OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

映画サントラもジャズ

2008-09-02 17:22:53 | Jazz

最近は普通の珈琲屋とか和食の店でもジャズをBGMに使った店が増えてきたとか♪ もちろん本物のジャズ喫茶よりは音量が小さいわけでしょうが、それでも雰囲気作りには最適というところが、ジャズの素敵な魅力です。なにも深刻に構えて、じっくり聴くことばかりが、ジャズの楽しみ方ではないのでしょう。

それは映画音楽、つまり劇伴サントラに使われて最高の効果を発揮してきた多くの名作映画にも顕著で、例えば本日の1枚も――

Un temoin dans la ville / Barney Wilen (Fontana)

1959年に制作されたフランス映画「彼奴を殺せ」のサントラ盤で、音楽を担当したのが人気サックス奏者のバルネ・ウィランというだけで、ゾクゾクしますね。

エドゥアール・モリナロ監督による映画の内容は、妻を寝取られたリノ・ヴァンチェラの復讐劇で、首尾良く相手の男を殺害したまでは良かったのですが、目撃者がいたと思いこんだことから、犯罪隠蔽を重ね、破滅するまでを描いています。

つまり典型的なフレンチノワールの傑作映画ですから、クールでハードボイルドなモダンジャズは、その雰囲気作りにジャストミート♪ ちなみにエドゥアール・モリナロ監督は前作「殺られる」でもジャズメッセンジャーズを起用してヒットを飛ばしていますから、そのツボは充分に心得ているのでしょう。

録音は1959年4月のパリ、メンバーはケニー・ドーハム(tp)、バルネ・ウィラン(ts,ss)、デューク・ジョーダン(p)、ポール・ロヴェール(ds)、ケニー・クラーク(ds) という、心底、琴線に触れまくりのクインテットです――

A-1 Temoin dans la ville
A-2 La pendaison
A-3 Melodie pour les radio-taxis
A-4 Poursuite et metro
A-5 Ambiance pourpre
A-6 Premeditation dans l'appartement
B-1 La vie n'est qu'une lutte
B-2 Complainte du chauffeur
B-3 Sur l'antenne
B-4 Blues de l'antenne
B-5 S.O.S. radio-taxis
B-6 Final au jardin d'acclimatation

――という上記演目は、もちろん映画のサントラ音源ですから、全篇に真っ当なモダンジャズ演奏を期待して聞くと肩透かしでしょう。なにしろ効果音的な断片演奏とか、ちょっとしたシークエンス、あるいはジングルっぽいトラックも含まれていますから。

しかしテーマともいうべきA面ド頭の「Temoin dans la ville」は最高にハードボイルドなモダンジャズで雰囲気最高! 約3分間の中にグルーヴィなハードバップの真髄を封じ込んだミディアムスローの名演で、そのシンプルなテーマメロディの魅力、まさにイブシ銀のケニー・ドーハム、艶やかなソプラノサックスを披露するバルネ・ウィランには納得して感涙です。

こういう雰囲気は我が国の映画音楽にも多々、流用されていますが、特に日活アクション&ニューアクションへの関わりも強く、シビレが止まりません。

また「Melodie pour les radio-taxis」も哀愁路線のスローな名曲・名演で、如何にもデューク・ジョーダンらしいピアノの響き、グッと堪えて忍び泣きというバルネ・ウィランのソプラノサックスは男の美学の極みつきでしょう。ちなみに私は、この人のソプラノサックスが世界で一番好きです。

他にもバルネ・ウィランの正統派テナーサックスが楽しめる「La vie n'est qu'une lutte」のジェントルな雰囲気、アップテンポのハードバップ「Sur l'antenne」ではテンションの高い熱気、デューク・ジョーダンが絶妙な「Blues de l'antenne」のそこはかとない魅力♪ 本当に全てが短すぎるのは、残念至極な演奏ばっかりです。

このあたりは映画本篇を観ていると一層、イメージの喚起も鮮烈になるのですが、そうでなくとも、ここでの演奏を聴いてしまえば、映画を観ずには死ねるかという気分に煽られでしょう。

ちなみにこのアルバムはアナログの10吋盤ですが、CD化も当然されています。しかし映画本篇のDVD化は???

劇中の主人公、リノ・ヴァンチェラは愛する妻に浮気され、挙句に彼女は寝取った男に殺されて……、というネクラなダメ男なんですが、しかし復讐の一念から破滅していくストーリーには共感がいっぱい! その、あまりにもせつないラストシーンを彩るオーラスのテーマ「Final au jardin d'acclimatation」は、衝撃のイントロからデューク・ジョーダンの哀切のピアノが、思いっきり泣かせてくれますよ。これがどこかの珈琲屋あたりで流れてきたら、誰でも持っているハードボイルドな日常に溺れてしまうかもしれません。

いゃ~、映画とジャズって、本当に素敵です。

ちなみにサイケおやじの本サイト「サイケおやじ館」も更新致しました。出し物は三井マリア主演の「私のSEX白書・絶頂度」ですが、音楽担当は和製プログレの名バンド「コスモス・ファクトリー」で、サイケ&プログレに加えてファンキーロックのインストも冴えまくり♪

よろしくお願い致します。

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