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~サッカーを中心に日々の雑感など~

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2013年01月16日 | 映画

 衆院選の結果とその後にやりきれない思いを抱きながら、現実逃避も一つの方法かなあと。映画館に行くほどではなくても、WOWOWでこのごろ結構いい映画が放送されているからね。

スペイン映画「ペーパーバード幸せは翼に乗って」(2011年)…旅一座の芸人のお話。スペイン内戦後、国内の状況が一変し、劇団の中も緊迫したものになっていくところなど、社会的背景がしっかり描かれているので、とても見ごたえのあるものになった。お笑い芸人(といっても日本のTVタレントのお手軽な笑いとは質が違う)の一人がフランコ総統政府が行う生活がどんなものか、踊って歌いながら、時に替え歌をして風刺を効かせる場面がすごい!!反政府分子で睨まれる危険性があるにもかかわらず。こういう激しい抵抗精神は日本人にはないすごさかもしれないと、選挙後だったのでなおのこと感動した。

舞台で笑いを振りまきながらもピーンと緊張感のある演技と表情のホルヘ役(イマノル・アリアス)がこの映画にはピッタリ。このキャスティングがすべてだったかなあという気がする。親のいないミケルを引き取って育てる相方のエンリケはほのぼのしているし、二人に育てられるたくましい子どものミケル、この疑似家族3人トリオがとてもいい。三人が揃う最後のシーン、これがまたいいねえ。

以前に見たスペイン映画「蝶の舌」(1999年)…も同じころを描いた名作。生徒となる8歳の病弱な少年を森に誘っては自然の中で人生を教えるグレゴリオ先生(フェルナンド・フェルナン・ゴメス)の存在には感銘を受けた。彼も共和派の一人として後に逮捕される運命が待っていた。先生役の役者が素晴らしい。教壇で最後の演説をした場面、自由という言葉を使っていたのが印象的。もう一度見てみたいなあ。

日本映画では日活100周年記念だったかの「戦争と人間」(1970年~73年)三部作。…この前に映画化された「人間の條件」と同じく五味川純平さんの原作、山本薩夫監督、史料考証には五味川さんの資料助手を務めていた澤地久枝さんが名前を連ねている。(最近の澤地さんは脱原発のデモに参加したり、「九条の会」で活動されているようだ。)佐藤勝さんの音楽が迫力があって効果的な場面で使われていた。俳優座、文学座、劇団民芸の舞台役者大勢。滝沢修さん、加藤剛さん、栗原小巻さん、高橋幸治さん、山本圭さん、岸田今日子さんなど。そのほか当時の日活オールスターキャストで、吉永小百合さんや浅岡ルリ子さん、高橋英樹さんら、総出演で製作された。

昭和の初期から太平洋戦争前夜のノモンハン事件まで、時代考証を綿密に行いながら描かれている歴史大作。国内では不況が吹き荒れ、農村は疲弊し、娘が売られる時代、それに乗じて軍部が台頭し、戦争へ向かうように法が整備され、共産党員や文化人が次々検挙され、獄中でひどい扱いを受ける様、軍隊における非人間性、財閥の家族と親はない兄弟とを登場させ、戦争によって資本が増殖していく過程と人民の苦しみを対比させている。

中国では満州における日本人と差別的な扱いを受ける中国人、関東軍の行状など、朝鮮人抗日指導者を演ずる地井武男さんには万歳事件で肉親を失ったセリフを言わせ、最近の中国、韓国に対する右翼的な空気からすれば想像できないほど、大陸侵略に対して強い反省から生まれたというのがよくわかる物語だ。仮に現在の状況に一石を投じたいと、この作品の放送を企画したのなら、WOWOW映画部門は大したものだけど…。

中国語のセリフもたくさん出てくるところは「人間の條件」と同じ。最後に描かれるノモンハン事件では、ロシアが全面戦争ではなく国境紛争にとどめ、それでも大敗北に終わり、たくさんの死者が出ていたという事実。日本の軍隊はこれを認めず、ひたすら精神論で押してゆく怖さ。当時の新聞も国民に敗北を知らせようとしない。国民は戦勝記事に騙され、若者は軍隊へと駆り立てられ、日本軍はさらに戦線を拡大し、太平洋戦争へと突入していく。

このあたり、京都大学の小出助教が福島原発事故と先の戦争は同じ(構造)…と仰ったことが頭に浮かぶ。国防軍などといって再び他国の人々の血を流すのか、若者を兵隊にしたいのかと、映画を見ながら改めて怒りが込みあげてくる。過去に日本は何をしたのかだけではなく、アジアの一員として何が出来るのかと自省を促すような、是非見ていただきたい映画。



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