードも奮闘していますが、イマイチ煮え切らない雰囲気が勿体無いところです。ただし続くジェームス・スポールディングのフルートは良い味出しまくりですし、ハンク・モブレーは独特のタメとモタレが、こういう勿体ぶった曲調にはドンピシャリなので、不思議に和んでしまいます。
それとマッコイ・タイナーが例の「マッコイ節」全開の熱演で、その場が完全にアフリカ色に染まっていくあたりは、お約束のハイライトかもしれません。
B-1 Outer Forces (1965年2月26日録音 / グループB)
B面トップは、一転して強烈なハードバップ演奏なんですが、それでさえ、フリーに近い響きのイントロが付いています。
しかしアドリブパートは全員が爽快な熱演! 先発のフレディ・ハバードは本領発揮の突進ですし、ジェームス・スポールディングは直線的なプレイでアルトサックスを泣かせます。
そしてハンク・モブレーはマンネリ寸前ながら、必死さが伝わってくる快演を聞かせてくれます。まあ、このあたりは「煮詰まり」と言われるかもしれませんが……。
またシャープなリズム隊が素晴らしく、スピード感あふれるノリは、このメンツならでは♪
B-2 Cunga Black (1965年2月19日録音 / グループA)
このアルバムのハイライト!
曲はコンガがチャカポコと鳴りまくったジャズロック♪ とにかく痛快で胸おどる演奏です。ちょっとミステリアスな雰囲気のテーマメロディが、本当に良いです♪
しかもフレディ・ハバードが会心のアドリブなんですねぇ~。このノリ、このフレーズの連なり、そして熱い心情吐露!
そしてジェームス・スポールディングのフルートがツボを押えた好演ならば、ジョー・ヘンダーソンは短いソロスペースが欲求不満の爆発みたいです。
おまけにハロルド・メイバーンのファンキービアノが出た後は、ラリー・リドレイがグルーヴィなベースがソロを始めてしまうんですからねぇ~~~♪ あぁ、演奏の短さが残念至極です。
ちなみに私はカーステレオの用のソースには、必ずこの演奏を入れているほどで、好き、と告白しておきます。
B-3 Jodo (1965年2月26日録音 / グループB)
さてオーラスは燃え上がる熱血モード大会!
フレディ・ハバードが猛烈にブッ飛ばせば、ピート・ラロッカが際限無しの煽りですし、背後から襲いかかってくる分厚いホーン陣のリフがたまりません。
続くジェームス・スポールディングも強烈なツッコミを聞かせてくれますし、ハンク・モブレーが相等に無理している雰囲気ながら、やっぱり素晴らしいです♪
それと、これまでちょっとおとなしい感じだった「グループB」のリズム隊が大爆発しています。特にピート・ラロッカは目が覚めたかのような暴走ぶり! さらに猛烈なマッコイ・タイナーには、心底スカッとさせられます。
ということで、ちょっと大仰に構えたA面に対し、痛快なB面というプログラムの妙も楽しい作品です。個人的にはB面ばかりを聴いているのが実状なんですが、むしろフレディ・ハバードの本音はA面かもしれません。
まあ、これはゲスの勘ぐりでしょうね……。いずれにせよ、フレディ・ハバードは己の信ずる道を堂々と歩んでいたはずで、それは強い意志を感じさせるジャケ写のポートレートが全てなのでした。
そして、アルバムタイトルが素敵! もし自分でバンドを組むんなら、これをバンド名にしたいほどです。