OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ウッズ対リズムマシーン

2007-07-24 17:06:50 | Weblog

ようやく夏らしく、カラッとしてきましたですね♪

様々な災害やゴタゴタ、混乱も尽きませんが、今日の青空のような気分は忘れたくありません。

ということで、本日は――

Woods Plays Woods / Phil Woods & The Italian Rhythm Machine (Philology)

情熱のアルトサックス奏者=フィル・ウッズの偉大なる発明は、○○リズムマシーンという企画じゃないでしょうか? これはまず最初に「ヨーロピアン・リズムマシーン(Patha)」という欧州で結成したバンドの大成功が決定的となり、1970年代には「ジャパニーズ・リズムマシーン(RCA)」という来日公演から作られたライブ盤も出ています。

つまり単身で赴いた演奏旅行でも、そこで現地調達したリズム隊と組めば、フィル・ウッズのウリが出来てしまうという素晴らしさです。もちろんリスナーは、それでどんなコラボレーションが生まれるのか、スリルと期待でワクワクさせられるんですねぇ~。

このアルバムもイタリアを訪れた際に吹き込まれた、そのものスバリの「イタリアン・リズムマシーン」という企画物ですから、たまりません♪

録音は2000年5月17日、メンバーはフィル・ウッズ以下、Stefano Bollani(p)、Ares Tavolazzi(b)、Massimo Manzi(ds) という、物凄い実力者が揃っています。そして演目もタイトルどおり、1曲を除いてフィル・ウッズのオリジナルばかり――

01 Samba Du Bois
 躍動的なリズム隊に煽られてフィル・ウッズが情熱的に吹きまくり! と書きたいところなんですが……。う~ん、確かにそのとおりとはいえ、リズム隊とのコンビネーションがイマイチ、良くありません。というか、リズム隊そのものが、3者バラバラという雰囲気が隠せないのです。
 しかし流石はフィル・ウッズ! 自作という強みはあるにしろ、曲のツボをしっかりと抑え、ウネリまくりです♪ 最初はミソをつけてしまったリズム隊も、中盤からはフィル・ウッズのやりたいことを把握したのでしょう、絶妙のサポートを展開し、Stefano Bollani のアドリブパートに入ってからは、最高の纏まりを聞かせてくれます。
 う~ん、Stefano Bollani のピアノが実に良いですねぇ~♪ アグレッシブで歌心もあり、ジャズ者の琴線をしっかり掴んだ感性の素晴らしさ! また打ち震えるようなベースソロを披露する Ares Tavolazzi、巨体に似合わず小技が上手いドラマーの Massimo Manzi も好演です。

02 Goodby Mr. Evans
 張り切ったフィル・ウッズの一人舞台から、一転してシミジミモードの情熱節に入る展開が、たまりません。タイトルからしてビル・エバンスにでも捧げた曲なんでしょうか、一抹の哀愁と豊かなエモーションを滲ませて、じっくりと曲を展開させていくフィル・ウッズの面目躍如という名演になっています。あぁ、完璧な構成と歌心♪
 またリズム隊では、Massimo Manzi の粘りのビート感が強いブラシが素晴らしく、Stefano Bollani が、またまた歌心全開の大名演を聞かせています。綺麗なピアノタッチが実に爽快ですねっ♪

03 Sittin' Here
 如何にもフィル・ウッズという和み系のモダンジャズ曲です。早くて烈しいフィル・ウッズも当然素晴らしいですが、こういうミディアムテンポにおける歌心とドライブ感のバランスの良さは、この人の一番の持ち味ではないでしょうか。
 もちろんキメるところは極めるというアクの強さも抜群ですから、リズム隊も油断がなりません。徐々にグイノリに変化していく演奏全体のノリは素晴らしいばかりで、まさに「イタリアン・リズムマシーン」と名乗って恥じないところでしょう。
 
04 And When We're Young
 前述した「ヨーロピアン・リズムマシーン(Patha)」では決定的なウリになっていた名曲でしたから、ここでも期待していたんですが……。私にはそれが大き過ぎたのか、イマイチ、ノリきれていない演奏に感じられます。
 もちろん全員が力を出し切っているはずなんでしょうが、それゆえに余裕が無いというか……。スローな思わせぶりからラテンビートになっていくという楽しい展開が、噛合っていません。リズム隊が「01」同様、ややバラバラなんですねぇ。
 これには流石のフィル・ウッズも困り顔、と思いきや、あまり気にしないで吹きまくっていますから、現場は混乱していく雰囲気が濃厚です。あぁ、聴いていて、イライラしてきますねぇ。
 ところがリズム隊だけの演奏パートになると、それが見事に収まってしまうんですから、罪深いです。Stefano Bollani のピアノは情熱全開ですし、Ares Tavolazzi は呻きながらの真情吐露、おまけに Massimo Manzi が繊細で豪胆なバッキングを聞かせてくれるんですから、やっぱりこのリズムマシーンは只者ではありません。

05 Pensive
 これも優しさが滲むスローな名曲で、フィル・ウッズが心に染み入るように吹奏してくれるテーマメロディが、実にハードボイルドです。あぁ、ギリギリの臭味が、この人の持ち味なんでしょうねぇ。たとえ何と言われようとも、私はやっぱり好きです。
 また Stefano Bollani 以下、グッと抑えた表現に撤するリズム隊の懐の深さも素晴らしいと思います。

06 It's You Or No One
 オーラスのこれだけが、モダンジャズではお馴染みのスタンダードで、もちろんフィル・ウッズにとっても十八番なんでしょう、素晴らしい快演を聞かせてくれます。
 まず、なによりも素晴らしいのがリズム隊のノリの良さ! ですからフィル・ウッズも心置きなく、好き放題に吹きまくりという痛快な仕上がりになっています。
 とはいえ、フィル・ウッズにしても、往年のエネルギッシュなとこは、やや衰えているようです。しかし、それでちょうど良いと思えるんですから、やっぱり凄い人! 「ウッズ節」を出し惜しみしない姿勢には、拍手喝采しかありません。
 そして繰り返しますが、リズム隊も快演♪ 私はこのアルバムで Stefano Bollani を知ったんですが、最近の人気が分かりますねぇ♪

ということで、ジャケットはイケていませんが、中身はそれなりに楽しく聴きどころも満載です。ただし、過大な期待は禁物! というのは、どういうわけかフィル・ウッズに少しばかりの遠慮が感じられるからです。もしかしたら、私の気のせいかもしれませんが……。

ちなみに製作レーベルの「Philology」は、フィル・ウッズにちなんで名付けられたという経緯がありますから、ファンとしては、やはり持っていたいアルバムなのでした。

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