■夢の旅人 / Wings (Capitol / 東芝)
イギリスではスコットランドの独立に関する住民投票で喧々囂々、賛成反対の是非は当地の住民にしか投票権が無いらしいので、必死のイギリスの首相はもちろん、エリザベス女王までもが実質的な反対の意向を示される等々、そういう騒ぎが世界中で報道されるのは、それだけ影響力が大きいという事でしょう。
個人的にはスコットランドの独立はイングランドとの共倒れが避けえないと思うところなんですが、それが百年後か、それともさらに遠い未来なのかは知らずとも、自ずと結果は見えているような気がします。
さて、そこでスコットランドと言えば、この曲が極みの大ヒットという事で、ご存じのポール・マッカートニーとウィングスが1977年に出したシングル曲「夢の旅人 / Mull Of Kintyre」を出してきました。
もちろんスコットランドと言ったって、実際はビートルズが登場するまでは、それがどんなところかなんて事は遠く日本に生活する我々には縁の薄い地域だったはずですし、およその雰囲気としては所謂牧歌的な風景や民俗がイメージされるというのも、妥当なところかと思います。
しかし一番に強く感性を刺激されたのは、ビートルズの中でも特にポール・マッカートニーが作るメロディラインに顕著な哀愁というか、その不思議な胸キュンなフィーリングがスコットランドの民謡あたりをルーツにしているという真相(?)に辿り着いてみれば、そんなこんなの歌や演奏をこの機会(?)に聴きたくなるのは不謹慎でしょうか。
とにかくスローなワルツテンポで如何にも詩情豊かなメロディライン、そのフォーク調の演奏には途中からバグパイプも加わる等々のサウンド作りのベタなフィーリングは、ポール・マッカートニーがやっているという免罪符(?)がある限り、決してイヤミではありません。
また、楽曲クレジットを確認すれば、ウィングスの縁の下の力持ちだったデニー・レインの名前が共作者としてある以上、ある意味での味付けの濃さも納得するしか??
と書いたのも、イギリスでは空前の大ヒットを記録していながら、我が国ではイマイチというか、それほどの強い印象を残した感じではなく、同様にアメリカや他の諸外国でも中ヒットだったのが実情みたいてすからねぇ……。
ちなみに原曲タイトル「Mull Of Kintyre」はスコットランドに実在するキンタイヤ岬の事で、現地に行ったことがなくとも、ファンにとってはポール・マッカートニー所有の農場がそこにあるというだけで有名だと言われています。
それと気になる演奏メンバーなんですが、ウィングス名義とはいえ、外盤と共通のスリーヴデザインを用いたジャケ写にはポール&リンダ、そしてデニー・レインだけが登場している事から、発売当時には既に脱退が報じられていたバンドレギュラーのジョー・イングリッシュ(ds,vo) とジミー・マッカロク(g,vo) の参加は微妙であり、またリンダの妊娠出産もありましたから、実質的にはポール・マッカートニー(vo,b,g,ds,key,etc)とデニー・レイン(vo,g,b,key,etc) の親分子分が仕上げたものと推察しております。
ということで、スコットランドがどうなろうとも、そこから派生した音楽を含む諸々の文化は不滅であり、また人の営みも同様でしょう。
そして権力の存在と立場がど~なろうとも、例えば「夢の旅人 / Mull Of Kintyre」のような素敵な歌が、そこに根差していたという真実は尊重されるべきですよねぇ~。
ポール・マッカートニーは反対派という報道もありましたが、さてさて、どうなりますやら……、お気楽に構えていられる現在の幸せ(?)を大切にしなければ、申し訳ない……。
そう、自分に言い聞かせているのでした。
政治問題とポール・マッカトニー。基本的にノンポリの人ですから、この二つは結び付きにくいのですが、今回のことで、そのポールが、珍しく北アイルランド問題を歌ったこの曲を、思い出してしまいました。
https://www.youtube.com/watch?v=r0zGVVcsbPg
ゆるいロックンロールに胸キュンメロディーが展開されてます。何をやっても、ポールはポール、といったところでしょうか。
コメント&ご紹介、ありがとうございます。
今回の騒動、ジョン・レノンが存命だったら、どんな発言をしていたか、不謹慎にも非常に興味があるところです。
ご紹介のポールの歌も、当時は政治向きの発言も含めて、世界中で言葉の影響力が大きかったジョンへの対抗意識とまで言われましたが、メロディラインは如何にもの仕上がりで、好きでした(微笑)。