■君に捧げるほろ苦いブルース / 荒木一郎 (Trio)
昭和の大衆芸能界にあって、荒木一郎の存在は今も強い印象を残しています。
一番有名な活動は昭和40年代後半にヒットを連発していた元祖シンガーソングライターの時代かもしれませんが、同時に俳優としても名演を多数残しています。
と言うか、荒木一郎の芸歴は名女優の荒木道子の長男として、その素晴らしい資質を受け継いだ俳優業がスタートでした。そして東映ヌーベルバーグともいうべき「893愚連隊(昭和41年・東映・中島貞夫監督)」でのクールで軽妙なチンピラ役が絶賛され、以降は東映や日活を中心に活躍していくのです。
しかし同時に、その音楽的な才能も各方面から注目され、ラジオでのレギュラー番組「星に唄おう(ニッポン放送)」で披露されるオリジナル曲は次々にレコード化され、例えば昭和41(1966)年のレコード大賞新人賞を獲得した「空に星があるように」、エレキ歌謡の大名曲「今夜は踊ろう」や「いとしのマックス」等々は、まさに皆様が一度は耳にしたことがあろうと思います。
そうした経歴や活動は同時期の加山雄三との比較が連想されますが、加山雄三が明るく屈託の無い雰囲気であるのに対し、荒木一郎はどちらかといえば陰の魅力が大きいというところでしょうか。しかしそれは、決してマイナーということではなく、資質の違いというだけで、その才能は勝るとも劣らないのです。
いや、むしろスクリーンで演じる独特の屈折感やオトボケが絶妙のカッコ良さに結びつく個性は、歌の世界でも唯一無二の魅力になっています。
さて、本日のご紹介は昭和50(1975)年に発売された、如何にもそんな荒木一郎らしい自作曲のシングル盤で、B面の「ジャニスを聴きながら」が、あおい輝彦の大ヒットとしてお馴染みの自演バージョンというのも、嬉しいカップリングです。
で、A面の「君に捧げるほろ苦いブルース」は極言すれば当時流行のせつない系歌謡フォークなんですが、そこは荒木一郎ですから、自嘲と屈折、さらに昨日と明日がそこにあるから今日、この時があるというような、実に心に染み入る和風ハードボイルドな名曲だと思います。
そのアレンジもまた、シミジミとした歌い出しからチンドン屋系の陽気なオールドジャズ風味が、尚更にせつないムードを演出していますから、荒木一郎が特有の鼻歌のような歌いっぷりがジャズトミート♪♪~♪
個人的にも昭和50年当時の、幾分やるせない気分が、聞く度に蘇ってくるのです。
またB面の「ジャニスを聴きながら」は、あおい輝彦のそよ風のようなバージョンとは異なり、粋と倦怠が両立したようなムードの、これも荒木一郎でなければ醸し出せない味わいが最高のシティ派ポップス♪♪~♪
ちなみに両曲とも、同じ頃に発売された久々のオリジナルアルバム「君に捧げるほろ苦いブルース」からのカットですが、そこにはもうひとつの名曲名唱となった「りんどばーぐスペシャル」が入っていますから、このあたりは、ぜひとも聴いていただきとうございます。
ちなみに荒木一郎は様々なスキャンダルや多芸多才、楽曲提供やプロデュースの仕事も多数やっていますが、中でも東映ポルノ女優として大ブレイクした池玲子や杉本美樹のマネージメントやプロモーションでの功績は忘れられないところです。もちろん自らも出演しているわけですが、それらの映画作品でのサントラ音源制作も無視出来ないと思います。そして、このあたりが現在、各種のDVDやCDで楽しむことが出来るのは幸いです。
ということで、近年は全くの沈黙期に入っているのが惜しまれますが、やっぱり荒木一郎は昭和の芸能界を大いに面白くした才人として忘れられないのでした。
69年のスキャンダルで表舞台から退いてしまったのは本当に残念でした。
僕は俳優業より歌手としてTV出演した姿のほうが強く印象に残っています「いとしのマックス」「今夜は踊ろう」なんて曲はいまの若い人にも是非聴いてもらいたいと思います。加山雄三とは路線違いですが、ソングライティング面ではこの人のほうが好きでしたね。深夜ラジオ「星に唄おう」もよく聴いていました。
コメント感謝です。
例のスキャンダルでテレビから姿を消したのは、私も残念に思います。しかし、ますます俳優業が冴えたのは、結果オーライかもしれません。けっこうエグミの強い役も得意でしたし……。
また、そういう経験が昭和50年代の歌の数々に表れている気もします。
今の若い人に聴いて欲しいという気持ちは同感!
