OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

B面聴かなきゃ、勿体無い!

2007-11-12 17:02:17 | Weblog

雷、局地的豪雨、さらに霰まで降ってきました。いよいよ雪国の冬が到来ですか……。

ということで、本日はジンワリと暖かい、これを――

Ray Bryant Trio (Prestige)

レイ・ブライアントは、洒落たセンスと気品、そして黒っぽさを兼ね備えたモダンジャズピアノの第一人者として、言わずもがなの実力者! 

そしてこれは、ジャズ入門のガイド本とかピアノトリオの名盤選には必ず入る人気アルバムなんですが、それゆえに、ちょいと軽く聴かれているのではないでしょうか?

その原因は演目が分かり易い、易過ぎる所為かもしれません。

しかし、やっぱり聴く度に、とても魅力的なアルバムだと思ってしまうのですねぇ~♪

録音は1957年4月5日、メンバーはレイ・ブライアント(p) 以下、アイク・アイザックス(b)、スペックス・ライト(ds) という当時のレギュラートリオで、カーメン・マクレエ(vo) の伴奏もやっていた時期の演奏ですから、纏りも最高です――

A-1 Golden Earrings
 ジプシー民謡を原曲として、サラサーテの「チゴイネルワイゼン」となったメロディを、さらにビクター・ヤングがパクッてポップスに仕立てたマイナー調の名曲ですから、どこかで聞いたことのある親しみやすさに、まず酔わされます。
 もちろんレイ・ブライアントの小粋な解釈は抜群ですからねぇ~♪ 適度な湿っぽさが黒いフィーリングに繋がって、このアルバムではキメの存在としてド頭に置かれたのでしょう。
 実際、なんだかんだと言っても、聴いていてシビレる他は無い演奏だと思います。

A-2 Angel Eyes
 今やビアノトリオ物では必須の人気曲ながら、原盤裏解説によると、今まであまり演奏されたことが無い云々……!
 う~ん、すると……。
 ちなみにここでのレイ・ブライアントは、原曲の持つ仄かに暗いムードをエレガントなピアノタッチで表現したソロピアノ♪ ほとんどテーマメロディの変奏が秀逸です。

A-3 Blues Changes
 そして前曲のイメージを受け継いだかのようなレイ・ブライアントのイントロから、グイノリのベースと引き締まったブラシが入ってくる、これも「泣き」が素敵な名曲・名演です。
 もちろんこれはレイ・ブライアントのオリジナルで、マイルス・デイビスのアルバム「マイルス・デイビス&ミルト・ジャクソン(Prestige)」でも既に演じられたわけですが、ここでは作者自身のピアノトリオのバージョンとあって、一層と進んだ解釈が気に入っています。

A-4 Splittin'
 冒頭からの3連発がジンワリと強烈な印象でしたから、ちょっと???の演奏なんですが、アップテンポでビシバシにキメた、なかなかの仕上がりだと思います。
 力強いタッチでコロコロとスイングするレイ・ブライアントには、モダンジャズの魅力がいっぱい♪ スペックス・ライトのブラシも最高だと思います。

B-1 Django
 ジョン・ルイスの作曲、そしてMJQの演奏で有名なモダンジャズのスタンダードですから、レイ・ブライアントもオリジナルのイメージを大切にした、全く素直な解釈で好感が持てます。
 もちろんアドリブパートでは、あくまでも自己の表現に拘っていますが、やはり聴き手の期待に応えようとする姿勢があり、また、それが嫌味ギリギリの上手さになっているような……。
 まあ、このあたりが名曲カバーの難しさであり、楽しさなんでしょうねぇ。 

B-2 The Thrill Is Gone
 歌物スタンダードを素材にしたスローな演奏で、多分、このアルバムの中では最高の出来栄えじゃないでしょうか!?
 まずレイ・ブライアントがソロピアノで、じっくりとメロディを熟成させ、ドラムスとベースを呼び込んでからは、珠玉のアドリブメロディが、これでもかと弾き出されていきます。
 あぁ、このエレガントな忍び泣きには、心が幾様にも震えてしまいます。
 そして私は、この演奏を聴いて、このアルバムを買った喜びに浸りました。だって、ジャズ喫茶じゃ、A面しか鳴りませんからねぇ。スバリ、素晴らしい!
 
B-3 Daahoud
 クリフォード・ブラウンが書いた心地良いハードバップ曲が、ここでもレイ・ブライアントならではの柔らかな解釈で披露されています。
 快適なビートと巧みなメロディ展開を強調するトリオ全体のグルーヴは、もう最高の極みなんですが、決して力任せでないところが、逆に凄いと思います。

B-4 Sonar
 オーラスも軽くて楽しい演奏で、レイ・ブライアントのメロディフェイクの上手さが存分に楽しめます♪
 このあたりは当時主流のハードバッパーとは、明らかに一線を隔した存在感で、もちろんゴリゴリで真っ黒なブギー系の演奏も十八番だったレイ・ブライアントではありますが、実はオスカー・ピータソンにも通じるジャズピアノの真髄が持ち味なのだと思います。

ということで、圧倒的な人気のA面が故に、これほど聞かれていないB面も無いだろうというアルバムです。

もちろん魅惑の「Golden Earrings」や、泣きの「Angel Eyes」は最高だと思います。当に日本人好みというか、今では当たり前の日本製作のピアノトリオ盤は、これをお手本にしているのか!?

という疑惑も浮上する名盤だと思います。でもジャズ喫茶でB面をリクエストすると……。とにかく「The Thrill Is Gone」が最高♪

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