日めくり万葉集(80)は東歌(あずまうた)。選者は、万葉時代のように植物の染料で色を染め、創作と研究で【色】を追究している、染色家の吉岡幸男さん。
【歌】
真金(まかね)吹く
丹生(にふ)のま朱(そほ)の
色に出て
言はなくのみそ
我(あ)が恋(こ)ふらくは
巻14.3560 作者は東歌(あずまうた)
【訳】
鉄を精錬する炎のように、赤い丹生(にふ)の赤土のように、顔色に出して言わないだけだ。わたしの恋する思いは。
【選者の言葉】
朱に対する人々の気持ちが強く出ている歌で、人間が一番最初に発見した色は朱。やはり太陽や火、人間の体内を流れる血液の色。朱にたいする強い気持ちがある。人の目に鮮烈に浮かんでくる色。そういう原色の色を恋する気持ちに表したいと詠っている。
朱をじぶん達の身近に置くためには、朱を塗るとか。太陽や炎というものに対する人間の畏敬の念と畏怖の念、両方が表れているように思う。仏教文化が来てからは建造物に赤く彩色するという文化が入ってきた。
お寺、神社は町の人々からこういう場所があると見えやすい、わかりやすいという、一つの広告的なアドバルーンでもあったと思う。この歌の中でも自分たちの気持ちというものを恋をしてるんだ、なんとなく気恥ずかしく、遠慮がちというものではないんだということを典型的に出すために、赤い色を使ったのではないかという風に想像する。
【檀さんの語り】
この歌に詠まれた丹生(にふ)の丹(に)とは朱の顔料のこと。朱は水銀と硫黄が結合した鉱物。それが取れた土地を丹生(にふ)といい、奈良県吉野にある丹生川上神社など、各地に地名が残っている。天然の鉱物から取れる朱は、人間が最初に手に入れたものの一つだといわれている。
【感想】
赤い色というのは一番人間が感情移入しやすい色ではないだろうか。生きている証、生命の色でもあり、戦いのとき、先頭にあって後ろの人々を鼓舞するのは赤い旗。なにか高揚感を表す場合はかならず赤い色が使われている。サッカーのエンブレムやユニフォームでも赤が断然多いようだ。
吉岡さんは前回でもやはり、古代の色が歌の中に入っているということで、紫色が入った歌を選んでいたのが印象深かった。“灰さすものそ”というところでは、紫色を出す工程が入っているという説明だった。丹=朱の説明では、古代からすでに石を使って色を出しているというのが驚き。
これには水銀が関係しているようで、ちょっと検索してみただけでも、そういう研究がいろいろあるのがわかった。興味深いが、なにしろ化学記号が出てきたりして、これは難しすぎる。確か朱捷さんが選んだ歌の中でも、赤い土の説明が出てきていたのではと、ふと思い出した。
【調べもの】
○まかね【真金】
くろがね、鉄。
○しゅ【朱】
①黄味を帯びた赤色。
②赤色の顔料。成分は硫化水銀(Ⅱ)。天然には辰砂(しんしゃ)として産する。水銀と硫黄とを混ぜ、これを加熱昇華させて製する。銀朱。
○に【土・丹】
(地・土の意を表す「な」の転)
①つち。
②赤色の土。あかつち。
③(赤土で染めた)赤色。
【歌】
真金(まかね)吹く
丹生(にふ)のま朱(そほ)の
色に出て
言はなくのみそ
我(あ)が恋(こ)ふらくは
巻14.3560 作者は東歌(あずまうた)
【訳】
鉄を精錬する炎のように、赤い丹生(にふ)の赤土のように、顔色に出して言わないだけだ。わたしの恋する思いは。
【選者の言葉】
朱に対する人々の気持ちが強く出ている歌で、人間が一番最初に発見した色は朱。やはり太陽や火、人間の体内を流れる血液の色。朱にたいする強い気持ちがある。人の目に鮮烈に浮かんでくる色。そういう原色の色を恋する気持ちに表したいと詠っている。
朱をじぶん達の身近に置くためには、朱を塗るとか。太陽や炎というものに対する人間の畏敬の念と畏怖の念、両方が表れているように思う。仏教文化が来てからは建造物に赤く彩色するという文化が入ってきた。
お寺、神社は町の人々からこういう場所があると見えやすい、わかりやすいという、一つの広告的なアドバルーンでもあったと思う。この歌の中でも自分たちの気持ちというものを恋をしてるんだ、なんとなく気恥ずかしく、遠慮がちというものではないんだということを典型的に出すために、赤い色を使ったのではないかという風に想像する。
【檀さんの語り】
この歌に詠まれた丹生(にふ)の丹(に)とは朱の顔料のこと。朱は水銀と硫黄が結合した鉱物。それが取れた土地を丹生(にふ)といい、奈良県吉野にある丹生川上神社など、各地に地名が残っている。天然の鉱物から取れる朱は、人間が最初に手に入れたものの一つだといわれている。
【感想】
赤い色というのは一番人間が感情移入しやすい色ではないだろうか。生きている証、生命の色でもあり、戦いのとき、先頭にあって後ろの人々を鼓舞するのは赤い旗。なにか高揚感を表す場合はかならず赤い色が使われている。サッカーのエンブレムやユニフォームでも赤が断然多いようだ。
吉岡さんは前回でもやはり、古代の色が歌の中に入っているということで、紫色が入った歌を選んでいたのが印象深かった。“灰さすものそ”というところでは、紫色を出す工程が入っているという説明だった。丹=朱の説明では、古代からすでに石を使って色を出しているというのが驚き。
これには水銀が関係しているようで、ちょっと検索してみただけでも、そういう研究がいろいろあるのがわかった。興味深いが、なにしろ化学記号が出てきたりして、これは難しすぎる。確か朱捷さんが選んだ歌の中でも、赤い土の説明が出てきていたのではと、ふと思い出した。
【調べもの】
○まかね【真金】
くろがね、鉄。
○しゅ【朱】
①黄味を帯びた赤色。
②赤色の顔料。成分は硫化水銀(Ⅱ)。天然には辰砂(しんしゃ)として産する。水銀と硫黄とを混ぜ、これを加熱昇華させて製する。銀朱。
○に【土・丹】
(地・土の意を表す「な」の転)
①つち。
②赤色の土。あかつち。
③(赤土で染めた)赤色。