荒木一郎をよく理解してらしゃって、嬉しかったです。
六月に下北沢で3日間ライブがあります。随分年を取って、失望するかもしれませんが、見納めになるかもしれないと思い、チケットを買いました。
「北風」の素直さが好きです。
どんなに上手い人が歌うよりも、彼がボソボソ歌うほうがいいのが不思議です。
ようこそ、いらっしゃいませ♪
コメント、ありがとうございます。
いゃ~、荒木一郎、久々のライブやるんですねぇ~♪ 行きたいけど、ど~してもスケジュールがとれません。残念です。
でも、久々だからといって、失望なんかされないと思いますよ。そこに荒木一郎が呟いているだけで、その場は独特の雰囲気になりますからねぇ。
羨ましいです。
あぁ、「北風」も良いですねぇ~♪
荒木一郎は他の歌手に提供する楽曲も魅力がいっぱいで、桃井かおりとコラボした「街」や「尻軽女ブルース」あたりも好きなんですよ。
独り善がりのプログですが、これからもよろしくお願い致します。
力に限り?聴いてきます!
ジャズもわからないなりに好きで聴いています。少し拝見させていただきました。とても、参考になりました。
時々、フラットお邪魔させていただきます。
よろしくお願いします。
こちらこそ、恐縮です。
>力に限り?聴いてきます
その心意気に共感です。
コンサートライブ、気が向きましたら、ご報告お願い致します。
一日目は歌うほう聴くほう、双方、戸惑う感じがありました、日を追う毎にスムーズになっていきました。
50曲やるとのことで、いまや本人も忘れているのもあったようです。
歌いなれた曲は流石に手馴れたモンで、上手かったですが、今日始めてというのは、上手いとはいえませんが、歌ったということに価値があるでしょう。
お話のおもしろいこと!生きた昭和の歌謡史です。こんな事まで言っていいんかなあと心配してしまいました。そのうちテレビでやるでしょうが、カットされる部分が多いです。
お母さんの荒木道子さんについて、自分があっちこっちでぶつかりながら生きてきたことと絡めて、「おとうさんはいなかったし、お母さんは優しいだけで、僕を守ってくれた。誰も生き方は教えてくれなかったから、自分で見つけた」というようなことを言っていました。(少し言葉は違うかもしれませんが)彼は66歳になったいまでも、うっすらマザーズ・ボーイの匂いがしました。
彼の歌は平易な言葉で心のひだを歌います。ほんとに素晴らしい才能ですね。
参りました!3日間は疲れましたが、また、荒木一郎に会いたいですね。あんな風に生きる人、あんな風に歌を作る人、あんな風に歌う人、しばらくでないと思いました。
簡単なレポートで失礼しました。
ハートウォームなレポート、ありがとうございます。
久々にライブの現場へ復帰したスタア、それを様々な思いで見守るファンという構図から、実に素晴らしい時間が流れて行く様子が、本当に目に浮かぶようです。
その場にいらした皆様には、実に羨ましい気持ちですねぇ~。
裏話的なトークにも興味深々ですが、それは会場に足を運んでくれたファンだけの特権でしょうね。荒木一郎ならではのプレゼントだと思います。
こうなると新録が出ないかなぁ、と切望しておりますが、それも自然の流れで発表されるのが、荒木一郎にはふさわしいのかもしれません。
あらためて貴重なレポートに感謝です。
CDを買うきっかけは、ユーチュブで歌を聴いてからです。
優しそうな歌声で耳障りがいいですね。
コンサートに行かれた方々は、生演奏を聴かれてすごく幸せですね。
彼の歌は、結構 カバー曲されてるんですね。
歌が上手じゃないのなら、もっと 作詞作曲をされて 若手の歌手に 歌ってもらったらよいのにね。
実力を放置することは惜しいような気がします。
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彼は、
お母さんに先立たれたあと、今も一人生活を送られてるんでしょうか?
コメント、ありがとうございます。
荒木一郎の歌は如何にも昭和40~50年代なんですが、常に新しいファンを魅了する何かがあるんですよね。昔っから聴き続けられる普遍性もあるんです。
私生活については知る由もありませんが、これまでにも様々な女性関係は確かにありましたから(微笑)。
今度は出演映画も、ぜひご覧くださいませ。
これからもよろしくお願い致します。