昨日は団鬼六の訃報に絶句……。
故人の偉大なる業績については、今更サイケおやじが稚拙な筆を弄するまでもありませんが、自分の人生は間違いなく団鬼六によって変えられたと思っています。
それは未だ十代だったサイケおやじが高校入試前日の夕方、小説「花と蛇」に出会ってしまった事から、後はそうした世界にずぶずふと耽溺して今日に至っている現状を鑑み、決して軽くはありません。
実は当時、我が家に下宿していた叔父さんが結婚を機に引っ越す事となり、サイケおやじに処分を頼んでいったゴミの中にあった「奇譚クラブ増刊号」こそが、以前から縄姿の美女や苛められるヒロインに言い知れぬゾクゾクした気分を感じていた自らの性癖を、所謂SM趣味に覚醒定着させたのです。
そして当然ながら一睡もしないで読みふけり、恥ずかしながら何度も青春の滾りを放った後に朝を迎えたわけですが、こうして振り返っても、あんな状態で入試に臨んだ自分の若さには呆れるほどです。
まあ、それも運良く入試に合格出来たからこそ、今は自嘲して言えるわけなんですが、そうして知ってしまった世界への探求は、生まれつき凝り性のサイケおやじを夢中にさせ、当然ながら学業関連の書物よりは件の「花と蛇」を愛読していた時期が確かにありました。
なにしろあるきっかけで母親に問題の「奇譚クラブ増刊号」を取り上げられ、焚書の刑に処せられた後であっても、内容は一字一句、あるゆる場面のほとんどを暗記していたほどです。
また、当然ながら乏しい小遣いからSM誌を買い、誰にも発見されないように保管する努力も積み重ねるようになりました。
こうして時が流れ、今度は銀幕の世界で団鬼六の存在を再認識させられたのが、日活ロマンポルノで制作されていたSM作品群でした。そして特に谷ナオミという素晴らしい女優に出会えたのも幸運の極みだったのですが、後に知ったところでは、団鬼六こそがSM路線に出演する前の谷ナオミを本格的な成人映画女優に導いたという事実も侮れません。
それに纏わる個人的なあれこれは、拙サイト「サイケおやじ館」に掲載している「闇に蠢く」「闇の中の妖精」「偏愛キネマ館」等々で繰り返し述べていますので、機会があれば一読をお願いしたいところですが、それよりも団鬼六の著作こそが読まれるべきなのは言うまでもありません。
ということで、本音を吐露しておくと、なにか胸がいっぱいで、混乱しているというのが正直な気持です。
団鬼六という偉人に対し、追悼文を書くつもりだったんですが、やはり不遜だったということなのでしょう。
ひたすらに合掌……。